子供の頃から現在に至るまで、不思議で仕方ないことがある。
どうしてその場所に真っ直ぐ着くの?
ある人は、太陽の位置から方向がわかるじゃないかと言う。またある人は、駅を出たら西方面へ○○メートルほどのはずだから、こっちへ歩けばいいと言う。
何じゃ、それ。
ハッキリ言って、自分の感覚ではこの一言しか出てこない。
西と言われても自分が立っている場所からどっちのことなのか皆目見当もつかないし、太陽は地下に入ったら見えないし、見えてもだからどうなんだ、って話。
初めて行く場所はもちろん、二度目三度目のところでも、久し振りじゃないつい昨日訪れたはずの目的地でも、必ず迷う。ホームを歩く時さえ、途中で進行方向なのか逆向きなのかがわからなくなる。○○メートルなんて距離感覚、自分の中には露ほども存在しない。
これを、世間的には方向音痴という。
人に連れていってもらうから行けないんだ、と思った時もあった。その目的地を知っている誰かが一緒にいて、その人についていけばいいという安心感から周りも道も何にも見ていない。もう一度一人で行き直すと、全く見知らぬ土地であり、初訪問と断言できるくらい何も覚えていない。
が、連れてってもらう云々は関係なかった。
実家さえ、移転のタイミングが自分が家を出る寸前で半年しか住んでいなかったとはいえ、しかも最寄り駅が改築したとはいえ、……未だに北口を出るか南口なのか迷うほどなのである……。
方向感覚とは、れっきとした才能だ。これに苦慮しない人は天性を持っているということ。自分にはそれが著しく欠落しているのだ……。
と自覚してからは、ミニ地図を持参するようになった。分かれ道ごとにいちいち止まっては確認する。東京育ちとは思えないほどお上りさんである。
こんな自分が車を運転すると、百メートルごとにいちいち路駐して地図を確認。そんな大変迷惑な行為をさんざんやった。近年のカーナビの普及が、涙が出るほど嬉しかったことは言うまでもない。
が、カーナビによっては案内が非常にわかりにくく、よけい迷うという類もある。地図は地図でもGoogleマップはどうも苦手。位置情報も嫌い。
そんなこんなで、何度も迷い、行きつ戻りつして、えらく時間と労力をかけて、時には冷や汗をかきつつ、何とか目的地に辿り着くこともあれば、あきらめたこともある。
何だか人生と似てないか。未だに方向音痴であっちへ行って迷い、こっちへ行けなくて止まる。
まあ辿り着かなかったらそれまで。迷い道も方向転換も悪くないんじゃないか、と、近年は負け犬の遠吠え的な境地にいる。
(了)