八須と目が合う。彼は微笑みを深くするだけで何も言わない。
わたしは俯いてしまった水藍を見つめた。
水藍、と彼女の名を呼んだはずだけれど、声は掠れて音にならなかった。
彼女の身体が小さく震えていて泣いているのかと思った。
けれど泣く理由も判らず、やはり違うとも思った。
彼女はわたしに「ごめんね」と言った。
(水藍が謝る必要なんてない)
そう思うけれど、わたしが何を言っても彼女に伝わらない。
そんな気もした。
「水藍、」
今度はちゃんと声になった。
「わたしはちゃんとわたしだから」
彼女の身体の震えが止まる。ゆっくりと顔を上げる。
水藍は「菖蒲」と掠れ気味の声でわたしを呼んだ。
「水藍が、わたしを自分に合わせていると思ったなら、水藍もちゃんと水藍なのよね」
お互いがお互いに、相手を自分に合わせていると思っていたのなら。
それはお互いに、自分の主張をしていたってことだわ。
わたしも水藍も、自分自身でいたってことでしょう?