天びん図を使えないと困る食塩水 | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事に関連する話です。

 

以前のテーマとは逆に、天びん図を使えないとちょっと厳しいかもという問題もあります。

たとえば次の問題。

 

濃度10%の食塩水Aと濃度3%の食塩水Bがあります。この2つの食塩水を用いて、ある濃度の食塩水Cを作ろうと思いましたが、食塩水Aと食塩水Bの取り出す量を逆にしてしまったので、異なる濃度の食塩水Dができました。この食塩水Dに食塩を6g加えるか、食塩水Dから水を69g蒸発させれば、食塩水Cと同じ濃度の食塩水を作ることができます。
このとき、次の問いに答えなさい。(世田谷学園中2021算数)

⑴ 食塩水Cの濃度は何%ですか。

 

右矢印 食塩水Cの濃度をC%、Dの濃度をD%とする。

❶Dに食塩6gを加えたときの濃度がCと同じになること、❷Dから水69gを蒸発させたときの濃度がCと同じになること、の2つをそれぞれ天びん図にすると次のとおり。

上の図で❶の左側のモーメント(支点からの距離×重さ)と❷の右側のモーメントは等しい(赤の部分)から、❶の右側と❷の左側もつり合うこととなる。これを天びん図にすると次のとおり。

 

重さの比は69:6=23:2なので、支点からの距離の比は2:23。

よってCは0%~100%を2:23で分ける場所なので

 100ײ⁄₂₅=8%

 

 
受験生の正答率は、この小問⑴で32.1%(合格者正答率52.4%)、つぎの小問⑵が21.6%(合格者38.0%)となっており、まさに「合否を分ける問題となった」とコメントされています(学校発表)。

 

⑵ 食塩水Cを作るために取り出す予定だった食塩水Aは何gですか。

 

右矢印 食塩水C(濃度8%)は「濃度10%の食塩水Aと濃度3%の食塩水B」を用いて作るはずだったもの。これを天びん図で考えると

となり「取り出す予定だった食塩水」はA=⑤g、B=②gとおける。このとき合計⑦g。

 

そしてこの「取り出す量を逆にしてしまった」ことでできた食塩水D(これも⑦g)の濃度は、つぎの天びん図から5%とわかる。

これを使って、食塩水Dに食塩を6g加えたときにCと同じ濃度になる様子を天びん図にすると

となるから、3:92=6g:⑦g より

 ①=92×6÷3÷7=¹⁸⁴⁄₇g

よって「取り出す予定だった食塩水A」⑤は

 ¹⁸⁴⁄₇×5=⁹²⁰⁄₇g完了