英文精読講座 第1回 解説 | 塾長雑記帳

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盛岡市高松にある個人塾「石原学舎」塾長のブログです.
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冒頭のmost は代名詞で「ほとんどの人々」を意味します.most people とpeopleを補うとわかりやすいでしょう.on the saying のon は,ここでは「〜に基づいて,〜に則って」の意味です.:(コロン)は,ここでは同格を表しています.saying「格言」と"〜”の部分が同じものをさしています.「"〜"という格言」ということです.

Satan 〜の部分は古めかしくて難しいかもしれません.ここのstill は「いつでも,常に」の意味です.ウィズダムには載っていません.ランダムハウス大英和には載っています.to do はmischief を修飾している形容詞的用法の不定詞で,idle handsがその意味上の主語となっています.直訳すると「サタンは暇人がするためのいたずらを、いつも何かしら見つけてくる」となりますが,日本の諺で言うと「小人閑居して不善をなす」と同義です.暇な奴は必ず悪さをする、ということです。塾長は暇人ですが、悪さはしません。

 

二つめの文の"Being" は大時代的な言い回しで,最近の小説や雑誌ではあまり見かけません.これは,理由を表す分詞構文です.文頭の~ing は主語になる動名詞か分詞構文である確率が高いのですが(もちろん名詞を修飾している分詞であることもあります)、今回はそのあとに動詞がなく、そのままコンマが続いているので分詞構文と判断できます。ですから、コンマを見るまでは(あるいは動詞を見つけるまでは)どのing なのか保留した状態で先を読み続け、コンマを見た瞬間に分詞構文であると確信するのです。慣れるとこの作業は無意識にできるようになるのですが、英語に慣れていない普通の高校生だと始めのうちはきついかもしれません。

分詞構文はいくつか意味があり(時,理由,付帯状況,条件,譲歩など)、前後関係から意味を判断するしかないので,高校生には難しく感じることが多いようです.格調高い文章をたくさん読むことで慣れてゆきましょう.この文ですと、分詞構文を抜けてI believed のあたりで「理由であるな」と確信します。ここでも、判断が一瞬だけ保留された状態で読み進めることになります。ちなみに分詞構文は,文の中の役割としては副詞句となっています.

主節には動詞が二つあります.そして,それぞれの目的語に対して,それぞれ関係代名詞節が修飾をしています.ここでのall は代名詞です.all に対しては関係代名詞that が好んでよく使われるようです。

「道徳的な子供だったので」は、ラッセルの自虐と考えることもできますし(言われた通りのことをそのまま信じるというのは、知的な人間のすることではありません)、彼の宗教に対する冷淡な態度を考えると、道徳に対する、そして宗教的束縛に対する冷笑と捉えることもできるかもしれません。いずれにしても、ここでの「道徳的」がポジティブな意味でないことだけは確かです。

 

今回の抜粋を和訳すると以下のような感じになります.

 

同世代のほとんどの人々と同様,私は「小人閑居して不善をなす」という格言のもとで育てられた.非常に道徳的な子供だったので,私は言われたことを全て信じ,今この瞬間に至るまで私を馬車馬のように働かせている良心(塾長注:これは労働を美徳とし,怠惰を悪徳とするような道徳的性向のこと)を獲得した.

 

今回はこんなとこでおしまいです.んぢゃ,また.

 

精読のトレーニングとしては、下にあるような構文解析を独力で行い、それに従って上のような和訳を作った上で、解析例と和訳例を対照する作業を丁寧に繰り返すことが大切です。

記号の説明

(〜)の部分は形容詞節・形容詞句を表します.どの名詞を修飾しているのかは矢印で説明するようにしています.

<〜>の部分は副詞節・副詞句を表します.どの部分を修飾しているのかは矢印で説明するようにしています.

[〜]の部分は名詞節・名詞句を表します.