かの吉村昭氏の名著。吉村氏の著作は3冊目になります。
1冊目は三陸大津波。3・11の時に改めて注目されて初めて読んみました。
徹底的な聞き込みと郷土資料の調査により、明治以来3度も大津波に襲われた三陸地方の悲劇を伝えています。
2冊目は熊嵐。
3冊目がこの漂流。
1700年代江戸時代、土佐の漁師、長平が時化に会い、仲間とともに遭難。
今の小笠原列島、鳥島に流れつき12年の歳月を過ごす話です。
時化にあわなければ一介の漁民としての人生を全うしたはずのに、絶望に打ち勝ち水も出ない無人島で生き抜く術を見出し、流れ着いてくる漂流民とともに力を合わせ自力で日本に生還します。
もちろんこの作品でも吉村氏の取材力が威力を発揮します。
生前の長平に会うことは当然できませんので伝承の聞き取りや風土記が元ネタなのでしょうが、仲間との会話や長平の心の内に触れているとあたかも直接長平に聞き取り調査を行ったかのような錯覚を起こしてしまいます。希望を捨てず、仲間を見捨てず、規則正しい生活を守り、神仏に祈り続けるさまからは、江戸時代の庶民の平均像が垣間見えるとともに何とも慎ましく謙虚に生きていたのだなぁと感じました。
帰還してからは一切のセリフがなくなるのも読者に想像力を膨らまさせようとする仕掛けなのでしょう。
素晴らしい本でした。
