着替えを済ませ、開店準備にとりかかる。
準備をしている間も思い出すのは、小さな妹が家事を手伝ってくれた記憶だ。
慣れない家事に何度、泣きそうになったか。
何度『母さんがいたら』と思ったか。
シルバーにアルコールを吹き掛け、乾いた布巾で一本ずつ丹念に磨いていく。
磨いたスプーンやフォークを隣においたトレイに移していく。もちろんトレイも消毒済みだ。
置くたびにシルバー同士が触れあってカシャンと鳴る。
今、自分は仕事に夢中になっているフリをしている。
その自覚がある。
仕事が嫌なわけじゃない。やるからには、もちろん、ちゃんとする。それは当然だ。
まして自分はこの店の『店長』なのだし。
いつも何を考えながら仕事をしていたろう?
今の自分は、努めて何も考えないようにしている。
それがつまり『仕事に夢中になっているフリ』だ。
いつも私は、どうやって仕事をしていただろう?
習慣と化しているから身体は動く。だが心が、頭がついていっていない。