自伝 三歩目 | 景子のあれこれ

景子のあれこれ

楽しいこと、辛いこと、悲しいこと。
ここに吐き出して、きれいに昇華させてもいいですか?


最近、昼休みの後半を読書で過ごしていた。


かなり分厚い手書きの自伝。


もうすぐ90才に手が届く、ある女性の自伝だ。


彼女の人生は、通り一遍知っていた。


例えば子供の数や、最終学歴、出生地。


知っているつもりだった。


でも、全く違っていた。


学生時代から心に決めた人がいたのに、実母の強い、恨みに似た感情で引き裂かれた。


母との諍い、母により兄妹仲を引き裂かれ、殺されかけたこともあった。


あげくいつまでも嫁に出さず、無理矢理使用人と結婚させられた。


子供が病に倒れ、母や母に感化されている兄にお金を出してもらえず、満足な治療を受けさせることができず亡くす…という辛い経験もしていた。


長い長い文章。


書き間違いは一つもない。


話が重複することもない。


昔の字体だから、本当は読みにくかったし、読めないところもあった。


でも、これだけの文章を、いや、過去を忘れることなく書き綴る。


鬼気迫るものを感じた。


彼女は自伝を書き終えたあと、すっかり仏のようになってしまっている。


そう、ボケてしまったのだ。


思いを綴ってほっとしたのだろうか。


彼女の愛する息子は、母の目が黒いうちは二度と会わないといっている。


そこまで拗れた関係については、サラリとしか書いてなかった。


彼女は人生の最後にとんでもないことをしていた。


そこまで至った理由はよくわかった。


もちろん、互いの話を聞かなければ、本当のことなんて知り得ないけれど。


彼女の愛する息子さんに、いつかその本を渡せる日が来るのだろうか。


子供に対する愛は、みんな同じ。


十分、苦労に苦労を重ねて子育てした時代だ。


なぜ、自分がここにいるのか。


どうして生まれてきたのか。


考えさせられる本だった。


本当の事なのか?…彼女に問うた。


微笑みしか返ってこない。


節くれだった指が真実を語っているような気がした。