2018年6月2日~3日
長野県木曽郡木祖村「こだまの森」で、TAICO CLUB’18。
今年が最後の開催となるタイコクラブ。毎年一緒に行ってるヨメが直前で仕事が入って行けなくなり、今回は初めてひとり参加・ひとりキャンプだったのだが、初めてクルマじゃなくて電車で行ったことも含め(新宿からの特急あずさは早めに指定席をとっておくべし、ということを学びました)、いろいろ新鮮だった。天気はといえば、そりゃもうピーカン。夏日。とはいえ夕方になれば涼しくなって、深夜ともなると相当着こまないと寒いんだけど、それでもまあ例年ほど激寒って感じはなかった。つまり今年は抜群に過ごしやすい天候だったってこと。飲んで踊って大満足。数年前に比べるとメジャーの邦楽アクトが増えた分だけ人の数も多かったけど、それでも先頃のグリーンルームフェスのようなストレスはなく、やっぱ好きだな、楽しいなこのフェスは!という思いを強く持ちながら過ごしたのでした。
観た(聴いた)のは以下の通り。
(テント立ててビール飲みながらユラユラと)MOODMAN→(ここからがっつりモードで)Alfa Mist→lglooghost→Nai Palm→スチャダラパー(4曲目の途中まで)→Lone→FKJ→Hiatus Kaiyote→EGO-WRAPPIN’→Marcel Dettmann→Nathan Fake(途中まで聴いてテントに戻り就寝)。3時間ほど寝て起きて、Powderの音を遠くに聴きながら撤収。
サカナクションを筆頭にネバヤンとかPUNPEEとかDAOKOといったメジャーの邦楽アーティストも数組出てて、若者の多くはそのへんを中心に観てたようだけど、そのあたりはまたどっかの邦楽フェスとかでいつでも観れるだろうし、せっかくタイコに来てんだからタイコでしか観れなさそうな(聴けなさそうな)アーティストやDJを観ないでどうする……という思いが僕にはあって、国外アーティストを集中的に観た。国内アクトでしっかり観たのは深夜のEGO-WRAPPIN’だけで、あとはスチャの前半4曲のみ。
Alfa Mist。一昨年のテイラー・マクファーリンもそうだったけど、タイコで夕方に聴くジャズはとてもいい。鍵盤でときにはラップも入れるAlfa Mistと、普段着で愛想笑いひとつしないプレイ態度でありながら途中1曲では森林との相性もよいキレイな歌声を聴かせた女性ベーシスト、それから柔らかな表情でものすごい手捌きをするドラマーのトリオ編成。ヒップホップも消化してのジャズで、グラスパーとかとも共振する美学もあるっぽい感じだけど、UKならではの洗練されたセンスがよく表れてるというか。涼しい顔で変拍子を畳みかけてきて、あとのふたりも涼しい顔でそれに応えるあたり、実にクールでした。
続いてそのまま特設ステージで観たIglooghostは、UKの異才でまだ少年のよう(もしかしてまだ10代?)。低音が超強力なバキバキのドラムンベースなんだけど、なんかこう感情に訴えかけてくるものあり。「いじめられっこだったんだろな、子供の頃」って思える見かけで、その復讐として音楽やってんじゃないかなってくらいに激しく首振りながらDJしてて、映像は可愛らしくてセンスよくて、いろいろ引き込まれた。すごい若者がいるもんだ。発見でした。
それから今年のタイコはネイパームのソロとハイエイタス・カイヨーテの両方が一度に観れるってのもお得感ありで。まずネイパームのソロライブは、ネイパームと3人のコーラス隊からなるシンプル編成で楽器は彼女のギターだけ。つまり声と声と声と声の合わさりによるものなのだが、女性ひとり男性ふたりからなるコーラス隊がネイパームの主歌に応えるその呼吸の合い方がとてつもないレベルだった。しかも場所はこだまの森の野外音楽堂であるからして、なんかもう声と森とがひとつになったみたいな神秘性感じたな。この人たち、夏前になると森の中から出てきて歌ってんじゃないか、みたいな。絶対、森の動物たちや鳥たちと話せるな、みたいな。で、その環境にとても感動したらしいネイパームさん、「なんて美しい場所なの、長野! 今日、思わず川で泳いじゃった。ちょー冷たかったわ」と。そりゃそうでしょう(笑)
因みに特設ステージでのIglooghostが終わって野外音楽堂のネイパームに移動すべく坂道を登ってるとき、ちょうどPUNPEE見終えてサカナクションを観るため降りてくる人たちの数がハンパなくて、波に逆らって進むのがたいへんだった。まさに民族大移動。みんな邦楽好きなんだなー。おかげでネイパームはゆったり観れてよかったです。
で、今回もっとも楽しみにしてたのがLoneなんだけど、そのDJはもう最高の上を行く最高さだった。光こそクルクル回ってたものの映像はなんもなしで、ただひたすら4つ打ちの快楽に身を任せるあり方。映像なくても2時間まったく飽きがこず、何度か昇天。ああ、これだよなぁ、これこそタイコクラブでしか味わえない喜びだよなぁと満足しまくりました。
続く特設ステージでのFKJ。数曲だけ聴いて野外音楽堂のハイエイタス・カイヨーテに移動するつもりでいたのだが、彼の多種楽器演奏の様に釘付けになって結局終盤まで。ギター、ベース、サックス、キーボードをひとりでプレイして、観客の声もその場でサンプリングして、映像も凝ってて、それと音との同期も芸術的で、彼自身のルックスもよくて、観客と繋がりたい欲求も感じられて、音楽を愛し音楽に愛されてる感じも含め(音楽性は異なれど)プリンスに通じるところありだなとチラと思ったりも。いやぁ、よかった。そして彼のこのライブも月や星がキレイなタイコの環境にぴったりだなと思ったけど、それはそれとして今度はビルボードライブみたいなところで観てみたいとも思ったな。ビルボードさん、呼んでください。
FKJのライブがあまりによくて移動するのがだいぶ遅くなり、ハイエイタス・カイヨーテは中盤あたりから観たんだが、先のネイパームのソロステージ同様3人のコーラス隊がまたも大活躍。あれほどの変拍子の連続によくまああんなに幸せそうな表情でカラダ丸ごとノッていけるもんだな、ああいうリズム感って天性のものなのかどっかで訓練されたものなのか……。どっちにしても「凄い」という言葉しか出てこない。そんな3人の活躍も含め、これまで何度か観てるこのバンドのライブのなかで今回が一番よかった。バンドとして一段とスケールアップしたように感じられたし、あとやっぱりこだまの森というあの場所との相性が抜群にいいんだよね。あそこで観ることできてよかった感。
そして今回唯一ちゃんと観た邦楽アクトのEGO-WRAPPIN’。 声帯炎でこの数ヵ月の間にいくつかのライブをキャンセルせざるをえなくなった中納良恵の復帰後初となった先週のグリーンルームは涙が出るくらい感動したもんだが、今回の声の迫力はなんとあれの数倍増し。超完全復活。午前2時頃からの出番ということもあって、客を眠らせぬよう、ゆったりめの曲はやらずに完全ロックモードで攻めまくった。凄まじい熱量。グリーンルームのときにも書いたけど、やっぱパッションが観る人を感動させるんだよね。というわけで、最近以前にも増してEGO-WRAPPIN’が大好きになってる僕なのです。
そのあとMarcel DettmannからのNathan Fakeあたりで、うっすらと夜が明けてきて、ああ、この景色、この感じも、タイコクラブで味わうひとつの喜びだったよなぁと。タイコクラブならではの時間の流れ方って確かにあったのだ。それ、フジのそれよりも心地よくて、気温の変化を肌で感じられて。アレが好きで毎年行ってたとこもあるかもしれんなあとか思ったりも。
ところでタイコクラブは結局何回行っただろうか。本当に楽しい思い出しかないし、このフェスで「ライブが凄い」ことを知ったアーティストもたくさんいる。今年はAlfa Mistとlglooghostを「発見」できたのがよかったし、FKJのライブの素晴らしさもこうして知ることができた。タイコクラブは、発見する喜びをほかのどのフェスよりも実感できるフェスだった。
ああ、これが最後なんだよなぁ、と思うとまたいろいろ思い出してきて、アルカとカンダさんのあれは最早伝説だよなとか、ワンオートリックスポイントネヴァーの音圧は地獄ように凄まじかったなとか、店の電気も全部消させて真っ暗闇のなかでやったオウテカは徹底してたなとか、早朝のトロ・イ・モアのチル感たまらなかったなとか……。あの場所のよさあってフジで観るより感動したライブもけっこうたくさんあったものだった。とりわけ自分にとってなんといっても忘れられないのは、2011年のタイコで明け方に野外音楽堂で観たあら恋(あらかじめ決められた恋人たちへ)。震災のあと少しだけ鬱気味になってた僕は、あら恋の演奏を聴きながら気持ちの現われとして自然に両手を高くあげ、そして大泣きした。それでものすごく、本当にものすごく救われたのだ。だからタイコとあら恋には感謝すらしている。
ありがとう、タイコクラブ。いや、まじで。何年もにわたって、たくさん飲んで、たくさん踊って、たくさん楽しんだ。大好きなフェスだった。来年からタイコクラブ創設者が同じこだまの森でスタートさせるという新しいフェス「FFKT」にも、とても期待してます。創設者がやるくらいだから、もしかしたら今のようなメジャーの邦楽アーティストはなくしてコアな人たちを集めたフェスになるんじゃないかと僕は読んでるんだけど、どうかな。なんにせよ、フジでは観れないオルタナティヴなアーティストを引き続きたくさん呼んでほしいところ。そのあたりのコンセプトも含めた発表もきっと近々あるのでしょう。楽しみ。