キャサリン「とにかく着替えたら、まずはビーチに行きましょう?」
りえ「う、うん……」
私はメイドさんに案内されながら、風通しの良い廊下をいちいち感動しながら着いていった。
私は用意していたミニワンピースに着替え終わると、窓から見える海に見とれていた。
(……確かにこんな環境なら、キャシーの体にはいいかもしれないな)
潮風はからりと渇いていて、気持ちよく頬を撫でてゆく。
少し落ち着いた気分になったところで、ドアをノックする音が聞こえた。
りえ「はーい」
(……キャシーかな?)
そう思いながらドアを開けると、立っていたのはキース王子とリュークさんだった。
キース王子「おい、遅いぞ。玄関でキャシーが待ってて……」
全部言い終わらないうちに、キース王子は口をつぐむ。
そしてプイッと顔をそらされた。
(……ん?)
りえ「わかりました! 今、行きます」
不思議に思いながらも、私は2人の後を着いて行ったのだった。
キースは後ろから、バタバタと足音が聞こえるのを耳で確認して歩き出した。
そしてチラッと一旦、りえの方を振り返る。
キース王子「……何だよ……ちょっと肌を露出しすぎだろ」
キースは小さな声でボソッとつぶやく。
すると隣を歩いていたリュークが、不思議そうな顔をしてキースを見た。
リューク「……何か、おっしゃられましたか?」
キース王子「何でもねえよ」
慌ててキースは顔をそらす。
自分の顔が赤くなっているのを、誰にも気づかれないように……。
真っ白な浜辺に、見渡す限りに広がるエメラルドグリーンの海。
ひとつも足跡のない砂浜に降り立ち、私はキョロキョロと辺りを見回した。
りえ「あの……他の人はいないのですか?観光客とか……」
キース王子「はあ?いるわけねえだろ?ここは俺の誕生日にもらった島なんだから」
当然のようにキース王子は言いながら、サーフボードを抱えて海へと入ってゆく。
(え、誕生日って…ええ!?……ぜんっぜん、ついていけない!)
キャサリン「もう……りえったら。いい加減、慣れないと」
そう言って楽しそうに笑うキャシーを見ながら、私もつられて笑った。
椰子の木陰でキャシーは絵を描いたりして、ゆったりと過ごしていた。
その様子を見ながら、私は横でホッと息をはいた。
(……よかった、キャシーにとっていい気分転換になってるみたい)
海の方に目を向けると、キース王子は波にうまく乗っているようだった。
(……こうして見ると、やっぱりカッコイイな)
ひきしまった体で器用にボードを操っていて、髪が濡れてキラキラと光っていた。
??「キャシー様、ご体調はいかがでしょうか?」
私はビクッとなって思わず、振り返る。
(……まさかキース様に見とれてたなんて、気づかれてないよね)
いつの間にか、リュークさんがキャシーに飲み物を運んできたところだった。
キャサリン「とても良いわ。お城にいるときと比べて、たくさん空気を吸えてるような気がするの」
それを聞いて、リュークさんは安心したような表情を浮かべる。
キャサリン「それよりもリュークの方が疲れてるように見えるけど?」
するとリュークさんが苦笑いを浮かべる。
リューク「実はこの旅行に行くために、キース様が徹夜で仕事をされて……」
「それに付き合わされたものですから……」
言いながら、軽くため息をはいた。
リューク「今回の旅行に参加される予定はなかったはずなのに……」
「急にスケジュールを調整しろだなんて……」
キャサリン「兄様に合わせるのは、大変ね」
キャシーは気の毒そうに言うと、私にそっと耳打ちした。
キャサリン「私がりえも一緒に行くことになったって、言ったからかしら?」
りえ「えっ……?!」
私が驚いた顔をしてキャシーを見ると、可愛くウィンクして見せたのだった。