先日の「大事件」の話です。
子供が5歳の時の夏。
一週間も夏休みが取れたので、伊豆下田の弓が浜海水浴場へ行こう、ということになって、ついてはカメラが欲しいよね、ということで一大決心をして買ったカメラがオリンパスOM-1でした。
たしか、旅行の4~5日前だったと思います。当時、会社が赤坂にあったので、赤坂の小さなカメラ屋で、なんだかドキドキしながら買いました。
自分が働いたお金で買ったカメラはこれが最初でした。
レンズは、当時一番明るかった(といっても他社も同じようなレンズは出していましたが・・・)、G.ZUIKO 1:1.4 f=50mmというレンズで、そのレンズの玉の大きさにまずびっくりしました。
シャッター音がまたよくて、学生時代に持っていたペンタックスは、「ガシャッ」という味気ない音だったのに比べ、オリンパスは、「カシャ~ン」という感じのやさしく余韻が残るような音で、うっとりしたものです。
旅行は3泊4日の予定だったので、荷物が多く、東京駅で座席を取るのも大変だったのですが、家族3人なんとか座ることができて、ほっとしたのでしょうね。前日徹夜だったこともあって、眠り込んでしまい、起こされた時はもう下田でした。
下田は終点なのであわてることもなかったのですが、乗客がみんなぞろぞろ降りるので、何となく焦っていたのでしょうね。
両手にバッグを持ち、子供を気にしながらみんなの後について改札を出て、バス停に着いたときです。
「あなた、カメラは?」
妻の声にはっとして、気が付けば、なんとカメラを持っていなかったのです。
たしか、窓のところのフックに掛けたはず、と思いながらあわてて引き返し、駅員に事情を話したところ、幸運にも、乗ってきた電車はまだホームに止まっていたんですね。
ほっとして、乗っていた車両の座席にいったのですが、ない!、ないのです。カメラが!!
車両を間違えたかと思い、前後の車両を探したり、車掌がが忘れものとして持っていったのではないかと、訪ねたりしたのですが、とうとう出てきませんでした。
電車を降りて、改札を出たばかりのほんの数分の間に、私の、大切な、お気に入りの、オリンパスOM-1は、幻のように消えてしまったのです。
その時の夏休みは、どうやって過ごしたかも覚えていないほど、ショックで暗い夏休みでした。
そのカメラは10カ月月賦で購入したものだったので、当然のことながら、その後10カ月間、ありもしないカメラのために、せっせとお金を払い続ける羽目になったのでした。
その時のことがよほどショックだったのでしょうね。十数年前、あるフリーマーケットで、オリンパスOM-1を見かけたときは、カメラの状態をろくに確かめもせずに、15,000円の一声に思わず衝動買いをしていました。
なぜかソニーのビデオカメラのケースに、シグマの70-300mmの望遠ズームとナショナルの小型フラッシュ、純正フードとフィルター、皮のケースなどが、防湿剤と一緒に入っていて、以前の所有者がずいぶん大切にしていたのだなあ、と感じられるカメラでした。
きっと神様が可哀そうだと思って、巡り合わせてくれたのかもしれません。





