これはもう、人によってさまざまで、百人いたら百通りあると思う。
江戸時代のチャンバラものを描きたいとか、誰かを助けるかっこいい英雄を描きたいとか、ファンタジーを描きたいとか、あるいは自分の経験を踏まえた企業ものを描きたいとか。
私の場合、……特になし。
そういうものをブレずに持っている方がうらやましい。
時代ものはこれまでの人生、あまり読んでも観ても来なかったので、苦労するだろう割に穴だらけの内容にしかならないだろうと容易に想像がつく。
誰か実在の人物(有名人でも友達でも親でも)をモデルにした強いキャラを描きたい、とかでもない。
ファンタジーを書くには想像力があまりに乏しいし、経験も何だか中途半端で思い入れの強いものがない。
こういう人間が、物語を創れるのだろうか? 書く人間となるには、これではダメなのではなかろうか?
そんな風に結構悩んだ時期もある。
それでもやめなかったのは、ある作家さんの講演を聴いたから。「私は特に書きたいものはなかった」と語ってらした。
何ですって? とひと際熱心に耳を傾けると、その方も特にこれといったものはなかったが、「こういうのを書いてください」「このテーマでお願いします」と言われると、書けたのだという。
かなり名前も知られた有名な脚本家の方なので、ああそういうプロもいるんだ、それでも書いちゃいけないということはないのね、と肩の力が抜けた覚えがある。
以来、テーマや題材探しも続けているけれど、何か課題をもらいそれについて書く、という方が私には書きやすいと気付いた。
何と言うか、連想ゲーム的に、つるつると思い出すことがあり、ああこれ、私書きたいことだった、みたいな感じになることが多いのだ。
例えば以前、お題があるコンクールに応募した時のこと。
それに沿ったストーリーを考えているうちに、お題に全然関係なく、昔こんなこと考えていた自分がいたな、と思い出した。
主人公が父親と対立し、高校卒業と同時に家を出た。でも彼が就職した時、社会ではどうしようもないことがあると知る。それがいさかいの原因だったが父は言い訳をしなかったのだ。そうして息子は父を見直す……とのストーリーが出来て。
いや、実際の私はそんなドラマチックな感じでもなかったが、学生から卒業した時に、働く父を見直した瞬間があったな、と。
そういう発見が面白くて、思い出した感覚を組み込んだ物語を創るのが楽しい。描きたいことやテーマがないわけじゃなく、持っているけど忘れてる。そんな感じ。
テーマが先にどーんとある人になりたかったのはもちろん。でも自分はきっとアプローチが違うのだ。だから書き続けてもいいんじゃない? そう思うようにしている。
(了)
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