傷口の処置をしている時の
『メロリン持ってきて』
のメロリンが気になっていたが
そんな事はお構い無しに
医師の処置は進められていった
『よし、自分の身体が今どうなっているか
みてもらうよ』
と、手鏡を持たされた
どんな風に処置をしているのか気になっていたので、待ってましたと言わんばかりに鏡を見た
鏡に映った自分の胸には
ぽっかりと丸い筒状の穴が開いている
先週より更に大きく深い穴が出来ていた
『これが表皮、これが真皮
痩せてるからあまり無いんだけど、これが皮下脂肪ね
先週はこの皮下脂肪まで開けたんだけど、壊死してるから今日はそれを全部取ったからね
これ、この見えているのが胸の筋肉ね
今回の手術では入れれなかったけれど、エキスパンダーはこの胸筋の下に入るからね』
溜まっていく血を時々グリグリと拭いながら
傷穴から見える身体の中の説明を丁寧にしてくれる
仰向け状態で鏡を覗いているのでよくわからなかったが、頭もとにいた学生達も一緒に見ていただろう
医師の説明は学生達に向けてのものだったかもしれないが、自分もものすごく興味があるし
聞いていて楽しい
ワクワクすると言っても良いくらいだ
自分の身体なので遠慮なく覗き込み
説明を聞いていた
医師も嬉しそうに色々な事を教えてくれる
自分の胸筋を見るなんて
滅多に出来ない貴重な経験だ
あんなに気になっていたメロリンだが
もちろんメロリンキューであるわけはなく
傷口にあてる特殊な加工をしたパッドだった
傷穴に軟膏を塗り入れた上にメロリンをのせて
メロリンを覆うようにテープで止める
これで血は流れ出て来ない
医師から
▪傷口が治るのに約6週間かかること
▪引き続き一日2回シャワーでよく洗うこと
▪軟膏を塗ってメロリンをあてて傷口を乾かさないようにすること
とにかくウエットにねと
最後はルー大柴っぽく言い
抗生剤の飲み薬を3日分処方してくれ
流石にこの傷口は心配だからと
二日後にまた外来の予約を入れてくれた
術後のハプニングで忘れかけているが
自分はガン患者だ
ガンの治療であるホルモン療法は
傷口が落ち着いてからと乳腺外科の医師から言われている
自分は今、どこに向かっているのだろう
いったいいつになったらホルモン療法が始められるのだろうか
珍道中のガンの道程だ