二次元@大好き中毒 -3ページ目

二次元@大好き中毒

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私はユウお兄ちゃんの隣に並んで、廊下をゆっくりと歩き出した。
ユウ「りえちゃんがいなくなると……寂しくなるな」
りえ「ごめんね……。急なことで」
ユウ「謝ることじゃないよ。ただ、最後にひとつ……聞いてもいい?」
りえ「うん? 何?」
私達以外誰もいない廊下に、ユウお兄ちゃんの声が静かに響く。
ユウ「もし、俺が王子として育ってたら……りえちゃんの初恋の相手になれてたかな?」
ユウお兄ちゃんが、真剣な瞳で私を見つめている。
(もし……ユウお兄ちゃんと、あの夏の日に出逢ってたら?)
私は薄く微笑むと、首を横に振った。
そして、ユウお兄ちゃんを真っすぐに見つめた。
りえ「グレンくんのことは……王子様だから好きになったわけじゃないよ」
「好きになった人が、偶然王子様だっただけ」
(きっと……王子様じゃなくても好きになってた)
ユウ「そっか……。そうなのかもしれないね」
「きっと……好きな人が、その人だけの王子様やお姫様になるんだろうな」
「俺にとってりえちゃんが、唯一のお姫様だったように」
ユウお兄ちゃんは、そう言って優しく笑いかけてくれた。
りえ「ユウお兄ちゃん……」
ユウ「最初から、俺に見込みはなかったみたいだね」
「でも、りえちゃんを好きになったことは……後悔してないよ」
りえ「……ユウお兄ちゃん」
全てを受け入れたユウお兄ちゃんの瞳は、穏やかに揺れていた。
最後の最後で素直に語りあえた私達は、グレン王子の執務室の前にやってきていた。
ユウ「もしかしたら……もう会議室に行ってるかもしれないけど」
「グレン様に挨拶していきなよ」
りえ「えっ? でも」
ユウ「今更、俺に遠慮することはないよ」
「荷物、車にのせとくよ。また連絡するから……元気で」
ユウお兄ちゃんは私の肩をポンッと叩いて、優しく微笑みかけてくれた。
そして、振り返ることなく、廊下の向こうへと消えていった。
(ユウお兄ちゃん……ありがとう)
ユウお兄ちゃんと別れた私は、執務室のドアの前で立ちすくんでいた。
(もし、グレンくんが部屋にいたら……なんて挨拶をすればいいんだろう?)
私は考えがまとまらないまま、部屋を軽くノックした。
だけど、グレン王子の声は聞こえてはこなかった。
りえ「やっぱり……もう、会議室に行ったのかな」
「これ……結局、返せなかったな」
私は借りたままになっていたお守りを、ポケットから取り出した。
そして、執務室のドアノブにお守りのひもをかけた。
(このお守りが……グレンくんを守ってくれますように)
私はそんな願いを残して、その場からそっと立ち去った。
 
 
 
アラン「姫、元気でな」
「いつ遊びにきてもいいからな」
見送りにきてくれたアランくんが、瞳に涙をためながら私の服をつかんだ。
私は優しい気持ちに包まれながら、アランくんの頭をそっと撫でた。
りえ「ありがとう、アランくん」
メイドA「りえ様、お元気で」
執事A「りえ様がいなくなると、寂しくなりますなぁ」
りえ「本当にお世話になりました」
私はメイドさんや執事さんに、ペコッと頭を下げた。
そして、周囲をぐるりと見渡した。
(やっぱり……グレンくんはこなかったか)
“最後の最後で逢いにきてくれる”
そんな淡い期待があった。
だけどこの瞬間、その可能性は儚く消えてしまった。
アラン「グレン兄ちゃん……どうしてこないんだよ」
「ユウのヤツも、荷物を置いたらすぐにどっかに行ったしさ」
アランくんは不満そうに、砂を蹴りあげた。
私はそんなアランくんを、優しくなだめた。
りえ「しょうがないよ……。大切な仕事があるんだから」
「じゃあ、行くね」
アラン「姫、元気でな」
りえ「皆さん、本当にありがとうございました」
私は深々と頭を下げると、タクシーに乗り込んだ。
そして最後に、荘厳な佇まいのオリエンス城をそっと見あげる。
(さよなら……グレンくん)
私は遠ざかる城を、いつまでも見つめていた。
 
 
 
 
 
アラン「な、なんだよ。いきなり……」
アランくんが驚いた顔で、私を見つめている。
りえ「……私ね。やっぱりお姫様にはなれないんだ」
アラン「……姫? どこか行っちゃうの?」
りえ「……ごめんね」
アラン「嫌だ! 姫、行かないでよ」
アランくんは瞳に涙を浮かべながら、私の足にしがみついた。
私はアランくんを優しく抱きしめながら、静かに涙を流した。
 
 
 
りえとアランが悲しみに暮れている頃、グレンもまたやるせない気持ちと闘っていた。
グレン王子「これで……良かったんだよな」
グレンはりえと撮ったプリクラを見つめながら、ひとりつぶやいた。
その時、グレンの部屋にノックの音が鳴り響いた。
ユウ「失礼致します」
グレン王子「ユウか……。どうした?」
ユウ「国王様からの伝言を、お届けに参りました」
グレン王子「例の会議のことか?」
ユウ「はい。明後日の14時から、最終決定を下す会議を開くそうです」
グレン王子「分かった」
ユウ「それと……先程、メイド長から連絡があったのですが」
「その日の同じ時刻に……りえ様が城を出られるそうです」
グレン王子「そうか……」
グレンは感情を押し殺しながら、小さくうなずいた。
その姿を見て、ユウは奇妙な違和感を覚えていた。
ユウ「お見送りは、されますか?」
グレン王子「考えておく。話はそれだけか?」
ユウ「ええ。……ですが、随分と冷静なんですね。彼女が出て行くというのに」
グレン王子「アイツが決めたことだ。俺がとやかく言う必要はない」
“以前よりも、グレンの気高さが増している”
ユウはそんな変化を、微かに感じ取っていた。
それと同時に、疑問も芽生えた。
なぜこのような状況で、強くいられるのかと。
ユウ「グレン様は……王子であることに、嫌気がさしたことはありますか?」
気がつけば、ユウは質問を投げかけていた。
そんなユウを見て、グレンは小さく息を吐いた。
グレン王子「そんなのしょっちゅうだ」
ユウ「えっ?」
グレン王子「つい最近も、そう思った」
「でも……俺を信じてくれる国民がひとりでもいるなら……俺は、最後までやり遂げる責任がある」
「前まではそう思えなかったが、今はそのことを誇りに思ってるから」
りえと過ごした時間が、グレンを強くさせた。
ふたりは離れ離れになるのに、絆は深まっている。
グレンの思いを知り、ユウはそう気付いた。
ユウ「俺は……自分のことばかりだった」
ユウがそっとつぶやく。
グレン王子「どうかしたのか? ユウ」
ユウ「いえ、なんでもありません……。失礼します」
グレンの覚悟を目の当たりにし、ユウの心は揺れていた。
しかし、決断の時は刻一刻と迫りつつあった。
 
 
 
それから、3日後ーー。
ついに、私が城を出る日が訪れた。
りえ「今日で、この部屋ともお別れか」
(……本当に色々あったなぁ)
王子様と一緒に、城で暮らした時間。
今となっては、そのかけがえのない時間が夢のように思えてしまう。
(いい想い出だったって言えるには……まだまだ、時間がかかりそう)
(離れ離れになるには、どれもまぶしすぎる想い出。……だけど、絶対に忘れない)
私はグレン王子との想い出を胸に抱きながら、部屋を後にした。
すると、廊下の向こうから足音が聞こえてきた。
(ん? 誰だろう……?)
ユウ「良かった。ギリギリ間にあった」
りえ「……ユウお兄ちゃん」
私が部屋を出ると、ユウお兄ちゃんが息を切らしながら、駆け寄ってきた。
ユウ「この後……俺もグレン様も会議があって、時間がないから」
「せめて、お別れが言いたくてさ」
りえ「わざわざきてくれたんだ。ありがとう」
ユウ「途中まで一緒に歩こうか?荷物持つよ」
りえ「いいの? 忙しそうなのに」
ユウ「これぐらいはさせてよ」
ユウお兄ちゃんは優しく笑うと、私の荷物をサッと持ちあげた。
 
 
 
 
だけど、こうしていないと今にも涙があふれそうだった。
(全てを失ったとしても……本当はグレンくんと一緒にいたい)
(だけど、これでいいんだ……)
私は自分を奮い立たせるために、少し無理して、もう一度笑顔を作った。
りえ「そろそろ、行こうか?」
グレン王子「……ああ」
気がつけば、夕陽はすっかり水平の彼方に沈んでしまっていた。
今日という一日が、ついに終わろうとしていた。
 
 
 
りえ「じゃあ、ここで別れようか」
「一緒に帰るわけには、いかないもんね」
グレン王子「でも、アンタはどうやって帰るんだよ?」
(えっと……どうしようかな?)
りえ「バスで帰るよ」
グレン王子「車を呼ぶから、アンタは車で帰れよ。俺がバスで帰る」
りえ「ううん、いいの。バスでゆっくり帰りたい気分だから」
(グレンくんも決意を固めたんだ……)
(私も強くならなくちゃ)
グレン王子「……そっか。アンタの方が……俺より強いな」
私の気持ちを感じ取ったように、グレン王子が薄く微笑んだ。
その時、通りの向こうからバスが近付いてくるのが見えた。
グレン王子「ちょうどきたな」
りえ「……うん」
(あのバスに乗ったら……本当に終わりなんだ)
私は唇をきゅっとかみしめると、グレン王子を真っすぐに見つめた。
りえ「私ね……。近いうちに、シャルル王国に帰ろうかと思うの」
グレン王子「それって……俺のせい?」
グレン王子が真剣な瞳で、私を見つめている。
りえ「……ううん。本当は、前から考えてたんだ」
「ピエールさんのところで、もう一度勉強し直そうと思って」
私はまた、悲しい嘘を重ねた。
りえ「絶対、一流のデザイナーになるから」
「……いつか、グレンくんよりもテレビに出るようになっちゃうかも」
私が冗談っぽくそう言うと、グレン王子は複雑そうな表情を浮かべた。
グレン王子「そっか……。そうだな。頑張れよ」
りえ「……う、うん。頑張るね」
できるだけ、元気に返事をしたつもりだった。
だけど、私の声は微かに震えていた。
(これ以上……。グレンくんの傍にいることはできないよ)
グレン王子「……分かった」
グレン王子がうなずくと同時に、バスが停留所に滑り込んでくる。
気持ちの整理もつかないまま、ゆっくりとバスのドアが開いた。
りえ「じゃあ、行くね」
私は小さく微笑み、バスのステップに足をかける。
次の瞬間、グレン王子が私の手を軽くつかんだ。
(えっ……?)
グレン王子「アンタをもう一度……好きになれて良かった」
真っすぐなグレン王子の言葉に、私の胸が痛いほどにしめつけられる。
(私も……)
たったそれだけなのに、言葉にすると涙に変わりそうで、私は何も言うことができない。
グレン王子「……」
グレン王子は小さく微笑むと、そっと手を離した。
先程まで温かかった指先が急減に体温を失う。
(グレンくん……)
ふたりを引き裂くように、バスのドアが閉まる。
ゆっくりと走り出すバスの窓に、私は手を置いた。
りえ「私も……だよ」
遠くなっていくグレン王子に向かって、私はつぶやいた。
それと同時に、抑えていた涙がこぼれ落ちる。
りえ「好き……。大好きだよ」
(きっと、もう……届かないけど……)
窓の向こうで、徐々に小さくなっていくグレン王子。
その姿はやがて、涙でにじんで見えなくなってしまった。
 
 
 
アラン「姫、どこに行ってたんだよ」
「最近……あんまり遊んでくれないしさぁ」
城に戻った私を出迎えてくれたのは、アランくんだった。
不満そうに唇をとがらせるアランくん。
だけど次の瞬間、アランくんが驚いたように目を見開いた。
アラン「どうしたんだ? その顔」
泣きはらした私の顔を見て、アランくんが言葉を失っている。
りえ「……大丈夫だよ」
「それより、アランくんに謝らないといけないことがあるの」