数真は「そのうちには、するでしょ」と表情を変えない。

「星良ちゃんだって、そう思うから会わせたいんだろうし」

 片割れの思惑をさらりと語る。

 妹に、結婚して欲しくない。なんてことはない。だが、して欲しいともまだ思えない。

(花嫁の父ってのは、こんな感じなんだろうか?)

 幼いと思っていたはずの弟妹が、結婚なんて言い出す歳なのか。

「まだ会うだけじゃん。その場で結婚の話なんてないでしょ?」

 数真は少し考えて「たぶん」と付け加える。

 星良の性格を考えて断言を避けたのだろう。

「会ってみて、あんまり駄目だったらその時に反対すれば良いんだと、僕は思うな」

言い方が大事だけど、とおどける。

 星良の性格を考えれば、反対だった場合は頭ごなしに言うことはできない。

 数真の意見に小さく息を吐く。

「星良ちゃんなら、大丈夫だと思うケド」

 弟は、私と目を合わせると微笑した。

 数真は責めるような目を向けて来る。

 その視線から逃れようと「相変わらず仲が良いな」と軽口を叩く。だが「兄さんが連絡しないからでしょう」と、責められてしまう。

「僕たちだって、もう大人だ。そんな頻繁に電話なんかしないよ。兄さんに何度かけても留守電になるって言っていたから」

 そういえば着信履歴が残っていたな。

 気付いた時が夜、遅かったせいだ。折り返しを、翌日また翌日と、ずるずると延ばしてしまっていた。

「星良ちゃん、兄さんにも言ったんでしょう?」

 数真は何を、と言わない。

 空惚けようかとも思ったが、あまりに大人げがないので口を噤むにとどめた。

 数真ははぁ、と小さく息を吐く。

「会うくらい、いいじゃない。結婚すると決まったわけでもないのに」

「結婚?」

 思いがけず高い声が出てしまった。ごまかすために咳払いする。

 コンコンと扉を叩く音。

 店内をのぞく人影。

(開店前だというのに)

 私は舌打ちしつつ扉に近づく。

「数真(スウマ)」

 見慣れた弟の姿だった。

 扉を開けると、カランとベルが鳴る。

「おはよう、兄さん」

 私は挨拶もそこそこに弟を店内に入れる。CLOSEDの札を確認し、鍵をかける。

「どうしたんだ?」

 数真は開店準備中のカウンター内をちらりと見た。

「本当に忙しいんだ」

 彼の、小さな呟きにギクリとしたが黙っていた。

「星良(セイラ)ちゃんが電話もメールも来ないって言っていたから」

 私は「悪い」と苦笑い。

「僕じゃなくてさ、」

星良ちゃんに言ってよ、と続く言葉を飲み込む。

「ちゃんと連絡する」

 そう口にはしたものの、先伸ばしにしたい気持ちは拭えない。