現代の日本と5分だけ時空がズレて存在する、もう一つの日本。
それは、第二次世界大戦を降伏せず、地下に無数のトンネルを穿って国体を成し、米英連合軍とゲリラ戦を展開する誇り高い日本だった。
人口は26万人に減少、しかしながら素晴らしい科学技術と文化を持ち、世界中の主要人物から"アンダーグラウンド"と畏敬を込めて呼ばれる戦闘国家だった。
箱根山中をジョギング中にこのもう一つの世界に迷い混んでしまった小田桐の目を通して描かれる、五分後の日本の驚くべき話です。
作者は村上龍。
1994年3月に幻冬舎から刊行されました。
村上龍自身も公言しているように、自身の代表作で最高の作品だそうです。
私トリンリは、"限りなく透明に近いブルー"に次いでこの"五分後の世界"と続編の"ヒュウガ・ウイルス五分後の世界Ⅱ"が大好きです。
五分後の世界の日本(アンダーグラウンド)には、あるべき日本の姿、日本人としての誇り、矜持がこれでもかと散りばめられており、読み進むに従って背筋が延びてくるのを感じます。
なにぶん"戦闘国家"と化した日本が舞台ですから、凄惨な戦闘場面の描写なども出てきますが、読んでいて大変小気味の良い作品です。
左翼とも右翼とも異なる戦闘日本。
国土占領国との戦いは果たして終わるのか。
この先、どのような未来が待っているのか。
これらについては、一切言及がありません。
ただただ、日々のリアルな日本の描写が、緻密に繰り返されていきます。
そして、物語終盤における小田桐の決意とは
お読みになっていない皆さま、是非この問題作をお読みください。
もちろん、続編の"ヒュウガ・ウイルス"もよろしくお願いします