日常シーンで役に立ちそうな入試問題②(建築制限) | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事に関連する話です。

 

重要な日常シーンで役に立ちそうな入試問題として次のような問題もあります。

 

土地に建物を建てる場合には、その面積や体積に様々な制限があります。この問題では、以下のような制限を考えることとします。(実際の法令で定められているその他の制限は考えないものとします。)ただし、建物の面積とは、建物を上空から見たときの面積とします。(富士見中2022算数)

・建ぺい率60%……建物の面積の上限は、土地の面積の60%とする。例えば、100㎠の土地に建てられる建物の面積の上限は60㎠となる。

・高さ制限10m……建物の高さの上限は10mとする。

・道路斜線制限……【図1】のように、前面道路(土地と接する道路)の土地と反対側の端から、水平距離と高さの比が4 : 5となるように、土地の方向に向かって斜線を引く。建物が斜線よりも上にはみ出てはならない。


・北側斜線制限……【図2】のように、土地の北側の端の5m上空から、水平距離と高さの比が 4:5となるように、南側に向かって斜線を引く。建物が斜線よりも上にはみ出てはならない。

さて、建ぺい率60%、高さ制限10mの地域に、次の【図3】のような長方形の土地があります。また、建物の南側には幅4mの前面道路があります。このとき、次の問いに答えなさい。

⑴ 建ぺい率と高さ制限を考え、できるだけ体積が大きい建物を建てるとき、その建物の体積を求めなさい。ただし、道路斜線制限と北側斜線制限は考えないものとします。


右矢印 「建ぺい率60%」より、底面積の上限は 10×5×0.6=30㎡

よって「高さ制限10m」より、建物の最大体積は 30×10=300㎥
 

⑵ 高さ制限、道路斜線制限、北側斜線制限を考えるとき、建物を建てることができる空間の体積を求めなさい。ただし、建ぺい率は考えないものとします。

 

右矢印 前面道路の幅4mだから「道路斜線制限」より、建物の北側の高さは5mが上限。

また「北側斜線制限」より、建物の南側の高さも5mが上限となる。

これらの2本の線と「高さ制限」による上限10mの内側が建てられる体積最大の建物となる。

図1の上にこれらの線を重ねて書くと次の通り。

 

このように横から見ると全体は六角形、上半分は台形、下半分は長方形となっているので、この最大建物の体積を、上半分と下半分に分けて考える。

  • 下半分…「建ぺい率は考えない」から、底面積の上限は土地面積と同じ10×5=50㎡。高さ5mなので250㎥
  • 上半分…横から見た台形部分を底面積と考えると、底面積は (2+10)×5÷2=30㎡。このときの高さ(上の図でいうと奥行き)も5mなので150㎥

以上の合計で400㎥

 

⑶ 建ぺい率、高さ制限、道路斜線制限、北側斜線制限を考えます。次のア〜ウのうち、建てることができる建物には〇を、建てることができない建物には×を書きなさい。ただし、▒ の面が地面に接しているものとします。

ア、縦が5m、横が2m、高さが10mの直方体







 

 

右矢印 〇(ウ欄にある図参照。ちょうどおさまる形になっている)

 

イ、2辺が8m、4mの長方形を底面とする、高さが10mの四角すい

 

右矢印 ×

建ぺい率60%」より底面積の上限30㎡だが、この四角すいの底面積(8×4=32㎡)はこれを超えている。

 

ウ、直径が5mの円を底面とする、高さが8mの円柱

 

右矢印 

底面積は2.5×2.5×3.14=19.625㎡なので「建ぺい率60%」の制限は問題ない。

また高さ8mあるが「道路斜線制限」による道路から2.5m地点の高さは8.125mが上限となるので(「北側斜線制限」も同じ)「高さ制限」10mも含めてすべて問題ない。

 

⑷ 建ぺい率、高さ制限、道路斜線制限、北側斜線制限を考えるとき、体積が240㎥以上の建物を建てることができますか。具体的な理由(考え方や途中の式)をつけて答えなさい。

 

右矢印 できるたとえばアの直方体の左右(北側と南側)に、底面積は同じで高さを7.5mに低くした直方体をくっつけた形(下の図)だと「建ぺい率、高さ制限、道路斜線制限、北側斜線制限」をすべて守りながら体積250㎥(=5×2×10+5×2×7.5×2)の建物を建てることができる。

完了