「トントン、トントン」
もうさすがに、寝たふりも無理だな、こりゃ。
勇気をだして、右むいてみると・・・
ヘヴィメタがどアップ!!(驚)
最初に言っておくが、金なら無いぞ。
他、あたってくれ・・・
しかし、ここで彼から意外な一言が。
ヘヴィメタ「君、なに聴いてるの?」
あんたの気に入るものは、なにもないっすよ。きっと。
ヘヴィメタ「俺のテープ貸してあげるから、君の貸してよ」
!!!!!!!!!!???????????
ぼ・僕のぉ!!!
僕のは・・・
「KAN」なんですけど!
知ってますか!?
「愛は勝つ」の
「KAN」ですよ!(泣)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
15歳の僕「どうぞ、KANですけど」
ヘヴィメタ「ふ~ん。ありがと」
僕もヘヴィメタのテープを受け取った。
おそるおそる聴いてみると・・・
「♪ズンチャ、バンバン、♪ドンドン、ギュイ~ン」
み・耳が・・・・(困惑)
おおおおおおぉぉぉぉぉおぉっぉおぉおおお。(泣)
この時間をどうすごしたらいいのかが、不安でたまらなかった。
でも、でも
意外な展開になる。
僕の真横で、ヘヴィメタが、おとなしく「KAN」を聴いているのだ!
僕はひそかに音量を低くして、彼の動きをさりげなくみていた・・・
そうすると、彼は、手元のリモコンを頻繁に操作していた。
巻き戻していた・・・
そして、しばらく聴いたあとに、
また、巻き戻して聴いていた・・・
1時間くらいだろうか?
テープが反転しても、しばらくは聴いて、また巻き戻して聴いて・・・
いつしか、足でリズムをとっている。
僕は今でもその風景は忘れていない。
たぶん、きっと一生忘れないだろう。
しばらくして、テープをとりだした彼は、僕にしゃべりかけ始めた。
「この曲と、この曲はすごくいいね!」
笑顔だった。彼は。
涙がでるくらいうれしかった。
不安だったから余計だったかもしれないけど。
彼が、僕を認めてくれた感じがした・・・
人のことをみかけで判断した自分がどうしようもなく恥ずかしかった
その後、いろいろなことを彼と話した。
彼の夢のこと。
東京には、夢を追いかけて行くのだということ。
そして、僕が初めての東京だということ。
あっというまに朝の5時の東京駅だった。
その出来事から、5年後・・・
浪人してしまった僕は、自分を変えたくて、もう一度東京にいくことになる。
受験勉強がうまくいかず、死ぬほど憧れた東京には、何かを見つけれるものがあると信じて、親の反対をふりきって、ひとりでつっこんでいった。
あっというまに5キロやせた。
でも、結果として、そのときの一人暮らしの寂しさや、自分を見つめなおしたことで、青春時代の貴重な一年を東京でがんばることになる。
甘えを捨てて、一人で暮らした東京の一年間は、今の僕の根幹をなしているといっても過言ではない。
だから、東京にセミナーなどでいくと、いつもあの時代のことがフラッシュバックしてくる。
僕はまだまだ子供だが、年齢的には大人になった。
今は、夜行列車ではなく新幹線になった。
音楽もお互いに交換できるようなカセットテープではなく、「ipod」になってしまった。
「ipod」は確かに便利だ。
これさえあれば、日常の音楽ライフは存分に満喫できる。
人は、アナログからデジタルに物質を変化させている。
でも、あのとき、ヘヴィメタのお兄さんが僕にテープを貸してくれなければ、僕の今の気づきは絶対になかったとおもう。
人をみなりで判断するような、自分に無いものは否定する、つまらない人間になっていたのかもしれない。
人間は、便利さと引き換えに、毎日少しずつ、大切なものを失って生きているのかもしれない。
直接話をすることから、電話になり、今ではメールだ。
確かにメールは便利だ。
でも、便利さと引き換えに失っているなにかがあるとすれば、僕たちはそのことに気づいているのだろうか?
親父のビートルズのレコードを傷つけないように、針を慎重にセットしたあのレコードを聴くときの緊張感。
あのあたたかい音・・・
明らかに、レコードなどに比べれば音質が劣化しているMP3やipodを便利だからという理由だけで、受け入れている僕たちは、何を失って生きているのだろうか?
ヘヴィメタのあの兄ちゃんは、僕の好きな音楽を受け入れてくれた。
一生、関係することがないと思っていた人が認めてくれた。
のちに僕は、大学時代、バンドを組むことになる。
ビートルズを主体としたいわゆるコピーバンド。
名古屋の栄で屋外ライブをやったこともある。
そのときにも近くにはヘヴィメタのバンドの兄ちゃんたちが演奏していた。
でも、僕はいつも彼らの演奏を聴いて、いつも彼らに話かけていた。
完璧な初対面だが、そんなこと僕には関係なかった。
だって、僕と同じ、音楽を愛している人たちだから。
そして、僕が最初に出会ったヘヴィメタの兄ちゃんはとってもやさしい大人だったから。
僕にはなんの違和感もない。
最初に出会う人の責任は重大だ。
その人次第で、価値観が変わってしまう人がいる。
僕は現在、歯科医師をやっている。
子供たちにとって、歯医者さんは怖いに決まっている。
たぶん似顔絵を描かせたら、僕の頭には角が生えているのかもしれない(笑)
でも、僕に出会った、すまいる歯科に来たこどもたちが、
「歯医者さんは、怖くないよ。やさしい人たちだよ」
って、感じてもらえたら、僕はきっと15歳のときに出会ったヘヴィメタの彼に恩返しができるのかもしれない。
最初に出会う人というのは、大切だ。
子供たちは見ている。
大人の行動をしっかりと見ている。
ヘヴィメタの彼は、とっくに40歳を過ぎているのだろう・・・
あのときの、リモコンの操作、足でリズムをとる風景・・・
15歳の初めての東京の一人旅は、実はあとのことはあまり覚えていない。
今でも、「KAN」を聴くとあのときの思い出がよみがえる。
ヘビメタのお兄さん・・・
今でも、夢を追ってがんばっていますか?
僕はがんばっています!
あなたとお酒が飲めるくらいまで、大人になりましたよ!
いつの日か会えるといいですね。
このブログをあなたが見ている奇跡を信じて・・・