青葉は何故、私に言わなかったのだろう。
(言えなかった?)
そんなわけ、ない。それとも私が聞き流してしまっただけだろうか。
若葉が「珍しいよね」と呟く。私の視線に気付き「でしょ?」と同意を求めて来る。
「兄貴がわざわざ連絡してから来るのも、数真(スウマ)くんが開店前に来るのも。珍しい」
若葉が本当に聞きたいのは、数真のことか。
「ちょっと話があっただけだ」
手を振って「たいしたことじゃない」と示す。
「青葉の方も、たいしたことじゃないだろう。ここんとこ、変に忙しいせいだろう」
若葉は「忙しいケド」と、それでも首を傾げる。だが私がそれ以上、言わないので諦めたようだ。
付き合いが長い分、私の性格も解っている。兄である青葉の性格も。
青葉も私も、本当の訳は言わないと察している。