彼は「今はまだ、」と続ける。
「今はまだ、時間が経つの遅くても」
あっという間です、と締める。
(あ、それ、)
紫藤(シドウ)が同じことを言っていた。
彼らには、時間が経つのは早いのだろう。わたしには、もどかしく思えるほど遅いのに。
いつから時間を早く感じるのだろう。彼らと同じ年になれば解るのだろうか。
わたしは八須を見て、同時に紫藤を思い浮かべた。
「いつから、」
気付いた時には口をついて出ていた。
彼は「いつなんでしょうね」と柔らかい声音だ。
彼にも『いつ』とは判らないのだろうか。これもまた、気付いたらってことなのだろうか。
わたしは首を横に振る。
彼はそんなわたしを見て困ったような顔をした。
「人それぞれですよ。結局は全て、人それぞれが感じたり思ったりするんです」
はっきりと、断言する。
彼は「みんな違う人間なんです」と締めくくる。