天国から来た大投手 十、レッツ・プレー・ボール 150 | 六月の虫のブログ

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美盤はまずネイサンの近況を訊いた。森次郎はネイサンが元気に野球をしていると話し、「ネイサンはジュディからプレゼントされたバットがお気に入りで、練習の打席に立つ前にバットにキスをするんだ。そして、ジュディがサインしたところがボールに当たらないようにバットを構えるんだよ。その仕草がなんとも言えないくらい可愛いんだ。明日の朝の練習にネイサンも来るから見学に来ない」と誘った。次の話題は、森次郎がスタンフォードに決めたことだ。美盤は「お父さん、少しがっかりしていたかな」。「ここだけの話、もしジュディがいなかったらイリノイに決めていたと思う」、森次郎はテーブルの上にあるジュディの手に、自分の手を置いた。美盤は「ごちそうさま」と言って話題を変えた。「もうすぐ弘子ちゃんがこっちに来るけど、あなた達どうするの」と言った。ジュディは森次郎の方を見て、森次郎の答えを待った。「今までどおり、友達として接するよ。早いうちに弘子にジュディを紹介したいけど。姉貴には他に良い考えがあるわけ」と尋ねた。美盤がジュディの方を見ると「私はモリの私への愛を信じているから大丈夫。弘子が必要以上に傷つかないといいけど」と弘子を気遣った。

翌朝、三人はモーテルの近くのデニーズで朝食を食べ、ロバートソン高校のグランドに向かった。森次郎は入念にウォームアップをして、ミスターZやチームメイトを待った。デニスやルースターが美盤とジュディに話し掛けている。ネイサンもその輪に加わっている。ミスターZが姿を現すと、ネイサンが美盤とジュディを紹介した。ミスターZは「ネイサン、彼女が君のバットに書いてある天使なんだ」とネイサンの肩を突っついた。ネイサンは「はい、ミスターZ。でもジュディはモリの恋人なんです」とため息をついた。ミスターZは「モリには美人の姉さんと恋人がいるんだ」と言ってネイサンの頭を揺すった。美盤は「ジュディ、あなたは森次郎だけじゃなく、ネイサンの心も盗んだのね」とジュディのわき腹に肘鉄をくらわした。

森次郎のバッティング練習が始まると、ジュディも美盤も視線は森次郎に釘付けになった。森次郎はほとんどの球をホームランにするのだ。ネイサンは誇らしげに、森次郎を見つめている。ミスターZもうなずきながら森次郎のバッティングを見守っている。ジュディと美盤は、森次郎のバッティングを見るのは初めてで、ただただ驚いていた。ネイサンは「お姉ちゃん達、モリは間違いなくホームラン王になるよ。打たれているボールが可哀想なくらい強く打つんだもの」と解説し、球拾いに走った。




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