昔々、出版社に漫画原作の持ち込みをしたときに言われたことがある。
「この作品の売りは何?」と。
考え込んでしまった。ちゃんと返事ができなかった。書いた内容はもう忘れてしまったけれど、「売り」なんて何も考えてなかった。単純に書きたいこと、思いついたものを書いて持っていったのだと思う。
アホなことに、それから相当な年月が経った今もわからないでいる。一つ一つの作品にしても、自分の書くもの全体的な傾向にしても。
自分の売り……要は得意分野。得意なジャンル。宮部みゆきさんなら人情あふれる時代物、東野圭吾さんなら理系的ミステリー。
自分の場合、苦手分野ならぞろぞろ挙げられるのだけど。
ミステリーが大好きなのに、頭がザル過ぎて穴だらけなものしか書けない。
時代物は一度書いてみたいとは思いつつ、過去あまり読んでも見てもこなかったゆえ、おそらく背景を整えるだけで10年とか。物語を展開するところまでたどり着くのは100年後かも。
恋愛モノは照れが入るのもあるし、そもそもあまり好きじゃなく。
青春物語は好きなのでいろいろ構想してみたりもするが、今の年齢で書くとジェネレーションギャップに気づかないとんちんかんさが多分ある。
異世界ファンタジーはあまり興味が持てず、ホラーは好きだけどスプラッシュが怖いので書ききれなかろう、コメディは「笑い」を起こすのは本当に難しいと一本書いてみて思った。
……となって、結局「売りは何?」と言われた大昔と同じ、相変わらずその時々で書きたいこと、思いついたものを書いている。
そうなってくると、書くたび、ジャンル選定に悩む。どのジャンルなんだろう、この物語は、と。
結局、大体「ヒューマン」分野にエントリー。ヒューマンな物語になっているわけでもないのに、該当枠がないのでそうするしかなくなるのである。
そうなって、自分の得意分野がよくわからないということに立ち戻ってしまう。
というより、ないんじゃないか? あればそればかり書いてそこを突き詰めて、この分野ならあなたね、と認定されるまで書いて書いて書きまくれるんじゃないか。
とこの頃思う。
というのも、最近投稿サイトでファンになった方がいて。その方にしては珍しいジャンルを書いたら思いの外人気で、でもその分野ではAさんやBさんが素晴らしいから自分がそこへ入れる気がしないと呟いていたから。
自分の得意ジャンルをしっかり把握しているんだなあ、そしてAさんBさんも、その分野で認定されているほどそこを突き詰めることができているのだなあ、と思ったわけで。
だからお題が出るたびに、ジャンルが決まらないがためにあっちこっちとっちらかったアイディアがまとまらない私と違って、皆さんは得意分野であれやこれやのドラマを展開できていいなあ、なんて、うらやましく思ってしまうのだ。
何かにめっちゃ詳しいとか好き過ぎる世界とか経験した専門職とか……そういうのがきっと「売り」というものなんだろうけど、ない。
自分が読みたいものを書けばいい、とよく言われるけど、自己分析の結果、読みたい分野を書ける力がない、というところにたどり着く……。
それでもとにかく書いている。どのジャンルが好きというより物語を作ることが好きなのだ。
で、最新作はコメディジャンルに挑戦。うん、やっぱり難しかった。
(了)
↓「○○を呼べ」がお題のコメディです。13分で読めます。
↓「卒業」がお題の短編です。14分で読めます。
↓「猫」がお題の超短編。4分で読めます。
↓「初めての○○」がお題の短編です。14分で読めます。




