十六歳のアメリカ Vol.127 | 六月の虫のブログ

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ベースボール


三〇、練習試合 (つづき)


 我々は、この後のピザを賭けながら、ボウリングで勝負していた。いつものことながら、リックが劣勢にたっていた。私は自分の順番がきたので、ボールを持ってファスト・ボール(速球)を投げた。ボウリングでもまだファスト・ボールしか投げられなかった。ボウリングでは私はいつもど真ん中を狙って、ボールを投げ込んだ。真ん中を狙って左右どちらかにぶれると、ストライクになる。それで結構ストライクが取れる。

 そのときも、ボールが少し右にずれてストライクになった。私がガッツ・ポーズをして振り向くと、三組の男女が我々の後ろに立っていた。デイヴたちも私の視線を見て、後ろを振り向いた。その中で一番背の高い男が、私に向かって「ハイ」と挨拶した。デイヴたちは、今度は私のほうを見た。私はその男に「ハイ、ジョン。元気?」と言葉を返した。「ハイ」と言われて彼の顔を見た瞬間、私は彼がブラッドリー高校のピッチャー、ジョン・ドローベックだとすぐに分った。

 ドローベックは、彼と一緒にいる友達を紹介してくれた。私もデイヴたちを彼らに紹介し、少しの間座って話をした。ドローベックは、例の練習試合の様子をみんなに話し、私を「素晴らしいベースボール・プレーヤーだ」と言って持ち上げた。私は彼のボールを打てたのはまぐれだったと言ったが、あれは完全に彼の負けだと言ってくれた。

 彼は、あの一球があの試合で初めて満足に思ったところに行ったボールだったと言った。あの後の盗塁も、訳がわからない間の出来事だったらしい。しかし、彼はあの盗塁の後は落ち着いて投げられたと言った。その言葉を聞いたとき、私は自分の走塁が完全に失敗だったということを思い知った。あの「ボーク・スチール」を成功させて、もう一点追加していれば、ドローベックは完全にノックアウトされていたに違いないと思った。ミスターZは、そこまで読んでいたに違いない。ドローベックは、「次は公式戦で勝負しよう」と言って、その場を去った。


 つづく・・・



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ベースボールのゲーム後は、両チームの選手たちは一人一人握手をする。「グッド・ゲーム」と言いながら、互いを称えるのだ。


 この握手の後、ドローベックと私は少し話をした。彼は「俺のこと、ジョンと呼んでくれ」と言う。私が「大リーガーになるの?」と訊くと、笑いながら「大学に行くよ」と言っていたのを覚えている。


 スポーツっていいですよね。実力が分りやすいから、すぐに友達になれる。上手な人には当然、友達も多い。だって、人間、能力の高い人とお友達になりたいですから・・・。



注意: 『十六歳のアメリカ』は、私の体験を基に書いていますが、フィクションです。