こんにちは。

 

前回のイヤホンレビュー⑤ SENNHEISER IE40 PROにてリファレンスDAPが変わったと言いましたが

写真を見て気づいた方もいると思いますがこちらになります。

 

iriver A&Ultima SP2000

StainlessSteelモデル。

 

さて、こちらはe市場福袋2020のハイレゾプレーヤー福袋 20万円の当選品です。

我ながら思い切った買い物でしたが、20万出すまでに色々考えたことがありました。

 

※DAPについての私見※

 

正直DAPというのは音質に影響しないわけではないですが、イヤホンやイヤピースなどの

物理的なアプローチに比べてその差異は非常に小さいものです。

今のDACはエントリーでももう十分に高性能なものが使われていますし、設計がオーディオ的思想から

行われている機器であれば、聴覚上の違和感を明確に感じるような悪い変化はないでしょう。

あえて言ってしまえば、スマホでもインピーダンスが低・高すぎず、能率が低いイヤホンでなければ

好きではない音のイヤホンに変えるより変化なんて微々たる物でしょう。

 

なので、DAPというのは基本的には「機能」「ルックス」「所有欲」で選べばそれほど後悔はしません。

「所有欲に金払うとかバカか?」と思われるかもしれません。

でも自分の中ではDAPの「所有欲」のポジションって結構バカにできなくてですね。

 

人間が音を感じる要素は決して「空気の振動」が全てではないと思っています。

目で感じる要素、手で感じる要素、脳で感じる要素。更にはその時の気分や体調で感覚は変わります。

 

DAPの本体がステンレスだろうが、アルミだろうが、チタンだろうが銅だろうが。音質に影響する程の

電気的な変化があるとしたら、それは外部ノイズにそんなに弱い製品設計が逆に心配です。

外部ノイズの受信ならまだしも、信号出力がDAP表面を流れるわけがありませんしね。

 

でも実際変化があると感じる人は多いですし、メーカーもそのように受け取っている。

それって「視覚的な色味のイメージ」や「各金属に対するイメージが拡大したもの」の影響ではないか?

と思うわけです。

 

銅の温かい色味で柔らかい金属というイメージだったり、銀の光沢感や澄んだ高級なイメージだったり、

チタンやステンレスの硬質で冷たい工業用金属のイメージだったり…。

 

そういったプラシーボな効果もまた立派な「音響効果」としてオーディオ界には存在すると思っています。

素材やイメージで音質が変わるなんてオカルト的だからダメ、と言いたいわけではないんです。

少なからず人の聴覚に働きかけたならそれは立派な音響効果だと思いますよ。

なにしろ人が五感を使って感じた音以外に、この世に人が感じる音は存在しないですからね。

(ただし、価値がオカルトに100%全振りしたような製品や理論には懐疑的です。あくまで付加的な部分を

どの程度容認するかであって、「挟む紙に書いた人物のサインの違いで音質が変わる」みたいなのは

信用に値するとは考えていません。)

 

つまり、DAPにおける「カタログスペック」や「見た目の高級感」や「価格や商品のランクの高さ」は

立派なDAPの性能になりうるのではないかと思っているわけです。

(でもこれはあくまでユーザー側としての意見です。メーカーが価格の高さを商品価値に含めたら意味分からないですからね。)

 

※私見ここまで※

 

私のDAPに関する持論はこんな所です。正直要素が多い為複雑かつ判別が難しいのがDAPです。

イヤホンでドライバ数に音質は比例しないように、搭載DACチップで音を判断しないのは重要ですが、

イヤホンより音の違いを感じるのが難しいが故に音以外の部分の重要性が上がる、という事ですね。

 

 

所有機であるAK70MkIIやXDP-30Rは間違いなく優秀ではあるのですが、ある程度高級なDAPが

別に欲しいと前から考えてはいました。そしてその機会は福袋までは待とう、とも考えていました。

5~15万円程度の製品が一番コストと音質、機能性がまとまりやすいと思い、色々試聴しました。

 

① Astell&Kern SA700

 

出たばかりの機種で、AK100世代の後継的モデルとのことです。個人的にAK100の世代の音を

聴いたことが無いので、シンプルにSA700の音で判断する事に。

 

まず、AKシリーズで一番聴いたのがAK70MkIIなのですが、AKシリーズの音って

「やや乾いた少し高域寄りの音」というイメージなんです。SA700もそのイメージに近かったですね。

あと見た目より結構重い。

AK70MkIIがCS4398のデュアルだった為か、より高域に寄った音に感じていましたが、SA700は

AK4497なので低音域に関してより深い音まで出ている印象は受けました。

 

ただ、Astell&Kernは発表価格が高価すぎるきらいがありますね。

値下げもどんどん進んでしまう為、発売してすぐ買うよりは、やっぱりちょっと待つのが安定でしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

② A&futura SE100

 

同じくAstell&Kern。第四世代のミドルシップラインですが、十分高いし高性能。

A&ultimaがあまりに高すぎるのもあって、これに落ち着く人も多いと思います。

個人的には平行四辺形みたいな形がちょっと握りが落ち着かなくて苦手…。結構重いし。

 

搭載チップであるES9038PROはチップ1枚で8ch出力ある上に1chにつき4つもDACが並列動作する為

本来は完全に据え置き機用チップです。KANNCUBEはこれを2枚も積んでああなったようですが…。

ポータブル用であるES9028PROはES9038PROを1ch1DACに機能を制限したモデルとのことで

DX220なんかに搭載されていますね。
どちらも電流出力型チップで、IV変換回路をメーカー側で設計するため音作りに個性が出ます。

 

Astell&Kernのオーディオ思想は結構ピュアオーディオっぽい所があると思っていて、あまり個性や

味付けに躍起にならない印象があります。再生機器で味を付けすぎるよりは、あくまで忠実に

フラットな状態で、そこからイヤホンやヘッドホンで好みの味を付けるという考えに感じます。

SE100はAstell&Kernのスッキリサウンドを忠実に守っていて、あまり派手な音はしません。

フラットならではの高域の明瞭さが感じられるので、これがAstell&Kernの特徴かもしれないですね。

 

 

 

 

 

 

③ SONY NW-ZX507

 

正直これにしようかとも相当考えました。なにしろ値段がとても丁度いい。しかも安心のSONY。

 

SONYのDAPは「DACチップが無い」という非常に特徴的なメカニズムを持っています。

フルデジタルアンプという仕組みで、デジタルからアナログに変換してからアンプで増幅せずに、

デジタルのまま信号を増幅して最後の最後にアナログで出力するため非常にノイズに強いです。

またバッテリー消費も少なく、バランス接続の際もLとRをデジタルデータのうちに処理してしまう為、

クロストークが非常に少なく済むメリットもあります。やはり、市場でメインとなっているDAC搭載DAPとは

実際に聴き比べた時に一番違いを感じました。こういったメカニズムの違いで音質に変化があるのは

論理的で非常に良いですね。

 

全体的に重低音の響きが一番深く感じました。サブウーファーの帯域がとても良いです。

また、カッチリしすぎない程よい丸みのようなものを音の輪郭に感じます。ボヤけとは違う類のものです。

その少しの風味のようなものがあることで、音に深みと勢いを感じるのかもしれません。

音に立体感があり、深い所までグッと出ている為、音場もなかなかに広く感じられましたね。

 

WM1Aや1Zみたいな機種とは比較していませんが、ZX507の完成度は非常に高かったです。

サイズも程よく重さも軽めですし、WMポート廃止、Androidの採用と突然かゆい所に全部手が届いた

感じの進化をしており、ウォークマン買うなら今この507を買え!というタイミングだと思います。

 

 

 

 

 

 

④ Cayin N6ii/E01

 

アンプとかじゃなくてマザーボードまで交換しちゃうという実質DAP複数持ちみたいな機種。

 

AK4497EQのA01、PCM1792AのT01、ES9038PROのE01とDACが変えられますし、A01/T01はオペアンプ

ですがE01はディスクリートアンプだったりと凄く複雑な機種です。

試聴時は知らなかったのですがE01はAクラス動作やABクラス動作のスイッチも出来るようで、正直

立ち試聴程度ではしっかりと正体を掴むのはとてもむずかしい気がしています。

 

個人的には中高域のクリアさはかなり良かったと思います。低域の深みは少し控えめで、高域の

スッキリした音が特徴的という印象でした。A01やT01の方が低域の深みや元気さは上ですね。

 

 

 

 

 

 

⑤ COWON PLENUE2 Mk2

 

正直、高級かつガジェット感あふれる見た目はメチャクチャそそられます。

ZX507にちょっと足りない要素がこの部分かもしれません。DAPに所有欲を求める人だと語りましたが、

見てこれ凄そうでしょ!という分かりやすいのも大事にしたいポイントなんです。

かといって下品さは一切なく、あくまで機能美的なカッコよさであるのがとてもいいと思います。

エフェクト用にわざわざ別のツマミがある必要はないかもしれませんが、見た目には必要なんです。

 

音の印象としては程よい深みと解像感。上と下のバランスが良いですね。スッキリしすぎない程度に

開放感もあるので割と色んな人の好みに合いやすいかもしれません。

また、エフェクトの数が凄いです。一周するまでツマミ回そうと思ったらエフェクト数が70超えてきたので

おとなしく元に戻しました。気分や曲によっていじるのも面白そうです。

 

※余談※

エフェクトやEQで音を調整するのは邪道、みたいな意見はありますが、必ずしもそうとは思いません。

私の聴くクラブミュージックはそもそもがエフェクターやコンプレッサーで意図的に歪みまくっているので、

正直THD+Nが1%超えてんだか最初からそういう曲なんだかわかんない側面もあるんですよね。

ノイズや歪んだ音を音楽として楽しんでいるので、ホールの録音や生収録の音源を聴いている人とは

ちょっと音や音楽の捉え方が違う部分はあります。そういう楽しみ方もアリだと思っています。

なので音質を沢山変えて遊べるDAPというコンセプトはいいと思いますね。

そもそもDJがかけた曲をその場でエフェクトでイジりまくってるのがクラブだからね。

 

 

 

 

 

 

⑥ QUESTYLE QP2R

 

変わった形してるからなんか高級DAPでああいうのあったなって記憶に残るやつ、QP2R。

スマホっぽいパネルでなくホイールタイプのDAPってのが渋い物好きにクリティカルしそうですね。

 

QUESTYLEという会社自体ポータブルオーディオ界隈では影は薄いですが、据え置きオーディオでは

かなりハイエンドで信頼のあるメーカーのようです。QP2RもDACチップはAK4490ですし、それほど珍しい

特徴でもないですが、アンプにとにかく技術力を持っているメーカーです。

電力消費も大部分をアンプにまわしているそうで、とにかくアンプがヤバい!なDAPになってますね。

逆にそれ以外の箇所には気になる点もいくつかあり(ホイールが滑る割に固くて凄く操作しにくいとか)

なかなかピーキーなメーカーだなぁという感想です。

 

音の方の感想は、結構マッタリしたサウンドだなという印象です。

高解像度、高S/NなDAC等のDAPとしての性能をグッと出してくるAstell&Kern等の主流DAPとは違い、

非常にナチュラルでゆったりした、いかにもクラシックなどの生音に抜群なタイプの音でした。

据え置き機がメインのメーカーらしく、解像感や分かりやすいキレ感とは違うベクトルの音作りですね。

 

DAPを選ぶにあたり、この他にもiBasso DX160、DX220、FiiO M11PRO、HiBy R6SS等の有力な中華DAP

を試聴しました。

が、根本的にDAPにそこまでの音質への影響が無いこともあり、やっぱりM11ProかZX507辺りかなぁ

と思っていたのですが…

 

 

 

 

 

 

福袋の話

 

アキハバラe市場の営業F福袋争奪戦で撃沈した私は「この20万、DAPに入れちゃおっかな」と

思いまして(福耳袋が比較的低額だったこともあり、DAPにはそれほど期待出来なかったのもある)

ハズレてもSP1000Mならまぁどこに出しても恥ずかしくないと購入に至りました。SP1000Mを初売りで

フジヤがすげぇ安売りしたのは流石にグエって思ったけど。

そして1月10日、予定通りSP1000Mが届きました。

 

SP1000Mって軽いのに外箱は結構重いんだな…

 

あ…えっ?

 

 

1/10ってホントに当たるんだな…って思いましたね。

 

内訳としてはSP1000Mが18袋、SP2000が2袋の10%ガチャです。

営業Sさんの話では「完売しなかった袋はハズレ枠を減らして抽選します」とのことなので、

Twitterで20万DAP袋を購入した人の数からすると、一応13%くらいにはなったのでは無いかと。

11人くらいは買った人を確認出来たので、15袋くらいは売れてるのかなという推定です。

 

愛機集合写真

 

SP2000の性能に関しては言わずもがな、A&ultimaの最上位に相応しいものになってます。

AK4499EQのデュアル搭載、出力も強化されバランス6Vrms/アンバランス3Vrmsとなっています。

 

背面にカーボン柄が入っていないのは正直意外でした。ガラス部には斜めにラインが入っています。

 

ステンレスが美しい…

 

まぁ今更細かい仕様や性能について語る程DAP知識も音楽知識もないので、シンプルに行きますね。

 

<音質>

申し分ない!Astell&KernのDAPは比較的薄味でフラットな傾向を強く感じるんですが、

SP2000に関しては高域と低域の質感が細部まで描かれる事で、フラット感はそれほど感じません。

とにかく精緻で本格的な、ポータブルというよりピュアオーディオに近いような音です。

 

AK4499EQをデュアル搭載のうえ、またIV変換を含むアンプ部の再設計により無音部はホントに無音。

まさに音源に含まれていない音は一切無いような感じがしますね。音の立ち上がりもよく粒も細かいので

鳴っている音がよく目立ち、非常にクリアかつ立体感が強く感じられる音に仕上がっています。

 

AK70MkIIのようなエントリーラインと比べると、低域の沈み込みが深くなることで非常にダイナミックレンジ

が広がった感覚がありますし、高域のカサつきが無くなったため音場の広さが格段に良くなっています。

ヘッドホンを接続しての試聴では特に音場の広さはよく感じます。出力レベルの強化のおかげで

鳴らしにくいヘッドホンも鳴らせるのが更に良いポイントですね。

 

<機能性・使い勝手>

機能性は良いと思います。古めのDAPによくあるスクロールがタップに化けたりカクついたりの操作性

のマイナスが一切ないです。凄くサクサク動くし、スクロールもヌルヌルです。

EQはちょっといじりにくいUIですね。プリセットも無いので基本的には付いてるだけです。

触れる帯域の幅は広いので悪くはないとは思いますが、シンプルに使いにくいですね。

 

自分は特に使いたい再生ソフトもストリーミングサービスも無いので、フルAndroid出ない部分は

それほど気になりません。一応オープンAPPで使えるアプリもありますので。

 

SP2000は電池持ちが特に槍玉に上がる気がします。実際に電池持ちはあまり良くない部類ですね。

個人的にはQuickChargeに対応した充電器でないと使用しながらでは消費に追いつかない事もある為、

QC3.0または9V/1.67Aの充電が可能な電源を用意したほうがいいです。

とはいえ一日保たないような事はないですので、毎日適当に充電すれば問題ないでしょう。

 

USB-DACとしての使い心地も良好です。やはり音が良いですし、接続もスムーズです。

USB type-C(USB3.0)の通信速度も良好ですね。大きなファイルもサクサク入れられます。

 

重さは確かに結構ずっしり来ますね。ズボンのポケットに入れるのは少し厳しいサイズ・重さなので、

ベルトに付けられるポーチなどをオススメします。お金がある人はバンナイズ。

私はお金がないので… NEXARY スマートフォン ウェスト ポーチを使っています。

中仕切りが無いためDAPが入れやすく、中が起毛生地なのでDAPを傷つけにくいです。

 

 

 

<総評>

A&ultimaに相応しいDAP最高峰の音質と、Astell&Kernの培ってきた安定したUIが魅力のDAPです。

ただ、44万払って買うとなればコストパフォーマンスは良くないです。

イヤホンではありますが、A8000のような「極限までピュアな音」を求める人ならば、現在での最良の

選択肢かもしれません。

音楽的に満足できるレベルで言えば10万以下のDAPでもいい機種は沢山あります。

また、SP2000はDAPを便利に使いこなしたいという人にはあまり合わないでしょう。

純粋に音質を求める人、そのために少しの不便は我慢出来る人が目指す機種ですね。

ある意味、最もピーキーなポジションのDAPであると思います。

 

 

自分は今回、幸運にもSP2000と出会うことができました。

それまでは「DAPで10万以上はコスパが悪いから不要」と思っていましたが、実際に自分で立ち試聴で

なく、落ち着いた環境で聴き比べると違いが分かる程度には音質に差があることが分かりました。

リファレンスにはこれ以上無い程優れた機種だと思いますので、今後のリファレンスDAPはSP2000に

変更致します。

 

 

DAPのレビューはイヤホンなんかより全然難しいですね…。

DAPに何を求めるかは、イヤホンよりもさらに人によって違う気がしています。

「4.4mmが必須」「フルAndroidOSじゃないとダメ」「電池もち最優先」など、かなり多岐に渡ります。

なのでDAPを選ぶ際は、そういった自分のDAPに求める要素をしっかり確認しておくといいと思います。

 

以上、DAPレビューでした~