Part20 知ってる
ウェイウェイは20才にして初めて自分がエイリアンであることに気づいた- -
それも亀の星の>o<
つまり亀星人とは刺激を与えられると縮み上がってしまうのだ。具体的に言うと、さらに2日が過ぎたのに彼女はまだゲームにログインしていない!!!!!
……
……
私は‘へそ曲がり’星人に乗っ取られたに違いない= =
フゥッ~~
とっくに自分の気持ちに気づいてるんでしょ。じゃあ次にやるべきことは、ゲームにダッシュして、大神の心をつかみ取るために真っ向からあるいはそれとなく、あらゆる手を試してみることじゃないの。どっちみち私も大神も独身なんだから何の懸念もない~~ (大神が未婚であることは早くに知っていた。1つには愚公たちからふざけて‘花の独身男’と呼ばれていたから。2つめは結婚前、ウェイウェイが彼に直接尋ねたからだ。当時はもちろんこの質問に何らかの意図があったわけではない。ただウェイウェイは幼い頃から倫理観が比較的高く、たとえゲームの中であってもすでに彼女がいたり、既婚の人とは関わりたくなかったのだ)
それなのにウェイウェイはゲームにログインせず、ぐずぐず奇妙な行動ばかりとっている。例えば何度も繰り返し動画の中の大神のあの言葉を聞くこと……
ウェイウェイも自らの突飛な行動に驚いたが、あたふたせず早々にその理由づけをした——初めての恋愛なんだから少々奇想天外なことをするのは当たり前。そうじゃないほうがおかしいのよ。
>_<
だから彼女は突飛であり続けた。毎朝起きると‘今日こそ必ずログインするぞ’と誓い、夜寝る前には‘明日すればいいや’と自らを力づける……
こんなことを2日間繰り返した後、彼女自身も堪えきれなくなってついに心を決めた!
土曜日!
土曜日に6級試験が終了したら、即行でログインしよう!
ウェイウェイの計画は素晴らしかった。だけど予定通りにいかないのが人生というもの。金曜日の午後、1本の思わぬ電話がウェイウェイを殻の中から叩き出した。
寮の電話が鳴り、まずシャオリンが受けてウェイウェイに代わると、相手方はオフィシャルに尋ねてきた。 「もしもし、ベイ・ウェイウェイさんでしょうか?」
「そうですが、どちら様ですか?」
「ベイさん、はじめまして。私ども風騰グループ“夢游江湖”の運営部です……」
その後、ウェイウェイは人生で初めて棚から牡丹餅が落ち、光り輝く瞳から¥¥が噴き出した。
相手が語るには、会社の上層部が偶然彼女が公開した動画を見たところ、よく練られたプロットにとても感銘を受けたので、ゲームの公式プロモーションビデオとして使用したい。さらに新しく製作するゲームに略奪婚のシステムを追加したいので、彼女からこの映像の著作権を買い取らせてほしいと言う。
ウェイウェイは驚きと興奮で受話器を握る一方、頭を冷やして本物か偽物か判別する。おそらく本物だろう。こんなことで人を騙したところで何の利益もないし、ゲーム会社が彼女の連絡先を知っていることもおかしくはない。アカウントがハッキングされるのを防ぐため、彼女は最初の登録情報にはすべて真実を記入したのだ。
相手が話し終わるのを待ってからウェイウェイは昂ぶりを抑え、穏やかな声で答えた。 「お返事さしあげるまで少しお時間をいただけるでしょうか?あの動画は私1人のものではないので、友人の意見も聞かなくてはなりませんので」
電話を切ると、ウェイウェイは興奮したまま大急ぎでオンラインした。ログインした途端、友達リストが狂ったように跳ね上がる。クリック、クリック、クリック。1つ1つクリックして開いてみると、すべて彼女がここ何日も来ないせいで気にかける友達からの問い掛けだった。続けてクリックして10数通のメッセージを読んだ後、ウェイウェイは手を止めた。
最後のメッセージは奈何のものだ。
送信時間はたった今、ほぼ彼女のログインと同時で、極めて言葉少ないメッセージだった。
「微微、ここに来てくれ」
夫婦スキル「生も死も共に」をクリックするだけで、瞬時に伴侶のそばへ転送される。しかしウェイウェイはそのメッセージを見ても、ぐずぐずして動かない。高揚感が多少冷めると突然、緊張感を覚えた。
その時また‘チン’という音が聞こえて、新たにメッセージが来た。ウェイウェイはかなり緊張しながらクリックしたが、送信者を見て、ひそかにホッとため息をついた。奈何ではなく愚公だ。
愚公 「義姉さん、ごめん。俺をぶん殴ってくれ」
彼へのほうが心安く答えられるので、ウェイウェイは直ぐメッセージに返信した。 「どうしたの?」
愚公が号泣の顔文字を送ってきた。 「 あの日 会食からの帰り道、俺が運転してたんだけど、事故を起こしちまった!」
ウェイウェイはぎゅっと胸が締めつけられた。事故ですって!心臓がドラムを叩くように激しく飛び跳ね、血の気を失う。数秒過ぎてようやく反応した。彼らは今、ネットにアクセスできる状況なのだから何ともないはず。にもかかわらずウェイウェイは動悸が激しくなって、返信にしばらくかかった。 「あなたたち、大丈夫なの?」
「ああ。木にぶつかってね、助手席に座ってた三男のほうは重傷を負った。数時間意識がなかったけど、夜中に目を覚ましたよ」
ウェイウェイは激怒の感嘆符を彼にいくつか送った。 「!!!!!!」
何時間か意識がなかったですって?愚公め、このブタ!
もう彼女は何もためらうことなく、瞬間スキルを使って奈何のそばに移動した。
奈何は1人落霞峰に立っている。
ウェイウェイは夕陽と白衣の琴楽師のコントラストにのどかな風情を味わう気分ではなく、急いで一行タイプした。 「どうしてゲームなんかしてるの。ゆっくり休まなきゃ」
奈何は一瞬驚いたようだが、その後返信した。 「もう大丈夫」
「……それでもゲームはダメよ。神経を消耗するわ」
「ゲームはしてない。ただついでに開いてみただけだ」
ついでに開いてみた……
じゃあ私がネットにつないだ途端、どうしてメッセージを送ることができたの?ウェイウェイは反論したかったが、なんかうまい言葉が浮かばず、ただ訊き返した。 「まだめまいがするの?」
「いや」 奈何が答える。 「すまなかった。あの日約束を破って」
「そんなのちっぽけなことだわ- -」
交通事故に比べたらあえて話題にする価値もない。
夫婦対抗戦のことに話が及ぶとウェイウェイは突然、自分が何日もログインしなかったのは怒りのせいだと奈何が誤解したかもしれないと考えた。ああ、私は決して怒ってなんかいないわ。ログインしなかった理由は単に……
ウェイウェイは少し気がとがめたが、頭隠してなんとやら。 「もうすぐ試験だから、しばらくログインしなかったの」
奈何が少し沈黙した後、言う。 「知ってる」
パソコンの前でウェイウェイの顔がパッと赤らむ。
知ってるですって~~
あなたは知らないはず!
ウェイウェイは心ひそかに思った。白衣の琴楽師の姿を目にすると胸の中が甘くなったり、酸っぱくなったり。しばらくして、奈何のとても短い4つの文字には無限の意味が含まれているような気がした……ひとしきり彼女の心はあらゆる種類の感情で埋め尽くされた。驚いたことに再会の喜びと失くし物が戻ってきた喜びが入り交じっている。
なんとか自分の感情をコントロールして、ウェイウェイはログインした理由をやっと思い出した。取り急ぎ、風騰グループが著作権を購入したいと連絡してきたことを伝える。奈何は静かに耳を傾け、彼女が話し終わるのを待ってからようやく口を開く。 「この件はちょっとややこしいな」
「えっ、そうなの?」 ややこしい?ウェイウェイは少し戸惑った。
「ああ」 簡潔で力強い返答だ。そして奈何はいともあっさり言う。 「会って話そう」