子供の頃から忘れん坊だった。
といっても忘れ物が多いという意味じゃなく、記憶するのが苦手ということ。すぐに別の何かに上書きされてしまう。要するに脳のキャパが小さい。
勉強したはずのことを後輩に教えてと言われるたびに「覚えてない」とばかり答えていたら、意地悪だと言われた。
思い出話をされて「何だっけ?」みたいな顔をし、友人を不機嫌にさせたこともある。軽んじられたと感じたらしい。
いや、意地悪とか軽んじるとかじゃなく、本気で思い出せないのに。
人との会話でも、盛り上がってあれよあれよという間に話が展開してゆくと、前半部分の内容が記憶されてないことがしょっちゅう。
私的なことならまだいい。けれど、例えば仕事でマスト事項を一度にいくつも言われると最後だけしか認識できてない、という経験も何度もある。
セミナーで同時多発的な質問に答える人や、複数の仲間同士で軽快に会話する人を見ると、自分の短時間しか記憶できないっていう現象、他の人にはなさそうだと感じる。
自分はごくごく普通の平凡な人間だと思っていたが、普通の人なら平然とできることができない、要するに欠陥品なのでは、と落ち込むことも多かった。
そういった歴史を繰り返しているので、忘れないためにメモを取ること、覚えておくために同じことを何度も繰り返し見直しやり直して体に刷り込むこと、などの習慣がついた(偉いねえと褒められたりするけど、結構必死なだけです)。
友だちとの会話という楽しい次元でも忘れん坊現象は年中起こるのであるが、お芝居やドラマという大好きな趣味でもこれはある。
一度しか観なかったものは、大概忘れてしまう。もう一度観直すと「あれ、こんな話だっけ? この俳優さん、こんな演技してたんだっけ」などと新鮮に観られる(!)。
たとえば最近、かなり前に入手したDVD(宝塚)を再度観て、そのエンディングに猛烈に感動した。
ストーリーはそこそこ覚えていたけれど、そのラストシーンはあまり記憶に残っていなかった。
物哀しい音楽とダンスがテンポアップして畳みかける2分ほどに今更熱狂、それから毎日10回以上リピートするのが日課になり、だから今も頭の中をその曲と映像がグルグル回っている。
入手した数年前もかなりしっかり観たつもりなのに、私の頭からはそのシーン、見事に消え去っていた。たまたま先日観直して発見したが、もし忘れたままでいたら人生大損していたとこだった。いやマジで。
そんな具合なので、生の舞台を観に行ってその空気を感じることにワクワクすれど、DVDを手に入れて何度も復習することも不可欠。でないとお気に入り候補のはずのシーンをポロポロこぼれ落としてしまう私。
生舞台を一度観ただけで丸ごと心に映せる人が、心底うらやましい。
(了)
↓「○○解禁」がお題の新作短編書きました。14分で読めます。
↓「あなたと離れた理由」がお題の短編です。14分で読めます。
↓「泥棒」がお題の短編です。11分で読めます。以前書いたもののシリーズにしてみました。
(マダムの第1話はこちら→ マダムの戯言 )



