彼は遠い目をする。
「否定的な答えは、誰も言って欲しくないんです。自分でも、薄々気付いているのに。否定されれば、反発してしまう」
彼は、誰を見ているのだろう。
かつて止められなかった人だろうか。
今でもそうやって、思いを馳せるのか。今でもそうやって、気にかけるのは。
(後悔しているから?)
彼は再びわたしへと視線を向ける。わたしの身体は驚いて、小さく震えた。
「誰かを、好きになりたいんですか?」
「え?」
どうだろう?
解らず、彼の顔を見つめた。答えが出て来るはずまないのに、彼の顔を見たままだ。
「誰かを、好きになりたいのかもしれません」
曖昧な答だ。
「水藍や友人たち、クラスメイト。それに先輩たちを、好きです。だけど、」
わたしは続けようとした言葉に、自分で震えてしまう。
「みんなを好きっていうのは、実は、みんな嫌いってことなんじゃないかって、」
怖くなったんです、という語尾は小さな声になってしまい、彼に届いただろうか。