どうしてクリスマスなんだろう。
「今日は楽しかった。でも、これで会うのは最後にしよう。」
そう思ってたならクリスマス前に言ってくれればよかったじゃん。
わざわざクリスマスに別れ話なんてしなくてもよかったじゃん。
私がクリスマスに会いたいって言ったから、今日のデートに付き合ってくれたわけで。
別れ話を帰り際まで切り出してこなかったのは、きっと潤の優しさなんだね。
潤は最後のデートをしてくれたんだ。
そんな優しい彼を諦め切れないでいる私って、重い女なのかもね。
「お願い...、朝まで一緒にいて...。そうしたら私、潤のこと諦めるから。」
どうせ会うのは今日で最後なんでしょう?
これは、潤に対する最後の私の我が儘。
知ってたよ。
潤が浮気したの。リコさんっていうんだっけ。
そして潤とそのリコさんとの間に、子供ができてしまったこと。
でも私は、優しい潤を嫌いになることなんて出来なかった。
アルバイト先で出会って、
一目惚れして、
潤に似合う女になろうと頑張って、
付き合えて、
いろんなところでデートして、
最高の彼氏だったのに。
どうしてこうなっちゃうんだろう。
大野の言ってたとおり、私って男運ないのかな。
♪~
二人で入ったホテルの部屋に、潤の携帯の音が響く。
ちらりと私の様子を伺って「ちょっとごめん。」と、電話に出た。聞かなくてもわかる。電話の相手はきっとリコさんだ。
「...え?ちょっと仕事が長引いちゃってさ。帰るの遅くなる。ん、安静にしてろよ?」
その低くて落ち着く優しい声で話すのは、私にだけかと思ってた。
違う...。潤が守らないといけないのは、リコさんとお腹の中の赤ちゃん。
「いいよ。帰ろう...。やっぱこんなところいたら駄目だよ。」
「......芽衣...」
「誘ったの私だけどさ、今側にいてあげなきゃならない人を選ぶのが下手すぎるのよ、ばか...」
言葉を言い終える前に、私は潤の腕の中におさまっていた。
「芽衣...、芽衣...本当にごめん...」
強く抱き締める潤のがっしりとした腕も体温も、前と何も変わっていなかった。
だけど、お気に入りだと言っていた柔軟剤のシトラスの香りは、もうしなかった。
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sue.