『別々の人間で別々の人生』
言われなくても『ちゃんと』理解している。
混同なんてしていない。
(今さら、言わないで)
わたしは紫藤の、すでに見えなくなった背中を見つめていた。
「佐倉(サクラ)先輩、」
水藍の声で振り返る。
北棟で桐島と話していた少女が手を振っている。
桐島より頭ひとつぶん小さい。屈託のない、明るい笑顔。そのせいか、いつも年下に見られている。
小柄で童顔というのが一番、大きい理由なのだろうけど。
「佐倉先輩も桐島先輩も、どこの大学を志望しているんだろう?」
水藍が小さく呟く。
「違う大学だよね、やっぱり」
「そうだよね」
残念そうにこぼす。
「やりたいことが違ったら、違っちゃうし」
「学部違いって場合もあるケド」
わたしは「そうだね」と応える。
同じ大学だったとしても落ちてしまったら、結局、別々だ。
今と同じように、同じ校舎には通えない。