「ただいま~」
「芽衣、遅いよ~。俺カップ麺2つも食っちゃった」
「うちのカップ麺が大野のせいでどんどん消費されていくんだけど...」
「だって種類豊富なんだもん」
「え、ちょっと待って。コーンたっぷりプレミアム味噌バターラーメン食べてないよね?私袋の上から名前書いといたんだけど...」
「......えっと1時間ほど前に僕の腹の中へ...」
「うっそ!?あの期間限定のやつだよ!?」
「めっちゃプレミアムってた」
「最低!!吐け!今すぐ吐いて!!」
「もー遅いし!俺風呂入ってくる~!」
「ちょっ!逃げるなんてずるい!!」
笑おう。泣くな私。笑え笑え。
家に帰ってくる前に、そう自分に言い聞かせた。
だけど思い出すと泣けてきて、溢れそうになる涙を堪えながらシャワーを浴びてた。お湯なのか涙なのかも分からないけど、この悲しい思いも、潤との思い出も、すべて一緒に流れてしまえばいいのに
って。すべて忘れられればいいのにって思った。
お風呂から上がると部屋は暗くなっていたけど、一人じゃない。大野がソファの上で
寝てる。
大野がいなかったら、逆にへこみ過ぎて動き気力もなかった...かも。
「...寝よ」
もしかしたら明日になれば...全部嘘だよって意地悪な顔して潤が言ってくるかもしれない。
目を閉じれば、潤の顔、声、なにもかもが蘇ってくる。
笑おう。泣くな私。笑え笑え。
知っていたのに。前から知っていたことなのに。
あぁ、失恋ってこんなに辛いんだ。
恋愛経験の少なすぎる私は、こんな辛いことに勝てる強い心なんて持っていない。
「ごめん...」
暗闇の部屋の中、大野がぽそりと呟いた。
「...なによ。ていうか起きてたんだ...」
「俺が勝手にコーンたっぷりプレミアム味噌バターラーメン食っちゃったから...泣いてるんでしょ?」
「...泣いてない」
「彼氏と別れたときくらい、泣きゃいいじゃん」
なんで大野が知ってるのよ。
超能力者かこいつは。
「ジュンクンとの写真、破られて捨ててあったから」
大野がお風呂に入ってる間に私がやったやつ...。ゴミ箱の中まで見てるわけ?
「うっさい...。大きなお世話...」
「どうせ浮気が原因?お前、悔しくねぇの?」
「どうせ恋はいつか終わるんだもん。その『いつか』が今日訪れただけだもん」
「ねぇ」
「...なに」
「隣いってもいい?」
「だめ...」
「芽衣、」
「やだ。こないでよ...」
私が背を向けて寝るベッドの脇に、大野がゆっくりと腰掛けた。
大野がすぐそばにいるのに寝ているというのが嫌で、背を向けたまま起き上がる。
「...こっち向いて」
「なんなの...」
「いいから向けって...」
大野の考えてることがわからない。
強引に体を引っ張られて、気付いたら、潤とは全然違うほっそい体で、でもがっしりとした大野の腕に抱きしめられていた。
笑おう。泣くな私。笑え笑え。
そう決めたはずなのに、もう忘れるって決めたはずなのに...我慢していた涙が一気に溢れ出る。
「一人で我慢なんてしてんじゃねぇよ、ばか芽衣」
「...うっさい...ばか......」
いつもと違う優しい声で名前なんて呼ばないでよ...
頭なんてポンポンしないでよ...
頑張って笑おうとしてるのに「泣け泣け」なんて言わないでよ...
それでも大野に不満を聞いてほしい、大野の前でなら泣いてもいいやって思えるのはどうしてだろう。
大野の腕の中が、温かくて心地いいから?
うん、温かいよ。体が外側からポカポカしてる。その温かさは、悲しさで凍ってしまった私の心をどんどんと溶かしていってくれる。
鼻をすすると私と同じ香り。
「鼻水...つけんなよ?(笑)」
ごめん。もうついた...(笑)
数分前までの重かった気持ちは、大野のおかげでポワンと軽くなった気がした。
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sue.