写真はすべてを物語る〜『プロレス熱写時代』おすすめポイント10コ〜 | ジャスト日本のプロレス考察日誌

ジャスト日本のプロレス考察日誌

プロレスやエンタメ関係の記事を執筆しているライターのブログ


恒例企画「プロレス本を読んで感じたおすすめポイント10コ」シリーズ。今回が62回目です。このシリーズはライターの池田園子さんが以前、「旅とプロレス 小倉でしてきた活動10コ」という記事を書かれていまして、池田さんがこの記事の書き方の参考にしたのがはあちゅうさんの「旅で私がした10のことシリーズ」という記事。つまり、このシリーズはサンプリングのサンプリング。私がおすすめプロレス本を読んで感じたおすすめポイント10コをご紹介したいと思います。


さて今回、皆さんにご紹介するプロレス本はこちらです。






ジャイアント馬場、アントニオ猪木、長州力、藤波辰爾、天龍源一郎、闘魂三銃士、プロレス四天王、ユニバーサル、みちのくプロレス、ハヤブサ、……その熱い闘いをリングサイドで撮影してきたプロレスカメラマン・大川昇が、秘蔵写真ととっておきのエピソードでつづる日本プロレス黄金期。
プロレスカメラマンの楽しさを教えてもらったジャパニーズ・ルチャ、特別な縁を感じたメキシコでの出会い、引退試合で見せた素顔、レジェンドたちの知られざる逸話、そして未来のレジェンドたち……。ジャイアント馬場、アントニオ猪木、長州力、藤波辰爾、天龍源一郎、闘魂三銃士、プロレス四天王、ユニバーサル、みちのくプロレス、ハヤブサ、……その熱い闘いをリングサイドで撮影してきたプロレスカメラマン・大川昇が、秘蔵写真ととっておきのエピソードでつづる日本プロレス黄金期。 プロレスカメラマンの楽しさを教えてもらったジャパニーズ・ルチャ、特別な縁を感じたメキシコでの出会い、引退試合で見せた素顔、レジェンドたちの知られざる逸話、そして未来のレジェンドたち……。
「ブッチャー・フィエスタ~血祭り2010~」など数々の大会をともに手がけた盟友・NOSAWA論外との対談、さらに伝説の「天龍殴打事件」の真相が語られる鈴木みのるとの対談の二編も収録!
「あとがき」は『週刊ゴング』の元編集長のGK金沢が執筆!
本書を読めば、プロレスに夢中になったあの時代が甦る!「ブッチャー・フィエスタ~血祭り2010~」

など数々の大会を一緒に手がけた盟友・NOSAWA論外との対談、さらに伝説の「天龍殴打事件」の真相が語られる鈴木みのるとの対談の二編も収録! 「あとがき」は『週刊ゴング』の元編集長のGK金沢が執筆! 本書を読めば、プロレスに夢中になったあの時代が甦る!

著者
大川昇(おおかわ・のぼる)
1967年、東京都出身。東京写真専門学校を中退し、『週刊ファイト』へ入社。その後、『週刊ゴング』写真部で8年間、カメラマンとして活動。1997年10月よりフリーとなり、国内のプロレスだけでなく、年に3、4度はメキシコへ行き、ルチャ・リブレを20年間撮り続けてきた。現在、東京・水道橋にてプロレスマスクの専門店「DEPOMART」を経営。著書に『レジェンドプロレスカメラマンが撮った80~90年代外国人レスラーの素顔』(彩図社)がある。



今回は2023年に彩図社さんから発売されました大川昇さんの『プロレス熱写時代〜プロレスカメラマンが撮った日本プロレス黄金期〜』を紹介させていただきます。

大川さんは以前、『レジェンド』という本を出されていて、素晴らしい本でした。


この本で圧巻だったのが「伝説のプロレスカメラマン」大川さんによるプロレス史を彩った数々の写真と、記者顔負けの文章力でした。

大川さん待望の第2作は、日本人選手を中心に取り上げています。そこには大川さんならではの秘蔵エピソードが満載。これは「おすすめプロレス本」として紹介するしかありません。

またこの本の編集者は前回の『レジェンド』と同じくGさん。私もいつもお世話になっているあのGさんと大川さんのタッグなので、クオリティーは保証済み。あとはこの本がどこまでの高みにいくのかです。


今回は『プロレス熱写時代』を各章ごとにこの本の魅力をプレゼンしていきたいと思います!


よろしくお願い致します!



★1.はじめに

まえがきは、手短に書かれていますが、きちんとこの本がどのような内容なのかを簡潔に説明されていて、しかも前作の内容も紹介しているので、何気に両作品も宣伝しているところは正直、「うまい!」と思いました。

あと大川さんの爽やかさと情熱を感じるまえがきでした。


★2.第一章 我が青春のジャパニーズ・ルチ

ユニバーサルやみちのくプロレス、大阪プロレスといった団体によって確立されていったジャパニーズ・ルチャ。

大川さんが考えるユニバーサルの功績として、テクニコ(ベビーフェース)とルード(ヒール)を同時招聘して、メキシコからの抗争をそのまま日本に輸入してきたこと、日本のマスクコレクション文化を本物思考へと導いたことを挙げています。言われてみれば確かにそのとおり!!

この第一章ではやっぱりザ・グレート・サスケ会長ですね。ここ15年以上は、バラモン兄弟絡みの宇宙大戦争の影響もあり、エキセントリックな部分がどうしてもクローズアップされますが、メジャーを凌駕した空中殺法によって日本、いや世界のプロレス界を変えたプロレスラーだと思います。

そしてサスケ会長のラ・ケブラーダを最高のポジションで撮影するために試行錯誤と研究を重ねる大川さんのプロ魂が綴られています。私は『アメトーーーク!!』でカメラマンを務めている辻稔さんのプロ魂とダブりました。辻さんも演者さんが最高のパフォーマンスが映えるように、常に試行錯誤と研究を重ねていて、大川さんと辻󠄀さんのスタンスが酷似しているように感じました。

そして、ふたりともプロレス、お笑いがとにかく大好きだということです。ちなみに辻󠄀さんはめちゃめちゃプロレス好きです(笑)




★3.第二章 メキシコに渡ったジャパニーズレスラー

この章はメキシコで活躍した日本人レスラーのエピソードが満載です。

やはりハヤブサさんの回がよかったですし、感動しましたね。大川さんが手掛けた最初で最後のビッグイベントとなった2011年10月7日後楽園ホールで行われた『仮面貴族フィエスタ2011』でちょうど10年前の2001年に不慮のアクシデントで頸椎損傷の大怪我を負ったハヤブサさんが仲間たちに支えられてリングインするドラマも綴られています。

あのハヤブサさんのリングインは…感極まりましたね…。プロレスの神様、いたのかもしれません。

★4.【特別対談その1】NOSAWA論外×大川昇

前回の本でもありました大川さんの対談コーナーは今回も健在。NOSAWA論外さんは公私に渡り大川さんと繋がっているいわば盟友といっていいかもしれません。それは論外さんが対談の中で「大川さんとは気付いたら一緒に何かをしているって感じでしたね」と語るほど。

あと大川さんが語る論外さんの凄さはかなり唸りました。

「引退前の天龍さんが誰よりも強いパンチを叩き込んでいたのはNOSAWA論外だった。大仁田さんがサンダーファイヤーパワーボムを誰よりも高い角度から落としたり、机で頭をブッ叩いていたのもNOSAWA論外だった。これって、ベテランからホンモノだと認められた証だよね」

ここがプロレスラーという特殊な世界で生きる人たちだからこその感覚なのかもしれません。

誰よりも強く殴られたり蹴られること、誰よりも強く投げられたり叩きつけられること…。それは攻め手が受け手を「コイツなら受け止められる」と認めているからこそ行っているわけで、受け手となったプロレスラーにとっては最高の栄誉なのだと。

これは学びの多い対談です!


★5.第三章 格闘写真館


この章はまずは大川さんのプロレスラーの生き様が詰まった写真の数々を堪能してください。もう見惚れてしまいます。

そして『週刊ゴング』表紙物語と題して、大川さんが表紙に採用された写真について撮影秘話を記しています。

個人的には全日本1992年6月5日・日本武道館大会で行われたスタン・ハンセンVS川田利明の三冠戦に敗れた川田さんが、試合後に控室にいるハンセンに握手を求めにいくシーンが表紙になったゴングがめちゃめちゃ好きなんですよ。よくあれを撮りましたよね。

「プロレスは人間ドラマである」

このことを当時12歳の私はこの表紙から学びました。


★6.第四章 去る男たちの素顔



こちらは引退したレジェンドレスラーたちのオフショットとエピソードが同時に味わえるチャプター。個人的にはやっぱり天龍さん。大川さんは天龍プロジェクトのオフィシャルカメラマンとして関わり、引退試合の日は全エリア出入り可能のプレスパスをもらっていたので、会場入りから一挙手一投足をカメラに収めることができたそうです。

30歳でゴングを発刊していた日本スポーツ出版社を退社してフリーになった大川さんに天龍さんが「オマエ、絶対負けるなよ!」と声をかけたというエピソードがいいんですよね。さりげなく優しくて温かい天龍らしいなと。


★7.第五章 レジェンドたちの肖像
 
350ページに及ぶこの本において後半に持ってきたのはジャイアント馬場さん、アントニオ猪木さんといったプロレスの神々の回。

そこでも大川さん独自のエピソードが登場します。馬場さんが言った「ゴマを擦られて嫌な人はいない」はかなりのパンチラインとして印象に残りましたし、猪木さんのサイン色紙のエピソードも猪木さんらしくて。やっぱりこの2人は偉人ですね!

あと前田日明さん。大川さんと前田さんってあまり接点がないように見えたのですが、こちらも前田さんらしいエピソードがありました。


大川さんによる選手たちのエピソードからは「やっぱり◯◯選手は凄い!」「実は◯◯選手は優しい!」といった印象をリアリティー経由で伝わり、それは「プロレスラーは凄い!」「プロレスラーは素晴らしい!」と思わせる効果があります。これは文章における大川さんの強みではないでしょうか。



★8.第六章 未来のレジェンドたち

この章は現在進行形で活躍しているプロレスラーたちの回。

これはダントツで棚橋弘至選手&中邑真輔選手の回が素晴らしい!短編としても名文。この回に2人のレスラー人生が凝縮しているかの印象を受けました。




★9.【特別対談その2】鈴木みのる×大川昇

大川さんの対談コーナー。二人目は鈴木みのる選手。あの一部で伝説となっている天龍殴打事件について、鈴木選手と大川さんが語っています!

この対談はめちゃくちゃ面白いです!鈴木選手が「ルチャ・リブレのジャベとカール・ゴッチの関節技と仕組みが同じということに気付いたんよ」という話はね、これは唸っちゃいました(笑)

あと大川さんから鈴木選手に対して「天龍源一郎がやることがないだろうってことを実現させて、しかもそのすべてに説得力がある」と評したのは、新発見でした。これも言われてみればそのとおりです!

鈴木選手からは「死ぬまで一選手としてプロレスを続ける」という宣言もあり、やっぱり鈴木選手は面白いなと感じた対談でした。



★10.あとがき 元『週刊ゴング』編集長 金沢克彦

この本のあとがきは大川さんではありません。大川さんの戦友であるプロレスライター・金沢克彦さんが担当しています。

このあとがきが、ものすごくて…。「金沢克彦、ここにあり!」と見事に印象付けています。

どのような内容なのかはこの本を読んでご確認していただきたいのですが、個人的な感想は金沢さんが過去に出された著書『子殺し』『元・新日本プロレス』を執筆されていた頃のあの金沢さんの熱筆だったんです。魂が注入されていました。大川さんの爽快感ある文章の世界観が、最後の最後に金沢さんの情熱ジャーナリズムが持っていったとさえ感じました。

凄いものを読みました。7ページで主役をかっさらい強烈なインパクトを残した金沢さんは凄い。そして恐らくこうなるだろうと予測しながらも金沢さんにあとがきを託した大川さんと編集者のGさんもまた凄いなと。プロの仕事を見ました!




この本は数多くの日本人プロレスラーたちのエピソードが満載です。またその爽やかな文章は読み心地はよくて、入魂の写真は圧巻です。鈴木みのる選手、NOSAWA論外さんとの対談も必見なので、もっとプロレスが好きになる一冊として自信を持っておすすめします!

金沢さんがあとがきで「写真は嘘をつかない」と綴っていますが、大川さんの写真からは「写真はすべてを物語る」という境地を感じました。またプロの妙技による熱写とは対象的に文章は爽やかで、二面性があるのも著者として大川さんの魅力ではないでしょうか。