読書5月 彗星夜襲隊/大本営参謀の情報戦記 | 読書日記

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自分用の読書備忘録。
なので、よほどのことが無い限り画像とか一切無いです。
そしてアップはけっこう遅延しがち。

5月に読んだ本は8冊(図書館本7冊・購入1冊)でした。

三連休で時間もあるし、久しぶりにアップ。
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<満足度>★★★ オススメ ★★ 面白い ★ 収穫少なめ 

 

本『彗星夜襲隊 』 渡辺 洋二(光人社NF文庫 2008.3)
【満足度】★★★
【概要・感想】太平洋戦争中、特攻を拒否した美濃部正少佐が指揮する「芙蓉部隊」の奮戦について書かれた本。その芙蓉部隊とは海軍804、812、901の3飛行隊(最終、第131海軍航空隊)の夜戦部隊の総称で、元々はニックネームでしたが、自他共に認める独立部隊です。本書は美濃部少佐本人の話よりも芙蓉部隊についての記述に詳しいです。「芙蓉部隊」所属の隊員の戦歴や太平洋戦争全体の記述が多いため、やや重たい内容かもしれませんが、個人的には『特攻セズ 』よりも本書の方が臨場感があり、感情移入して面白かったです。

【ポイント】

*「精神力一点ばかりの空念仏では、心から勇んで発つことはできません。同じ死ぬなら、

 確算のある手段を講じていただきたい」(p.106 美濃部)

*参謀は長官、司令官を補佐して作戦・用兵を立案するのが任務だ。いわば作戦専門屋の

 参謀が、特攻攻撃しか思いつかず、一飛行隊長に代案を問おうとは!(p.106)

「二〇〇〇機の練習機を特攻に狩り出す前に、赤トンボ(93式中間練習機)まで出して

 成算があるというのなら、ここにいらっしゃる方々が、それに乗って攻撃してみるといい

 でしょう。私が零戦一機で全部、撃ち落としてみせます!」(p.107 美濃部)

*飛行長の肩書きが付くと、空中指揮は行わないが、航空隊の持つ全飛行隊の飛行科と

 整備科を地上指揮できる(p.110)

*芙蓉部隊は、機動部隊に対する攻撃はもちろんのこと、索敵つまり偵察任務も請け負って

 いるうえ、飛行場攻撃も兼務している。索敵は毎日必要だし、飛行場は固定目標として

 つねに存在するため、出撃は連日(p.165)

「彗星」の夜間飛行が零戦よりも絶対的に有利なのは、後席に航法専門の偵察員が乗って

 いることだ。(p.183)

*芙蓉部隊では、進出したての人員に少なくとも数日間は作戦出動させず、また初動は

 比較的容易な任務を与えた。(p.199)

 

本『特攻セズ 美濃部正の生涯』 境 克彦(方丈社 2017.8 )
【満足度】★★★
【概要・感想】太平洋戦争中、「一億総玉砕」といった精神論が幅を利かせていた日本で、正攻法で戦う信念を曲げずに、特攻を拒否した美濃部正少佐29歳。一介の前線指揮官が指揮した総勢1,000人の芙蓉部隊の奮闘について書かれた本ですが、『彗星夜襲隊 』との違いとして、こちらは美濃部少佐個人の人生についての記述がメインです。弱冠29歳の青年が精神主義真っ盛りの戦時下で、ここまで信念を曲げずに合理的な判断や主張を貫き通した人がいたことに感動しかありません。ちなみに著者は時事通信社の元編集局長というゴリゴリのジャーナリストで、詳細まで取材されています。
【ポイント】

*美濃部は =中略= 「特攻の乱用」に反対したのであって、特攻を頭から否定していた

 訳ではない(p.18)

 ⇒負けてよい戦法は論外。不可能を可能とすべき代案なき限り、特攻もまた止むを得ず。

*大正世代は、満州事変から数えて15年にも及んだ戦争という国策に、全員が翻弄された

 世代(p.36)

*米軍が太平洋戦争の開戦と同時に抜擢人事に踏み切ったのと違い、日本の陸海軍は平時の

 硬直的人事制度を基本的に改めることができないまま終戦を迎えた。=中略= 試験成績の

 優等生が戦争全体を指導し、あるいは艦隊の司令長官となって作戦を指揮していたのである。

 (p.75)

*亀田(寛見少佐)の口癖がある。「一概にそうでないんであってして」「そういうことも

 考えられるが、こういう考えもあるんであってして」 =中略= 何か問題を解くに

 当たっては「一つの考え方だけにとらわれてはいけない」「それ以外に解決の方法はないと

 思いこんではいけない」 =中略= さらに「自分の考えが正しいんだ」と軽々に断定する

 ことを戒め、決めつけるような言い方ではなく、「私はそう思う」と言うべきだと注意を

 与えた。(p.82)

*「水上機は駄目だから零戦に変えてくれ」という要求が通るなど、前代未聞のことだった

 (p.217)

*江村(日雄少佐)の634空も終戦まで通常攻撃を反復した数少ない部隊(p.267)

*戦力で圧倒的に優秀な米軍に対抗するためには、敵の直衛戦闘機の警戒が緩む夜間に作戦を

 行う以外にない。(p.288)

*整備不良で10%台に落ちていた彗星の稼働率は、芙蓉部隊では最大で80%前後という驚異的

 な水準に達した(p.294)

*岩川基地は最前線にありながら米軍の目を欺き通し、ついに終戦まで1発の爆弾も落とされ

 なかった。(p.321)

*海軍は最後の最後まで、この航空戦力という新たな戦力の本質を理解できず、飛行機の

 優位性が明らかになってからも、一発勝負である「艦隊決戦」の枠の中で活用策を追求する

 レベルから抜け出せなかった。(p.326)

 

クリップ『大本営参謀の情報戦記』 堀 栄三  (文春文庫 1996.5)

【満足度】★★★
【概要・感想】名著「失敗の本質」と同じくらい面白く、陸軍大本営情報部に勤務した堀少佐の貴重な体験記。第三者的視点を大切する意味で「堀は、、、」という独特の言い回しで書かれています。原爆投下を情報的に見抜けなかったことは情報部の完敗と語っていますが、とかく情報を軽視しまくった大戦下でこんな軍人もいたのかと思うとともに、せっかく情報的大切さを後世に語ってくれているのに現代社会でも普通に起きているケースの数々にこれらの教訓はほとんど生かされていないと、とてもモヤモヤしました。。。

【ポイント】
*一番大事な米本土に情報網の穴のあいたことが、=中略= 敗戦の大きな要因であった。

 (p.97)

 ⇒日系人の強制収容

*陸軍と海軍が双方とも、何の連絡もなく勝手に戦果を発表していたため、陸軍は海軍の

 発表を鵜呑みにする以外にないという日露戦争以来変わっていない二本建ての日本最高

 統帥部の組織的欠陥があった(p.101)

*大本営作戦課や上級司令部が、米軍の能力や戦法及び地形に対する情報のないまま、机上で

 二流三流軍に対すると同様の期待を込めた作戦をたてた(p.110)

*米軍は常に戦果確認機を出して写真撮影するのが例になっているが、日本の海軍でも陸軍

 でもその方法は採られなかった。(p.189)

*方面軍参謀となって仕事を始めてみると =中略= 七千余の島を守っている方面軍が、

 自力で知り得る情報は守備隊の占領している地域と、そこから望遠鏡で目視できる範囲の

 海上の動きだけで、方面軍の欲しい情報の大部分は、大本営、南方総軍、航空軍、海軍から

 貰わなければやっていけないのである。しかもその情報の授受は、お互いが好意的に連絡

 する協力型であって、組織制度的なものではない。(p.194)

*太平洋に展開した日本軍の中で、暗号に従事していた人員は、恐らく五、六万名、ざっと

 四、五個師団分に相当したのではなかろうか。

 ⇒手仕事の日本軍に対し、米軍は機会暗号のため一人で出来る。

*情報の任に当たる者は、「職人の勘」が働くだけの平素から広範な知識を、軍事だけでなく、

 思想、政治、宗教、哲学、経済、科学など各方面にわたって、自分の頭のコンピューターに

 入力しておかなければいけなかった。(p.260)

数学的思考が、既述の鉄量計算のように日本軍には欠けていた。それが日本軍の思考を常に

 精神主義の方に走らせた原因でもあった。われわれはもっと考えなければならないことを、

 精神主義の壁の陰に隠してしまった(p.269)

*情報の判断には、百パーセントのデーターが集まることは不可能です。=中略= 空白の

 霧の部分を、専門的な勘と、責任の感とで乗り切る以外にありません(p.297)

*陸軍と海軍の連絡が円滑さを欠いただけでなく、陸軍の中でも作戦部、情報部、技術本部、

 航空本部などがまったくバラバラの活動をしていた。(p.331)

 

本『居場所。』大崎 洋(サンマーク出版 2023.3)

【満足度】★★
【概要・感想】ダウンタウンを見出した元・吉本興業の会長の著書。お名前は昔から知ってましたが、こんなユルイ人だったのか、と。そして、会社人生の半分は窓際だったというから驚きですが、それで終わらなかったのは木村政雄氏やダウンタウン、さんまとの出会いがあったからのようです。子ども時代の頃の話から自分の子どものエピソードなど大崎氏の考え方のルーツを知れます。闇営業問題の最中「大崎さんが辞めるなら俺も辞める」と松ちゃんは静かに言ってましたが、その絆もよくわかりました。

【ポイント】

*どこだろうと、土俵には上がらないこと。どこにもしがみつかないこと。(p.58)

*みんな、「どうしたいか」は違っています。幸せなんて、人によって違う。目指すゴールが

 違うのに、競争したところで意味なんかありません。(p.103)

解決しなくとも、仕方ないと受け入れ、「しゃーない」という言葉でだましだましやって

 いたら、そのうちいい風も吹いてくる。(p.187)

*「できると認めて頼んでくれたから、精一杯こたえる」という繰り返しで、できることが

 増えていく。やってみて喜ばれると、そのことが好きになっていく。(p.222)

 

メモ『歴史をなぜ学ぶのか』本郷 和人 (SB新書 2022.1)
【満足度】★★
【概要・感想】本書は日本史(といっても中世史メイン)における6つのターニングポイントを例に挙げ、歴史の文脈を考え、歴史的思考力を身につける大事さを説きます。歴史に興味を持つ上で重要なのは個別の事実を単に暗記するのではなく、前後に流れがあり、その物語性=史料と史料の間を考えることです。(ある意味、時代小説が面白いのはそこ。) どうしてこんなことが起きたのか、その前提はなにか、その結果どういう影響が起きたのかなど考えていくと、今は当たり前だと思っていることが、長い時間をかけて時には先人たちの犠牲を伴い、作られてきたことがわかります。過去と現代の対話を通して学ぶことが大事だと思い知らされる一冊です。

【ポイント】

*奈良に置かれた都に対する奥の院は伊勢(p.56)

*壬申の乱をきっかけにこの不破関が東国と畿内の分かれ目であり、朝廷の防衛ラインとして

 重要な場所であることが認識されていきます。(p.64)

 ⇒大海人皇子(天武天皇)は不破関などの要所を押さえることで勝利した

*朝廷の力がそこまで及ばない関東では、国衙や在地領主たちが土地を争って奪い合いを

 おこなっている(p.80)

 ⇒公地公民が建前で、私有地である荘園はおめこぼし

*北条氏がどんなに権力をもったとしても、将軍になることだけは躊躇して、執権という

 ポジションのまま幕府を動かしていたのは、やはり北条氏は武士たちの本当の意味での

 リーダー=棟梁になるような家柄ではなかった(p.91)

*律令国家-権門体制-幕藩体制という体制の変化によって日本史を語ることができる(p.143)

 

メモ『宝治合戦』細川 重男(朝日新聞出版新書 2022.8)
【満足度】★★
【概要・感想】北条義時亡き後の北条vs三浦の宝治合戦を小説半分、歴史概説半分で紹介するという冒険的な試み。小説では、時頼と三浦泰村の戦乱回避に向けての行動や、安達景盛に率いられた安達氏と三浦陣営の強硬派三浦光村の対立などの描写が描かれており、そこはわかりやすかったです。元々、著者は小説をリリースしたかったようですが、登場人物のガラが悪さが目立ちすぎる気はしました。(なぜに台詞が広島弁?)

【ポイント】

*平安・鎌倉時代の武士団は、後の戦国大名と比べれば、そもそも兵力は多くなかったので

 あり、二、三百騎程度で、“大武士団”であった。(p.18)

*合戦直後の地位からして、政村が宝治合戦における北条陣営の最高幹部(p.303)

*時頼の治世で最も大きな成果は、=中略= 引付方の設置(p.319)

 ⇒法と合議に基づく執権政治の到達点

 

本『心理的安全性のつくりかた』石井 遼介(日本能率協会マネジメントセンター 2020.9) 

【満足度】★★
【概要・感想】心理的安全性×行動分析学の本。悪気なく心理的安全性を阻害している行動やその空気についての言及はよくある話で、そういった無意識の意識化をする知見として行動分析学を組み込んでいる本書は相当実務的です。(両方の知見を初めて聞く人は目からウロコなのでは?)ただ、読後、あまりフレーズがノウハウ記憶に残っていないということはそこまで良書ではないのかも。 

【ポイント】

*罰・不安が「ない」状態を目指すのではなく①話しやすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎

 =中略= が「ある」状態を目指す(p.50)

*人々の「行動」は「きっかけ」と「みかえり」によって制御されている(p.158)

 ⇒「きっかけ」によって「行動」が起き、「みかえり」が「行動」に影響を与える

*「行動の直後にみかえりがなくてはならない」(p.162)

*「なぜ」の代わりに、「なに」「どこ」を使うとうまくいくことが多い(p.208)

 ex.どこで、なにが起きたのか教えて/なにが大切だと思って、これを最初にしたの?

*エンゲージメントの高いチームをマネジメントするリーダーは、ありがとうに理由をつける

 (p.270)

 ⇒私がいかに助かったかを伝える

 

本『気づかいの壁』川原 礼子(ダイヤモンド社 2023.2)

【満足度】★
【概要・感想】元・リクルートCS推進室の教育リーダーが教える「気が利く人」になる方法を伝授という内容ですが、名前を呼ぶ、人が見ていなくてもやる、箇条書き、会議前の根回し等々、個人的には目新しい知見はありませんでした。(相手の領域を尊重するというアドラー心理学を絡めて、「気づかい」を考察している点はわかりやすい。)気がつくかは素質で、気が利くかは技術。新卒や、気が利かない方と言われる人は読んでみる価値ありかなと。