羽生くん、宇野くんの1,2フィニッシュは荘厳だった。宮原さんはメダルは逃したものの、背筋がゾクゾクする素晴らしさ。坂本さんも元気なジャンプが愛らしかった。
というようにオリンピックのフィギュアスケートを見るたび、思い出す漫画がある。「ワン・モア・ジャンプ」赤石路代作(小学館文庫全5巻)。
これはスケート一家に育った少女帝が、フィギュアスケートでリレハンメルオリンピックに出る話である。連載当時、実際のリレハンメルはまだ始まっていなかったので、1994年より前の漫画。この頃はまだ日本人がフィギュアスケートでメダルなど、夢にも思わなかった。
簡単におさらいすると。
帝はジャンプが得意。想像力が豊かなので演技構成を自分で考えるのが好き。本番に強い図太さと機転、そして想い人のトーマの手助けで数々のトラブルを乗り越えていく。
ライバルの緋夏はバレエから転向、アーティスティックな美しさの持ち主。ペアを組む拓馬は滞空力がすごく、片手を上げたジャンプで帝を驚かせる。異母兄のトーマはロシア人ハーフで、怪我で引退はしたが前人未踏の四回転を飛んだ。
この連載時には、この設定は確かに漫画。リアル感はあるけれど、片手ジャンプも四回転もメダル以上にあり得ない。日本人にアーティスティックな優雅さはお国柄無理。という前提で楽しんで読んだ。
それが。
今回の女子金、銀のザギトワ、メドべージェワ。普通に片手上げてジャンプしてるじゃないですか。四回転ジャンプなんて、男子で飛ばない選手はいない。日本選手、みんなめちゃくちゃアーティスティック。
現実が漫画に追いついてきたというか、もう漫画の世界じゃなくなっちゃったと言うか。
ちなみにこの漫画、他にも様々なライバルが登場する。
チェルノブイリ事故で被爆し、天才でありながら死んでゆくターシャ、肌の色で採点が不利になることへの反発が強いリリー、スラム育ちゆえに上昇志向の強いジョディなど。社会的要素もはらんでいて読み応えがある。腹違いの兄トーマへの恋心を主軸に置いていながら、単なる恋愛少女漫画の域ではないので、大人にもお薦め。というか、私などは充分大人以上の年頃に読んでハマッた口である。
フィギュアも残すところエキシビジョンのみ。平昌オリンピックもあともうわずか。そんな名残惜しさと寂しさを晴らしてくれる名作だと思います。
(了)
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