天国から来た大投手 九、インターミッション 143 | 六月の虫のブログ

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翌朝、森次郎は、浩輔にネイサンの検査結果について説明した。浩輔も、覚悟していたとはいえ、涙を流した。森次郎は「浩輔さん、今日の試合もベストを尽くさないと。悲しんでなんていられないよ」と微笑んだ。浩輔は「自分の死は突然やって来たから、死に対する覚悟も何もなかった。でも、ネイサンは違う。彼はもう長いこと死と向き合い、今を一生懸命生きている。たいした奴だよ、ネイサンは」と感心した。ジュディにも電話で伝えたが、彼女も浩輔と同様、泣きながら、ネイサンの気丈さに感心していた。

裕香が、日本から翌週の木曜日に、ネイサンと森次郎の取材に来ることになった。浩輔も楽しみにしているようだ。ロバートソン高校バスケットボールチームは、十勝五敗、公式戦は四勝一敗と上り調子だ。森次郎はバスケットに慣れ、浩輔のおかげで試合にも長い時間出場し、活躍を続けていた。ただ、チームで一番の選手というわけではない。裕香達は、金曜日のバスケットボールゲームの映像も撮っていくらしい。そのことをチームメイト達に教えると、彼らは口々に「日本のテレビに出るのなら、絶対に勝たないと」と言った。

裕香達「ニュース二二」の取材陣は、木曜日の午後、ロバートソン高校を訪れた。取材陣は、ネイサンが通うカーメルにあるロバートソン小学校を下見に行き、ネイサンにはあいさつしてきたらしい。彼らは校長とネイサンの母親のメグにあいさつして、森次郎の授業が終わるのをロビーで待った。森次郎が、ロビーに姿を見せると、ディレクターが「吉野君、久し振り。アメフトでも大活躍で大したものなのに、あの少年との話は感動ものだよ。そこの佐々木なんか、本番中に泣いちゃうんだもの」と握手しながら言った。森次郎は、裕香や取材スタッフ全員にあいさつをすると「これからバスケットの練習がありますので、私はこれで失礼します」と言った。すると、裕香が「吉野君、練習は何時に終わるの」と尋ねた。森次郎が「六時くらいです」と言うと、裕香は「夕食一緒にどう。六時半に、迎えに来るわ」と誘った。ディレクターも「吉野君、もしよかったら、行こうよ」と言ってくれた。




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