服は昨日のまま変わってない。寝てたけど触られた記憶もない。
本当に大野は何もしてこなかったみたい。
変わったことといえば、ソファで寝ている大野の頭と足の位置が昨夜と真逆になっていることくらいかな。
「どんだけ寝相悪いのよ...」
あんな性格とは合わないってくらい可愛い顔で眠る彼。
こいつにオトされてきた女の子たちはこのギャップにやられたのか...。ギャップ男子、人気だもんねぇ。
「大野、起きて!私もう会社行っちゃうから!」
「ん~...。そんなんじゃ起きる気にならねぇよ~」
「はぁ?何言ってんの?」
「出来れば『智起きて♡』って言ってほしい。」
「...起きろ大野。」
「やだ。だって俺今日バイトないもん。」
「え~。じゃあ夜は絶対家にいてね?そしたら鍵置いてくから。」
「うん、いる。」
「朝ご飯とお昼ご飯は自分でやってね!」
あれ?私って大野のお母さん?お世話係かなんかだっけ?なんて思いながら会社へ急いだ。
~~~
「ねぇ、ケイコ。突然自分の家に、高校時代の友達が住みついたらどう思う?」
「どうしたのいきなり...」
ケイコは、大きい目を更に大きく開いた。
「友達って...女の子でしょ?」
「お、男...」
「男!?彼氏でもないのに!?」
「うん。」
「え~、あたしだったら泊めない。」
「泊めてくれないなら1000万円払えって言われても?」
「絶対泊めないなぁ。彼氏がいるもん。」
「そっか...。彼氏...」
「なに?誰か泊まってるの?」
「と、泊まってないよ!例えばの話!」
「な~んだ。...で?最近どうなの?松本さんとは。」
「潤?潤はいつも優しいよ。」
「ノロケは結構ですので~」
「聞いてきたのケイコじゃん!(笑)」
私の彼氏、松本潤。
バイト先で出会った二つ年上の彼に、私は惹かれた。
大好きで大好きでどうしようもなくて、でも後輩の私なんかに振り向いてくれるはずないって思ってたから、付き合えるってなったときは泣いて喜んだ。
それからはいつも一緒に過ごして、私の気持ちをよくわかってくれる人。
最近は潤のほうの仕事が忙しくなって会えてないけど、クリスマスには会えるかな...。
~~~
「あ~、疲れた...」
そういえば鍵、持ってなかったんだっけ。もうひとつ鍵作らないとなぁ。
「って、あれ?」
ドアが開かない!?
インターホンを鳴らしても大野が出てくる気配はない。
「大野ー?いないの?」
あいつ...どこも行かないって言ったくせに...。 にしても、冬の時期に外で待つのもだいぶ辛い。
やっぱり車の免許くらい取っておけばよかった...。
そんなとき、
「あれ?芽衣ちゃん?」
「え?あっ!二宮さん!こんばんは~...」
仕事帰りだと思われるイケメン二宮さんの姿が。
「どうしたの?寒いのに外で...」
「ちょっと...あの、大野に家の鍵持ってかれちゃって...」
「まじ?入れないの?大野さん帰ってくるまで俺んちくる?」
「いやいやいや!大丈夫で...ハックショイ!!!!」
「やっぱ寒いでしょ?風邪引いたら困るから...ね?」
ぎゃー!二宮さんの前で女子力のないくしゃみをっ...!
「すみません...。お言葉に甘えて...」
「はい。どうぞ。」
イケメンって、やっぱり性格もいいのね...。
二宮さんちの部屋は自分の部屋と同じ形のはずなのに、置いてあるものとかが違うだけで全然雰囲気が変わってくる。
「この前の...大野さん?だっけ、あの人は芽衣ちゃんの彼氏?」
「まっ、まさか!そんなわけないですよ!!」
「ふーん。」
「...」
「...」
ち、沈黙...。どうしよう。なにか話題...話題...話題...
「...に、二宮さんちってこんな感じなんですね。すごい綺麗。」
「なに?もっと汚いかと思ってた?(笑)」
「いや、そうじゃなくて...一人暮らしなのに部屋が綺麗って素敵じゃないですか。」
「まぁ、人に見られたらヤバイもん片付けてるだけだけどね。」
「ヤバイもん...?」
「うん。例えばA○とか」
「いっ言わなくていいです!!」
焦る私を、二宮さんは声を立てて笑った。
そっか...。男の人の家だもんね。びっくりした。二宮さんもそういうの見るんだ...。
「でも、男の家になんの疑いもなく入ってくるなんて、芽衣ちゃんも気を付けた方がいいよ?」
「え?」
そう言った二宮さんの整った顔が、私の目の前に近付いてきた。
ちちち近いよ!二宮さん!!
「あの...二宮さん...?」
「大野さんってさ、彼氏じゃないんでしょ?」
「は、はい。」
「じゃあさ、俺が芽衣ちゃんの彼氏になっていい?」
え?
今なんて...
え?え?
「えぇぇ!?」
「冗談だよ(笑)驚きすぎ(笑)今日は俺だったけど、誰にでもホイホイついていっちゃ駄目だよ?一応女の子なんだから。」
「い、一応...ですか。」
ていうか今のなに!?さらっと大きな冗談言い過ぎじゃない!?
♪~♪~
そんなとき、携帯が鳴って、電話をかけてきたのは大野だった。
「もしもし!」
「え?なに?なんか怒ってる?」
「大野...今日どこにも出掛けないって言ってたじゃん!」
「芽衣、今どこにいるの?」
「大野こそどこにいるのよ」
「今お前んち」
「わかった。30秒でつく」
それだけ言って、大野の返事も聞かずに通話を終了した。
「大野さん、帰ってきた?」
「はい。二宮さん、ご迷惑おかけしてすみませんでした。」
「全然!困ったときはお互い様ってやつよ。」
「ありがとうございます。お邪魔しました!」
「...芽衣ちゃん、俺本気だよ」
「?」
「じゃあね。」
本気って...?
あ、それより30秒...。
「ただいまー。ちょっと大野ー!!!」
今度は鍵のあいている自分ちの扉を開いた。
自分で鍵を開けずに部屋に入るなんて久しぶりだ。
sue.