《微微一笑很傾城》 第19章 悟了 | Silent Separation

Silent Separation

作者:顧漫

中国小説「何以笙箫默」(マイ・サンシャイン)の
日本語解釈文です。
ドラマとは若干異なっています。

Part19 悟了


ウェイウェイも最初は気にしていなかった。大神はこれまで一度も遅刻したことはなかったが、たまに数分遅れることはあったから。しかし時間が刻々と過ぎてまたたく間に7時45分になり、ウェイウェイは焦り始めた。奈何がオンラインでないことを知ると、我慢しきれずにメッセージを送った——

「いないの?」

当然、返答はなかった。

2分あけてもう一度送信した。その後ウェイウェイはメッセージはもう送らず、奈何の名前を何度も何度もクリックして更新し続けた。しかしシステムはそのたび彼女に指摘する——このプレイヤーはオフラインのため応答しません。

愚公、猴子酒たちの名前も暗くなっている。

オフラインだ。

7時50分。

微微は1人で入口にいるNPCの前へ登場した。頭上にチームロゴが記されていたが、チームには彼女しかいなかった。

NPCの周りにはすでに多くの人が集まっている。トーナメント戦と決勝戦は観客に開放されたため彼らは全員、試合観戦のチケットを購入しようとしていた。なのに今 蘆葦微微が1人でここに立っているのを見て怪訝に思い、微微の目の前で論じ始めた。

『現在』[虫がレタスをかじる] どうして蘆葦微微だけなんだ?一笑奈何は?

『現在』[釣りワイヤー] 遅刻ってことはないよな。

『現在』[963] こんな重要な試合に遅刻なんかできるもんか。

『現在』[ノーパンは爽快だ] まだ10分もあるぜ。何を焦ってるんだ、最強の達人ってのはみんな最後に登場するもんさ。

7時55分。

ウェイウェイは一切の議論に見向きもせず、奈何にひっそりメッセージを残す——「入口にいるNPCの前で待ってますから、直接来てくださいね」

傍観者の議論は続く。

『現在』[ガンガン洗う] 何分も残ってないわよ。どうしてまだ来ないの?

『現在』[ロケット亀1.0] 来ないってことはないよね?

『現在』[おたんこなす] マジかよ。歴史は繰り返し、まさかこのカップルも離婚なのか?

『現在』[daydreamer] そうじゃないだろ。離婚するなら蘆葦微微がここに立っているわけがない。

『現在』[ワァーと叫ぶ雷鳴] 蘆葦微微がまた捨てられたとか!

8時。

 


友人たちからの問い合わせがだんだん増えてウェイウェイは1つ1つ開いては閉じ、最後には静かにマウスをクリックして奈何とのチャットウインドウを閉じた。

群衆は徐々に退散する。

『現在』[1生涯独身] 解散解散。 チッ、しけてやがる。

『現在』[☆凝澈☆] 今日は大一番を見られそうな気がしたけど、チケット買ってなくてよかった。

『現在』[犬っころ草] 用も足さないくせにトイレに居座りやがって。試合に出る気がないなら、さっさと退きゃいいだろ。みすみすチャンピオンの座を他のサーバーに譲るとはな。アホくさ。

『現在』[jager] そんな言い方はないでしょ。蘆葦微微と一笑奈何じゃなかったら、私たちのサーバーは決勝戦まで進んでいなかったかも。

『現在』[ロマンティック] 待ってみようよ。準備時間が3分あるから、3分以内に入場すれば試合ができるじゃん。

『現在』[七月] 来そうにないな。フゥッ、蘆葦を見ていられない。

『現在』[小雨綿綿] ホントお気の毒さま、hoho

8時2分。

ウェイウェイは入口のNPCをクリックし、1人でアリーナに入ろうとしたが、NPCが注意書きを表示した : 貴女は御主人と一緒でなければ入場することはできません。

8時3分。

システムが通知を出し、一笑奈何と蘆葦微微が棄権したため今大会のチャンピオンは他のサーバーの夫婦が勝ち取ったと宣言した。

8時3分。

ウェイウェイはゲームからログアウトした。

 


***

「この2日間のウェイウェイ、なんかおかしくない?」

夜の寮内、イヤホンをつけたままベッドの上でうつ伏せになりコンピューターを見つめて何やらやっているウェイウェイを見ながら、シャオリンが考え深く話す。

「普通普通。試験のせいだってば。ウェイウェイは毎学期、試験前になると怪獣に変わるもん」 アルシーは答えながら、頭も上げずせっせと書いている。

「だけどゲームもしてないよ」

「正常だってば。今ゲームをしたら、奨学金を貰えないでしょ。奨学金を貰えなかったら、来学期にゲームするお金もないじゃない」 せっせと書き続けるアルシーはペンを止めないが、口も止まらない。「ウェイウェイの心配してる暇あるの?おととい涙でウルウルしてなかったっけ。ダーチョンはどんな具合?」

「大丈夫。当然の報いだわ。4年生の先輩たちが卒業の食事会を開いてるとこへ図々しくついて行くからよ。事故なんかに遭って」

シャオリンはこの話をしているうちに腹が立ってきた。ウェイウェイの件は脇に置いて、自分の彼氏のしくじりに小言を言い始めた。

自分の世界に没頭していたウェイウェイはルームメートが自分について論じ合っていることを当然知らなかった。この時、彼女は女盗賊が略奪婚する動画を見ていた。この2日間ゲームもせず、勉強の時間以外は何度も何度も動画を見た。時にはハッキリ突っぱねて単語をいくつか覚えても、結局はまた我慢しきれずに見てしまう。みぞおちの辺りに絶えず悶々としたものが絡みつき、この動画を見る瞬間だけちょっと落ち着くような気がした。

あるいはそのシルエットを見てる時だけ。

一笑奈何。

一笑奈何。

心の中で静かにこの名前を繰り返し、ウェイウェイはぼんやりと画面を眺めた。

画面の中の白衣の琴楽師は寂しげに落霞峰に立っている。シンプルだが重苦しいバックミュージックの中、彼の後ろ姿には孤独と荒涼感が滲んでいた。ウェイウェイはそれを見ているうちに、なぜかあの日1人でNPCの前に立っていた自分とあの時の気持ちが思い浮かんだ。

あの時の気持ちはたぶんパニック状態だろう。

約束を破られて怒ってるわけじゃなく、試合ができなくて残念なわけでもない。漠然とした焦燥感、不安感だった。最後の数分、彼女はただただ考えるのをやめられなかった——

奈何はどうして来ないんだろう?

まさかこの先、彼はずっと来ないの?

オンラインゲームにはサヨナラも言わず去るプレイヤーがとても多い。まさか奈何もそんな風に消えていなくなるの?

 


ここ数日彼女は動画を見ないではいられず、そのたびに頭の中では同じことを繰り返し考えている——ひょっとしてこの動画がこれからの長い日々、私と奈何がかつて一緒にいた唯一の証になるのではないか……

アーア~~~

ウェイウェイは力なくベッドの上にうつ伏せ、自分を持て余した。

私はいったいどうしてこんな不可解で非論理的なことを連想するんだろう?奈何はもしかしたら用事があって来られなかっただけかもしれないのに、なぜこんなに深刻に考えちゃうの?それに奈何が永遠にいなくなったのかどうか、今ゲームにログインしてみさえすればわかるのに、なぜそうしないの~~~

混沌とした感情がほとばしる間、女盗賊の物語は再び最後まで達して悲しい音楽の中 白衣の琴楽師と紅衣の女侠は停止し、薄くなる。

ウェイウェイは目を拭う。本当に素晴らしい。なんと動画を見てまた彼女の目に涙があふれたのだ。正直なところ、この動画を初めて見た時は非常に感動したが、その後何度も見て、すでに麻痺していたはず。

今 思わずまた……

画面の中のエレガントな白衣の琴楽師をぼんやり見ているうち、ウェイウェイの心はゆっくりと静かに、しかし実にはっきりと悟った……

その後‘バン’という音を立ててパソコンを閉じイヤホンを投げると、ウェイウェイは頭を枕の下へ埋めた。

まずいまずい。感傷的になっちゃった。

あらいやだ……

私、あの人を好きになったみたい。