水藍は「先生も、」と言いかけて口を閉じる。
「水藍?」
「先生は、あっという間だった時間を悔いているのかな?」
首を傾げる。
「やけに実感がこもっていなかった?」
わたしは「そうね」と相槌を打つ。
「大人だからね。今になって思うと……ってことが、たくさんあるのかも」
わたしにだって、水藍にだって、後悔していることがどこかにある。
紫藤はわたしたちよりも年上で、人生を重ねている分、わたしたちより多くあるのかもしれない。
水藍が、そんな風に紫藤を気にするところは見たことがなかった。
友人達がどんなに茶化しても絶対に乗らない。
茶化すから乗らないのかもしれないけれど。
友人達の前では、紫藤の話も海の話も避けている。
わたしには『避けている』ということが、むしろ意識しているようで気になっていたけれど。
わたしは、水藍に指摘したことは一度もない。