2015年12月3日(木)
渋谷クラブクアトロで、ウソツキ。
1stフルアルバム『スーパーリアリズム』リリースツアー<みんなでウソツカナイト>のファイナルで、バンド史上最大キャパのワンマンライブ。ということで、この日にかけるメンバーたちの意気込みは相当のものだっただろう。
果たしてクアトロは満杯だった。実際は関係者でいっぱい…なんてことはまったくなく、ちゃんとチケットを買って楽しみに観に来た若いコのファンたちでギッシリ埋まっていた。おお。すごいぞ。
ギターの吉田くんからひとりひとりステージに登場した4人のメンバーは、普段のライブと違ってちゃんと衣装を着用していた。ドラムの林山くんの衣装がなんだかメキシコ人みたいで登場した際にちょっと笑いが起きたけど、でも似合っててよかった。彼、いい存在感だな。
「ミライドライバー」で幕を開け、バンドは次々に曲を繰り出していった。本編16曲。アンコール3曲。さらに予定外のダブルアンコールもあって、全部で20曲もやった。いままで出したミニアルバム2枚とフルアルバム1枚のほぼ全曲を演奏したことになる。
観ながら僕は楽曲の力を改めて強く感じていた。どの曲もメロディが親しみやすくて、近い感覚の持てるものばかりなのだ。「春風と風鈴」は本当にいい曲だなぁ、一緒に口ずさみたくなるなぁ、とか、「水の中からソラみてる」は疾走感あるキラーチューンで、やっぱり瞬時に高まるなぁ、とか、「ピースする」はズシンと響くなぁ、とかとかとか。1曲1曲の強さと広がりがCDで聴くより遥かに感じられ、ウソツキはやっぱりライブバンドであるなと実感した。
アンコールの終わりに「きっと友達」「ダル・セニョールの憂鬱」と、曲調としてはどちらかというとホッコリするような楽しい感じの曲を持ってきたのもいいなと思った。そういう気持ちで終わって帰ってもらいたいという思いあっての配置だろう。
序盤はメンバーみんな緊張した表情ではあった。が、ベースの藤井くんとドラムの林山くんはそれでも比較的平常心に近い気持ちでプレイしているように見えた。4人のなかで一番オープンマインドな吉田くんはわりと始まってすぐにたくさんのひとたちの前でギターを弾くのが嬉しくてしょうがないといったふうになったようだったし、誰より楽しんでいるようにも見えた。ヴォーカルの竹田くんはというと、ステージに出てきたときからもういろんな思いが溢れだし、なかなか平常心になれずにいたように見えた。いま自分がクアトロのステージに立って歌っているということをときどき噛みしめ、目に見える景色を焼き付けようとしてもいるようだった。そうしてちょっと泣きそうになってるように見えた場面もあった。そりゃあそうだろう。と、アルバムリリース時に彼にインタビューしていろいろキツかった学生時代の話なんかも聞いてた僕はそう思い、ああ、よかったなぁとも思ったのだった。そんな彼のヴォーカルは曲が進むにつれて明らかに熱を帯び、声そのものの力が増していったのもまた確かなことだった。
なんといってもウソツキを好きな大勢の観客がそこにいる。ということは、大勢のひとたちが「旗揚げ運動」というウソツキ流のダンスナンバーで右手と左手を交互に上げたり下げたりするということで、実際そのような光景が目の前に広がった。また「ピースする」の最後ではそこにいるほぼ全員がピースした手を高く挙げていた。壮観だった。ステージからそれを見ていた彼らにはもっと美しいものとしてそれが映ったことだろう。
僕たち私たちは基本的にみんなひとりだ。僕たち私たちはネガティブな感情をけっこう持っていて、ちょっとしたことで落ち込んだり不安になったり憂鬱になったりもする。僕たち私たちはとぎどき自分が嫌になる。僕たち私たちはそしていつもどこかにさびしいという感情を抱いてるし、ひとよりうまく生きれてない気がしたりもしている。
でも、基本的にひとりだって知ってるから、だからこそ“ここ”では繋がってる感覚を持ちたい。音楽で気持ちを開放したい。“一緒”になりたい。
そんな思いでライブに足を運ぶひとは多いだろうし、そんな気持ちを持ってウソツキというバンドのライブを選んでいる「ひとり」のひとはきっと多いだろう。ウソツキを観に来るお客さんは、ほかのバンドのお客さんよりも「ぼっち」のひとが多いんですと竹田くんも言っていた。で、誰よりその竹田くん自身が、きっとそんな気持ちでステージに立っている。
だからクアトロで竹田くんは、たぶんいつもより強くみんなと繋がりたいという気持ちを持って歌っていたんじゃないかと、僕にはそんなふうに感じられた。したたかさだって持ち合わせているはずだし、それが楽曲の作りに表れだってするが、少なくともこの夜の彼にはそれがなく、ただただ真摯かつひたむきに歌い、なんとかみんなと心を合わせようとしているようだった。メンバーたちもみんなそのように演奏していた。 インタビューしたとき、竹田くんは学生時代のかなり長い間、自分はアメーバのようにひとから見えないもの~存在しないものとして生きることにしていたと話していた。そういう彼がやがて音楽に救われ、誰かに向けて曲を作るようになり、3年前から林山くんと、2年前から藤井くんと吉田くんと一緒にウソツキというバンドで活動するようになり、いまクアトロの大勢の観客の前で自分がこんなにもハッキリと存在していることを感じて歌っている。なんとしてもみんなと繋がりたいという気持ちで歌い、アンコールの「ネガチブ」では人生何度目かの似合わないコールアンドレスポンスも必死でやっている。そりゃあ見ているこっちだってグッとくるよ。 そして彼は何度も「ありがとう」と観客たちに伝えていた。何度も何度も「本当にありがとう」と伝えていた……。
いまの4人はきっと、少し前とはバンドや音楽に対する意識が違うんだろうし、ライブに対する意識もこのツアーを通してずいぶん変わったに違いない。その変化や、このツアーを通して見た景色が、きっとこれから生まれる楽曲やこれからのライブにもなんらかの形で反映されることだろう。
いいライブだったし、彼らにとって大きな意味を持ったライブだったと思う。だから来年4月1日の劇場版ライブもとても楽しみだ。
まったく、ウソツキはウソのつけないバンドである。