BDレビュー61『ジュラシック・パークⅢ』●高画質・高音質が作品の印象を変える
ブルーレイ視聴記 61
ジュラシック・パークⅢ
ジェネオン・ユニバーサル 2011年10月26日発売
01年米/JURASSIC PARK Ⅲ/日本公開日:2001年8月4日
■監督:ジョー・ジョンストン
■原作:マイケル・クライトン
■出演:サム・ニール
ウィリアム・H・メイシー
ティア・レオーニ
ローラ・ダーン
BD仕様
●92分+特典144分
●ビスタサイズ
●メニュー画面:動画
●音声
英語 7.1ch dts-HDマスター・オーディオ
日本語 5.1ch dts
●字幕
日本語/英語
●VC-1/2層ディスク
●20チャプター
●つづき再生/不可
●作品レビュー
スケールダウンは否めないが見せ場に徹したテンポの良い良作
さすがに『ロスト・ワールド』での世間の酷評に疲れちゃったのか
スピルバーグは監督を他の人に任せ、製作総指揮のみに専念。
正確には『A.I.』で忙しかったので3作目はジョー・ジョンストンに任せた。
シリーズを論理的に継続できるストーリーが出来たら
3作目を製作することを決めていたスピルバーグは
ジョンストンのストーリーのアプローチにGOサインを出す。
クライトンの原作がないため、初のオリジナル・ストーリーとなる。
(というか2作目も原作とは似て非なるような別物だったが)
舞台は前作と同じサイトBのあるイスラ・ソルナで、
1作目のアラン・グラント博士が再登場。
グラントは今回はインディ・ジョーンズ風で奮闘する(笑)。
恋人だったエリーは別の男性と結婚してて“友人関係”になってたのが
ちょっとショックだった(笑)。2人は夫婦として登場してほしかった。
パラセイリング中にサイトBに不時着した息子を救出するべく
その両親に騙されて島に連れてこられたグラント。
無数の恐竜たちと再び熾烈な“鬼ごっこ”を繰り広げることになる。
本作の前年にはディズニーがそこそこにリアルな
CG恐竜で世界中を魅了した『ダイナソー』を公開し、
恐竜ものはそろそろ飽きられつつある中で公開された本作。
世間の評価も2作目と同様、それほど高いわけでもなく
ラジー賞ではやはりワースト・リメイク・続編賞にノミネートされている。
劇場で観た時はあまり面白いという印象はなかったが、BDで久々に観直したら
1作目と同じスタッフでありながらあの出来だった『ロスト・ワールド』に比べ、
スタッフ入れ替えで挑んだ本作はスケール縮小は否めないものの
緩急の効いたアクションに徹していてなかなかの好編に
仕上がっていると思った。
まずオープニングのタイトルが出色。
アンブリンのロゴが恐竜の振動で水紋のように揺れ、
ツメで引っかかれて「Ⅲ」の文字が出てくるところがいい。
開始20分でサイトBに到着し、早々に“メインディッシュ”の
スピノサウルスが襲撃。CG技術の進歩もあって、
T-レックスVSスピノサウルスのアップショットのガチバトルは迫力。
また『ロケッティア』や『遠い空の向こうに』など飛翔シーンの
演出に定評のあるジョンストン監督だけに、プテラノドンの
アクションは特に力を注ぎこんでいるように思える。
特に深い霧の中からプテラノドンがヌーっと出現する場面が秀逸。
で、最後はお約束のラプトルとの攻防戦で締める。
(ま、一方的に襲ってきただけで攻防はしてないんだが)
シリーズ最短の92分なのでテンポが良い。ドラマ性は薄くなったものの、
アトラクション的面白さでいえばシリーズ随一と言っていい。
とはいえ、演出面や設定などでのアラも目立つ。
まず、恐竜ファンから疑問視されたのがT-レックスを倒したスピノサウルス。
スピノサウルスは細長いアゴの形から魚食性という説が高く、
ましてや劇中で描かれたように、T-レックスのぶっとい首を
口でへし折るというようなことはまずできないらしい。
また、プテラノドンは魚や小動物を持ち上げるぐらいの力しかなく、
子供をさらうことはほぼ不可能であるといわれている。
彼らもまた魚食性のため、人間を襲うのはおかしいのだ。
で、本作ではついに仲間同士で“会話”しちゃうラプトル。
集団で狩りをする説には異論も多く、映画のように仲間同士の
意思の疎通はなかったと指摘する学者は多い。
(そもそも実際のラプトルは映画ほどでかくないらしい)
本作では人間がDNA操作で蘇らせた“恐竜”ではなく
“恐竜もどき”であると描かれているので本来の生態と異なるのは当然。
“ファンタジー”として割り切って観ないと楽しめない。
演出面で気になったのはオープニングのパラセイリングの合成。
もうちょっとうまくできなかったのか。合成バレバレでちょっと萎えた。
囲いがなく恐竜がウヨウヨするサイトBをグラントたちは武器も持たずに
歩いているのに、緊迫感がさほど伝わってこないのもどうしたものか。
拡声器を使って息子を捜す母親の無神経な行動もイラつかせる(笑)。
あと、スピノサウルスに食われた男が持っていた携帯電話の着信音が
あんな肉厚な恐竜の腹の中からしっかり聴こえるのが笑える。
ウンチまみれになろうが水浸しになろうが、
それでも使える携帯の性能のすごさにも驚かされたけど。
そして最大の問題はラプトルのラストの描写。
大切な卵を盗んだ憎き“敵”である人間たちを殺さないで
立ち去ってしまうあの場面には正直、拍子抜けした。
あそこはやはり人間 VS ラプトルの見せ場を持ってくるべきだった。
冷酷なハンターが慈悲深いってどーなのよ?(笑)。
さらに軍隊がレスキューに現れる尻すぼみなエンディングで
なければもっと評価は違ってたのだろうけど・・・。
音楽はジョン・ウィリアムスが『A.I.』に携わっていたため、
彼の推薦で『マトリックス』シリーズのドン・デイヴィスが抜擢された。
本シリーズと『マトリックス』シリーズとの曲調や音楽スタイルは
まさに“水と油”で、なぜデイヴィスが推薦されたのかは分からないけど、
ウィリアムスのテーマ曲もしっかりと継承しているのがいい。
ただ、そのテーマ曲ばかりを使っている感も否めず、
3作目のオリジナル・テーマ曲がないので音楽の印象は薄い。
ちなみにスピルバーグは『ジュラⅣ』の製作もすると発言。
現在、『ポセイドン』『アイ・アム・レジェンド』の脚本や
『マイティ・ソー』のストーリーを手掛けたマーク・プロトセヴィッチに
脚本を依頼し、2、3年以内の公開を目指しているんだそうな。
ひょっとしたらシリーズ初の3Dで製作されるかもしれないが、
それよりも1作目のクオリティを取り戻した4作目にしてほしい。
●本編レビュー
3作の中では最良のクオリティ!
シリーズで一番キレのいい画質で魅せてくれる。
10年前の作品とはいえ、鮮度も鮮鋭感も
最新作並みのクオリティを保っている。
2作目が予想外の凡画質でガッカリさせられただけに
このハイクオリティは嬉しい。
もちろんカメラ機材やフィルムの質の向上もあるのだろうけど。
鮮度が向上しているので、T-レックスやラプトルの
アニマトロニクス感が前2作以上に出ちゃってるのはご愛嬌。
CH1では海や島の描写力が実に高く、
CH6のT-レックスの皮膚感の鮮明さもシリーズ最高。
T-レックス VS スピノのシーンのサラウンドの出来もS級で
2頭の咆哮のミックスした音場が凄い。
スピノのドスの効いた咆哮はT-レックスですら可愛く聴こえるほど。
CH13とCH16のスピノの襲撃シーンも音がダイナミックに暴れる。
CH10で恐竜の群れが疾走する場面のサラウンド力は
2作目の恐竜狩りシーンを凌駕していると言っていい。
画質、音質が良いと、これまでは凡作だと思ってた
本作が意外と面白く観ることができるから不思議。
●特典レビュー
■『ジュラシック・パーク』3部作の軌跡:再び冒険へ(25分)
撮影5週間後に脚本をイチから書き直したというジョンストン監督。
当初のストーリーは複数の家族を描いたものだった。
T-レックスとスピノの対決シーンでは
T-レックスがCGでスピノがアニマトロニクスという
複雑な撮影方法で行われた。
最後にスピルバーグは、共に2008年に60代の若さで死去した
スタン・ウィンストンとマイケル・クライトンへの思いを語る。
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●BD評点
作品:7.5
画質:8.5
音質:9.0
サラウンド:9.0
特典:8.5
総合:8.5
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