どれだけ派手に生活して楽しそうに騒いでみせても
本当の自分ではなく いつわりの自分として生きているなら
その人の人生にはいつも孤独がついて回るんだよねえ。
いつもド派手に 楽しそうに騒いで生活している(ように思えた)
ある友だちが ネットでポツリ。
そういうこと 一番言わないタイプだと思っていたのに。
でも彼のこと なんだが前よりずっと好きになった気がする。
高橋源一郎の新作小説「恋する原発」にも
おちゃらけた世界の中で精いっぱいアナーキーな ”じぶん”を
演じながら、そんな自分にどこかで疲れているAV監督(ノンケもの)
の主人公が登場する。
東日本大震災の被災者を元気づけようと、売上を義捐金にあてようと
チャリティーAVの制作に奔走する男たちを描いた バカバカしいお笑いの一席。
「あなたの精液一滴一滴が 貴重な義捐金になるのです!」
「あの男はヴァイブをヴァギナに突っ込もうとしているの。
でも、女の子がそれを望んでるんじゃないわ。あの男はヴァギナを見ると
そこから自分が生まれたことを思い出して憎しみでいっぱいになるの。
オレをこんな世界に追いやがりやがって って」
とか 源一郎センセイならではの言語観がサクレツ (笑)
けれど ここには 人間のリアルな“性”とフェイクな“生”の関係を
ずうっときれいごとにすませてきた日本人に刃を突きつける 芯の強さがある。
「恋する原発」の主人公には 何人かモデルがいるんだと思うけど
もしかしたら この人もその一人かもしれない。
平野勝之というAV監督は、「東京~礼文島41日間 自転車ツーリングドキュメント
わくわく不倫旅行 200発もやっちゃった!」という企画モノAVを発表して
大成功をおさめ、15年くらい前 一躍 業界の有名人になった人。
既婚者で子どもがいるのに、自分のお気に入りのAV女優 林由美香さんに熱を上げ、
彼女と1ヶ月 野宿をしながら東京から北海道の礼文島まで自転車でツーリングして
夜はテントの中でやりまくってハメ撮りして その一部始終をAVにしたという
とんでもない作品。でも僕は こういう情け容赦ない映画が大好きでね。
平野監督は由美香さんを好きになるんだけど、女房と分かれようなんて
気はサラサラなく 猫のように彼女のぬくもりをかわいがりたいだけ。
そうやって手なづけられるオンナもいるんだろうけど
由美香さんはそうじゃなかった。
けっきょく二人は旅行中は盛り上がりつつも 男と女の関係としては
それ以上は進展せず やがて別々の道を歩み始める。
それでもくされ縁でつながりながら 10年くらい経って
“もう一回 一緒に仕事しない?”みたいな話になって
監督がその打ち合わせに彼女のマンションを訪れたら
由美香さんは倒れていた。
梅雨の蒸し暑い夜、死後数日が経過した死体は
異臭を放ち始めていた….
というのが 「監督失格」というドキュメンタリー。
プロデューサーは「エヴァンゲリヲン」の庵野秀明さん。
祭りを終わらせることができずに 亡くなっていったひと
そのあとからはじまる人生を くたびれ果てて どうしようもなく
ユーウツになりながら それでも生きていこうと 立ち上がるひと
見終わって 矢野顕子の「しあわせなバカタレ」が
優しく流れ始めて 僕は渋谷のミニシアター UPLINKのイスから
しばらくの間 立ち上がれなかった。
これはもはや映画じゃなくって 自分自身に刃を
いや 自分自身という刃を突きつけられているような気がしたからね。
東京では シネマート六本木で公開中(12/3より吉祥寺バウスシアター)