「………しょ………翔…………く……ん………

翔く…ん………ん……だら…………だ………………」


誰かが………

俺を呼んでる?


「え?

何?

だれ?

今なにか言った?」

俺はゆっくり目を開けた。

薄暗い空間にまた

「………翔くん…………」

と、はっきりした声。

「え?

その声は………………」

俺はその懐かしい声に

ある人の姿を想像して振り向いた。

「翔くん。

ここにさ、春がいるよ。」

と、可愛い顔した智が笑ってた。

「…は……る?……さ………智?

なんのこと?」

薄暗かった空間は一瞬のうちに

俺たちが暮らしていたあの家で

智は庭の片隅にちょこんと座って指差した。

「ほら、土筆」

指の指す方には、いくつもの土筆が芽を出していて

寒い冬の終わりを告げていた。

「土筆……か………」

俺は智の隣に行ってしゃがみこんだ。

「そうそう。

春がくるね。

また、桜見に行こうね。」

俺の隣で可愛く笑う智に

「………そ………そうだね。」

って、言うのが精一杯で

なんだか胸が苦しくなった。

「どうしたの?」

と、俺が顔を歪ませたからか

心配そうに覗きこんできたから

なんでもない不利をして

「さ…智、桜好きだもんね。」

って、言った。

「うん。桜………

…………………見たかった。」

「うん。」

「翔くんも桜………

見たい?」

「うん。」

「じゃあ、ちゃんとお医者さんに行ってね。」

と、口を尖らせながら言う智。

なんだか不思議………

「なんで?

なんでお医者さんが出てくるの?」

「翔くん……………

体調悪いでしょ。」

「そんなことないよ。

元気だよ。」

と、返した。

「それにしても………

翔くん年を取ったね。」

と智が言う。

智が目の前で変わらない姿を見せるから

俺も現実を忘れていて

今の一言で

"あー………夢か…………"

って、気づいた。

「お前は………変わないな…………」

20代の智に

「そりゃそうでしょ。

俺は26で時は止まっているからね。」

そういて笑う。

笑う智の顔が少しずつ歪んでいった時


ドクン

「うっ!!」

俺は、突然の心臓の痛みに

幸せな夢から吐き出された。