2016年6月4日(土)~5日(日)
長野県「こだまの森」キャンプ場で、TAICOCLUB'16。 夜から雨が降り出し、夜中から朝にかけてはどしゃ降りのレベルだったが、それでも午前4時近くまで楽しむだけ楽しんで寝た。
フジのように「これとこれとこれを絶対観る!」などと気合い入れて臨むでもなく気分任せの出たとこ勝負でユルく楽しんでても、あとになってみれば強烈な印象で脳裏に焼き付いてるアクトが必ず数組ある…というのはTAICOCLUBの常。それ、こだまの森の夜が苗場の夜より闇の濃度が深いゆえってところもあるかもしれぬと、真っ暗な夜の坂を下りながらふと思った。森と坂と闇と空気と…あの場ならではの磁力の働きが確かにある。
クボタタケシ→シンリズム→テイラー・マクファーリン&マーカス・ギルモア→サカナクション→ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー→水曜日のカンパネラ→Tycho→ARCA+JESSE KANDA AV SET→Dan Deacon→Traxmanと観て、朝はLosoulの音を聴きながらテント撤収して帰路についた。
日も暮れないうちに始まったテイラー・マクファーリン&マーカス・ギルモアは今回楽しみにしてたひとつだが、想像の上を行った。「rest in peace、モハメド・アリ」と言ってライブを始めたテイラーは優しそうな顔してヴォーカルも柔和な感じなんだが、低音の圧がエグいのなんの。それはもうマッシブアタック並。恐らくジャズクラブで単独公演をやったとしてもあの音響は実現できないだろうから、TAICOであの地鳴りみたいな音を体感できたのは本当によかった(TAICOの音響のよさ…とりわけ低音の凄さは、フジと並ぶか、あるいはそれを上回るくらいに良いのだ)。テイラーはまた、ボイパをキメたりなんかもして、涼しい顔でやることがいちいちイカしてた。自由に出入りするマーカスの変幻自在のドラムとの息の合い方もバッチリすぎた。なんかとっても仲良しっぽいの、ふたりの関係性が。あー、これ、今回のベストアクトだわ、と、その時点では確かに僕は思ったのだ。が。
夜になって観たワンオートリックス・ポイント・ネヴァー。その、ある意味エイフェックスツイン的な狂気も感じさせるグロテスクなぶっ壊し電子音に、ぐえ~、こりゃすげえわと。なんじゃこりゃと。おもいっきり衝撃。
さらに、その数組あとに観たARCAのDJとジェシー・カンダのAVセット。これを今回一番楽しみにしてたんだが、狂気の意味ではワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとは異種ながらもさらにその上を行ってて、なんというかもう全てがとんでもなく狂ってた。唖然呆然。ARCAは暴力的なビーツを延々繰り出し、ヴィジュアル・コラボレーターのジェシー・カンダが死んだ魚や羊の出産など血生臭い映像をくどいほど流し…。そしてARCAはおかしな踊りをしたりウサギ跳びしたりしながら咆哮。その毒気に初めの内こそ吐き気を催しつつ観てたんだが、くどさから次第に昂揚に至って、最後には味わったことのない種類の感動がきた。 ある場面では建物が崩れ落ちる映像と破壊的な音が合わさり、それはパンク衝動そのものだったりするが、躍動する音には両極性もあって、生命力やエロティシズムが噴き出す場面もある。またCDで聴くような抽象性が全てじゃなく、例えばレニー・クラヴィッツの「アー・ユー・ゴナ・ゴー・マイ・ウェイ」をかけて「踊れ~」と煽ったりもする。曰く言い難いのだが、何しろ変幻自在なのだ。観客の反応のよさもあってかARCAは終盤、シャツを脱いで胸をさらし、Tバックのお尻をこっちに向けて見せたりも。DJセットにも関わらずその過剰にして変態的とも言える見せ方に、僕は『コントラバーシー』期のプリンスをちょっと想起したりもした。
「要するにコミュニケーションの欲求が並外れてるから音楽やっるんだよね、ARCAは。あのくらい過剰にやらないとわかってもらえないからああいう表現になるんだ。それ、若い頃のプリンスと同じ種類の衝動だと思うんだ。」と、帰ってきて夜、酔っ払いながらツイートしたら、ある人がそれに対して「過剰という点では同じかもだけど、Princeのようなポップミュージックとは対極に位置する人だから……(笑)」とツイートされていた。いや確かに僕もこれまではそう思っていた。が、このライブを体感して考えが変わった。恐らく複雑なねじれを繰り返してああいう表現に今は至ったのだろうけど、そもそもARCAにはコミュニケーションに対する人一倍強い希求があって、その強さはやはりプリンスに通じるものがあるように思えたりしたのだ。ジョジョ立ちと言えばわかりやすいだろう歌舞いたようなキメポーズの数々もまたその思いを強くし、盤における表現からは計り知れなかった彼の表現の本質のようなものがそこから見えた気がしたのだった。
まあとにかくステージ上のARCAは思ってたよりずっとパフォーマー的であり、狂気を孕んだ天才といった感じで、いろいろ過剰だった。そしてジェシー・カンダはまるで女性のようで、淡々と機械を操っていたかと思えば最後は手をヒラヒラさせてニコニコしながらARCAに寄り添ったりもした。愛がそこにはあるのだろう。
というわけで、テイラー・マクファーリンにもワンオートリックス・ポイント・ネヴァーにも驚かされたが、ARCAに最も衝撃を受けた今回。目撃できた人の少なさも含め、このTAICOCLUBのARCAはあとあと伝説になるに違いない(フジだったら大絶賛の評が踊ったことだろう)。
ほかはどうだったかというと、邦楽では水曜日のカンパネラのパフォーマンスに驚かされた。前にクアトロで観た時(1年半くらい前だったか)はこう言っちゃなんだがまだどこか素人っぽさが残っているように感じられ、アイディアだけでライブをしているような気がして正直僕はあまりいい印象で受け止められずにいたのだが、この1年くらいで大勢の人に見られることによっての意識の変化があったのか、身体表現と言葉の訴えかけが驚くほど堂々としたものになっていた。雨が酷い時間ではあったが、白い服を着た彼女はどこか巫女のようでもあり、雨も味方につけていた。客席に降りて縦横無尽に走り回り、最後は球体のようなものの中に入って観客の頭上を転がり……。ある意味でカラダをはっている。パフォーマー魂というか、見世物としてどこまでやれるか、どうあるべきか、どう観客とひとつになれるかといったところの気概のようなものをそこから感じて、僕はグッときてしまったのだった(ということで、今度スタジオコーストの単独公演も観に行くことにした)。
あと、初っ端に観たシンリズムは、歌表現に関してはまだちと弱いけれど、楽曲のセンスとクオリティの高さに深く感心。現役高校生というのが信じられない洗練の度合に唸らされた。こういう新しい才能とバッタリ出会えるのがフェスのいいところ…って改めて書くのもなんだけど。一方、もっとも多くの人を集めていたサカナクションは僕は10年ぶりくらいに観たのだが、これはやっぱりピンとこなくて3~4曲で離脱。世間の人気の度合に関係なく自分に合う音と合わない音がハッキリするのもまたフェスのよさ、とか思いながらレッドブルのアンビエントフォレストに動いて名を知らない人の音を聴いてたら、幻想的でヘンに気持ちが落ち着き、ここにはしばらくとどまることとなった。
あとは深夜に音楽堂で観たDan Deaconもハチャメチャで楽しかったけど……やっぱり今年はテイラー・マクファーリン、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、何よりARCA。うん、ARCAの衝撃につきるな、今年は。もう一度観たい!