十六歳のアメリカ ハイスクールの一日 一三、ランチタイム 31 | 六月の虫のブログ

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一三、ランチタイム (Lunchbreak) 

 スチュワート家にいた最初の三ケ月は自家製のサンドウィチと果物をランチとして学校に持っていっていたが、その後はカフェテリアで売っているハンバーガーなどをランチに食べるようになった。それは、スチュワート家の後に世話になるワドリー家とカーシャウ家では、ランチを外で食べるのはボクだけだったからだ。

 日本の多くの学校のように決まった教室もないので、ランチを教室で食べない。マクナマラ高校には、広い円形のカフェテリアがあった。ランチタイムも二つのシフトに分かれていた。カフェテリアのメニューには、ハンバーガー、ホットドッグをはじめ、サラダ、スパゲティ、バーベキュー・リブなど多くの種類があった。値段も非常に安く、ハンバーガーとフレンチ・フライとコーラで当時1ドルしなかったと思う。学校にあった自動販売機で、コーラは十五セントで売っていた。

 みんな、座るテーブルはいつも同じで、友達同士が集まる。チャックと同じシフトの頃は、テーブルにはメル・ヘス (Mel Hess) やブライアン・バーケルター    (Brian Burkhalter) がいた。メルはチャックの親友で、医者志望の頭のいい奴だ。顔は幼いが、彼には大人の落ち着きがあった。また、彼には九年生に同じ顔の妹、ミッシェルがいた。メルに青いアイシャドウと口紅を付けるとミッシェルになった。ブライアンはビートルズのファンで、バンドでベース・ギターを弾いていた。ボクもビートルズのファンで、バンドでベース・ギターを弾いていたことがあり、彼とは音楽の話しをよくした。

 ボクの授業のスケジュール変更に伴い彼らと違うランチのシフトになると、テーブルのメンバーは大きく変わった。チャックをはじめとする前のテーブルのメンバーは全員真面目なストレートだったが、新しいメンバーはビールを飲み、煙草を吸うパーティー野郎だった。前のテーブルのメンバーが好きなミュージシャンが、ポール・マッカートニー、エルトン・ジョンだったのに対し、ニュー・メンバーは、イエス、ピンク・フロイド、ジェネシスのプログレッシヴ・ロックやレナード・スキナード、モリーハチェットのサザン・ロックを聴いていた。

 ランチを食べ終えると、彼らはユーカというトランプのゲームをして昼休みの残りの時間を楽しんだ。ユーカとは、四人でやるゲームで向かい合う二人がパートナーになり他の二人と争う。ゲームのコンセプトはコントラクト・ブリッジと同じで、お互いのパートナーの持ち札を探りながら、パートナーと協力して戦うゲームだ。ボクにとってユーカのルールを理解するのは不可能に思えるほど、複雑に見えた。彼らも当初のボクの英語力では、ルールを説明しても無駄だと考えたのか、ボクに教えようとすらしなかったし、ボク自身無駄だと思い、聞きもしなかった。

 ユーカより先にコントラクト・ブリッジを学ぶチャンスがやってきた。十月のコロンブス・デー・ウィークエンドにリックが大学から戻って来た。リックがコントラクト・ブリッジをやろうとチャックとマムを誘ったらしい。ダッドは外出中で四番目の面子が足らない。リックはボクに教えればすむことだとボクにブリッジのルールの説明を始めた。説明しボクがある程度理解し、ゲームを始めるまで三十分以上かかったと思う。意外にルールは単純で、ゲームを始めて三十分くらいで把握できた。ただ、戦略を立てたりパートナーの意思を読み取ることはこの時点では困難だった。非常に奥が深く、時間が経つのを忘れさせるゲームだ。スチュワート家にいる間、ブリッジをしたのはこれが最後だった。ボクがランチタイムのユーカに参加できるようになったのは、これから間もなくだった。


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カフェテリアでランチを食べる十年生のテーブル。左は後にベースボール・チームでチームメイトになるケリー。彼はスポーツ万能でバスケットボールでもヴァーシティ(十一、十二年生のチーム)に入っていた。