日本では10月7日からロードショーとなりますね。
いま、さかんにテレビでCMやってます。
僕は生物学を専門に学んでいたので
記事のタイトルで「ぶった切る」と書いてますが、
実際この手のSFは大好きです。(笑)
ただ、
「進化」という言葉の意味を、
色々とまぎらわしい感じで勘違いして理解している人が、
多いなと思ったので 解説します。
■この猿は「進化」したのか?
この映画の主役の「一匹の猿」は、
アルツハイマーの治療の研究の副産物として生まれた天才猿。
…というストーリーだと思います。
あらすじ↓
猿の惑星:創世記(ジェネシス) - goo 映画
映画の予告編で「進化は彼らを選んだ」と言ってますが、
「はたしてこれは進化と呼ぶのか?」
という問題です。
■結論:
猿の惑星の場合
①ふつうの猿がいた。
②いきなり知能の高い猿が生まれた。
↑ここまでは「進化」ではなく「変異」と呼びます。
③知能の高い猿が生存競争に勝ち、世の中のスタンダードになった。
↑ここでやっと「進化」と呼べます。
「???
進化と変異の違いって何?」
これを理解するために、
キリンさんの進化の例で話します。
■キリンさんは、どうやって首が長くなったのか?
いまだに子供の話を聞くと、
「キリンさんは、だんだん首が長くなった」
と思っている子が 意外に多いです。
(その方がロマンのある話なんですが…)
生物の「進化」のしくみについて、
いま現在 生物学の教科書に載っているメジャーな考え方(ダーウィンの進化論ベース)的にいうと、
それは違います。
キリンはだんだんと首が長くなったのではなく、
たまたま首が長く生まれた突然変異のキリンの一族だけが生き残ることが出来た
…というのがダーウィン的な進化論です。
(非常に現実的で、ロマンの無い話ですが)
わかりやすくストーリーにします。
■キリンさんの進化ストーリー
①ある地域で 環境の変動が起こり、
背の高い木ばかりが生えるようになってしまいました。
②首の短いキリンさんは、葉っぱに届かないので、餌が食べられません。
③たまたま、生まれつき首が長く生まれたキリンさん達が生き残りやすくなりました。
④長い年月が経ち…
その地域では、首が長く生まれたキリンさんの一族が生き残って繁栄し、
首の短いキリンさんは滅んでしまいました。
そして首の長い遺伝子が、後のキリンに受け継がれるようになりました。
こうしてキリンは首の長い生物種に進化します。
(自然選択説)
■進化と変異の違い
上のキリンさんの場合、
①首の短いふつうのキリンがいた。
②中には、首の長い「変わり者」のキリンもいた。
↑「変異」 (または突然変異)
③環境の変動があって、首の長いキリンの方が生き残りやすくなった
④首の長いキリンだけが生き残り、世の中のスタンダードになった
↑「進化」
■猿の惑星の場合
①ふつうの猿がいた。
②新薬で 知能の高い猿が生まれた。
↑ここまでは「変異」と呼びます
③知能の高い猿が生存競争に勝ち、世の中のスタンダードになった。
↑ここでやっと「進化」と呼びます
■ポケモンの「進化」という言葉は完全な間違いである
ポケモンは、ある生物が生きている間に、
いきなり変化します。
生物学的にいうと、
この変化は、まったく進化とは呼べない代物です。
イモムシがサナギになるような変化と同じで、
「変態」とか「形態変化」呼びます。
さすがに「ポケモンが変態する」とかいうと格好悪いので
あえて「進化」と呼ぶ事にしたのかもしれないですが。
もしかして
多くの子供達が「進化」の意味を勘違いしている原因として、
この「ポケモン」で使われている
紛らわしい「進化」という言葉の使い方が
一つあるかもしれないです。
(キリンさんがある日突然、首が長くなったとか…)
■最後に
結局、ぶった切ったのは猿の惑星ではなくて
ポケモンをぶった切ってしまったんですが、
色んな所で 学問的な言葉は勘違いされて使われています。
(言葉の解釈は常に変化していくので良いと思うんですが)
進化という分野は、すごく奥が深くて面白いです。
SF映画を見るときにも、深く考えをめぐらせる思考の材料になります。
