ジャンバーズ日記 -12ページ目

授業!

昨日の授業は、すごく面白かった。

撮影の授業。

ヒッチコックの「サイコ」を、ガス・ヴァン・サントが、リメイクしてるんだけど、

全部同じカット割で、完全コピーしてる。

それにならって、成瀬巳喜男の「乱れる」のワンシーンを完全コピーしてみるって内容。

加山雄三が、高峰秀子に思いを伝えるシーン。

ワンシーンが17カットで出来てるだけど、17カット、全部カメラのセットアップを変えてるらしい。

そんで、その17カットを、みんなで一人ワンカットずつ演出して撮っていく。

クラスの中で、ちゃんと演出を経験してるのは自分くらいなので、「ここらでみんなと自分の違いを見せとくか」なんて思ってたんだけど、

自分の番になったら、アップアップしてしまった。

俺が担当したシーン、加山雄三が、高峰秀子の前を行ったりきたりするんだけど、まあ、あんまりリアルな動き方ではない。だから、動きの意図というか、演出の意図がつかみきれなくて、役者さんに説明できなくて、ちょっと泣きそうになってしまった。

でも、面白い授業だった。

「乱れる」は、一度もちゃんと観た事なかったので、今日TSUTAYAで借りてきたよ。

マイ・バック・ページその2

「マイ・バック・ページ」、いろんな人が絶賛してる。

そんで、いろいろ気になって、原作本を買ってみた。

それと、今月号の「ユリイカ」が「マイ・バック・ページ」の特集で、山下監督と脚本家の向井康介の対談などが載ってるんで、それもついでに買って、読んでみた。

その二つの本を読んでみて、いろいろなことがわかってきた。

なので、あらためて感想を書きたいと思った。

つまり、いろいろ腹がたってきて、誰かにこの腹立ちを伝えたいのよ。


原作本を読んで、わかったことは、映画は、かなり原作に忠実に作られているようだが、

実は、大事なところが原作と違ってる。

まずちがっているのは、沢田(川本三郎)のキャラクター。

映画だけ観ると、妻夫木君演じる「沢田」は、ナイーブで、真直ぐな男。

若さゆえ、松ケン演じる「梅山」が偽物であることを見抜けなかったが、ジャーナリストとしての正義を最後までつらぬいた男。

だけど、実際の川本三郎は、違ってる。警察に真実を話さなかったのは、「ジャーナリストのモラル」を盾にしてるけど、本当は自分の身を守るため。

最終的には、警察に白状してるんだけど、それも結局自分の身を守るため。


原作は、川本三郎の視点で描かれてるから、当然「梅山」にあたる男(原作ではKとなってる)の描写はほとんどない。

それを、山下&向井は、梅山がもう一人の主役であるかのように描いた。

それは、「梅山という人物に興味を持ったから」らしく、

「本物になれなかった男」の物語だから、らしい。

だけど、「本物になれなかった男」を描くのがテーマなら、沢田(川本)の偽物であるところもちゃんと描くべきなんじゃないのか?

原作者に遠慮したのか?

「本物になれなかった男」ってとこだけど、

確かに山下&向井は、今までダメ人間を描いて、面白い作品を作ってきたけど、

松ケン(梅山)は、決して愛すべきダメ人間ではない。人殺しなんだから。

例えば、オウムの麻原のようなタイプの人間なんじゃないのかな。

そんな奴のだめなところを描いても、まったく共感できない。


原作で一番大事なポイントは、川本が腕章を処分したことを警察に話すかどうか迷うところ。

それが、ドラマで一番大事な「葛藤」なのに、そこを映画では描いていない。

映画の沢田は、自分が正しいと思うことを貫いた男のように描かれてる。

これは、やっぱり偽善的だ。


映画にしても、原作にしても、一番腹立たしいのは、沢田(川本)が、殺害された自衛官のことをまったく考えていないように見えるところ。

特に、原作。

川本は、Kが、自衛官を殺害したことを聞いて、

「やっぱりKは本物だったんだ」というトンチンカンな感想を抱いている。

普通の人間だったら、自分がKを止めなかったために自衛官が死んだことにショックを受けるんじゃないだろうか。だけど、川本は、むしろ喜んでいるように思える。

つまり、川本は、普通の人とは感覚が乖離してしまってる。まともな人間じゃない。


いろいろ腹立つことがいっぱいあって、昨日の夜は、「マイ・バック・ページ」のことを考えて、なかなか寝れなかった。

まあ、映画として、出来が悪いわけではないんだろうけど、いろいろ腹立たしい。インチキくさいにおいがする映画だ。


マイ・バック・ページ

ENBUゼミでは、こないだ「天使のたまご」の撮影をされた中澤先生の授業があって、

すごく面白かった。

小津の映画など、具体的な映画の映像を見ながら、どういうカットになってるか解説があって、わかりやすくて面白い。

そんで、授業のはじめに、生徒全員に、「最近映画館で観た映画は何?」っていう質問をされてた。

俺は、こないだみた「マイ・バック・ページ」。

それはいいんだけど、半分以上の今年になってから映画館で映画を一本も見てない様子。

映画監督になるために高い授業料はらってるのに、映画を観てないなんて、なんだかね。


話変わって、「マイ・バック・ページ」。

山下敦弘監督、向井康介脚本。

なかなか、よかったんじゃないかな。

脚本が、エンターテインメントの基本に忠実って感じ。

ウェルメイドっていっていいんじゃないかな。

内容からして、もう少しとんがったものを期待してたけど、それはなかった。

難癖をつけるとしたら、松山ケンイチの役。

モデルになってるのが、どういう人だか知らないんだけど、

結局、単なる革命家気取りのインチキ野郎として描かれてる。

にも関わらず、中盤は松山ケンイチの方が主役なんじゃないかと思えるくらい、しっかり描かれてる。

つまり、これって、本当は、「主人公がインチキな男に騙された。でもそのことによって少し成長した」っていう話なんだと思う。

それを、ツマブキ、マツケン二大スターの共演を売りにしようとしたことで無理矢理マツケンの役が主役のようになっちゃったってことなんじゃないのかな。

映画を売るための事情で、映画が歪んでしまったんじゃないのかって気がする。