センターラインの公式 | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

「図形の移動」「円の転がり」といった単元のなかで「センターラインの公式」などとよばれるものが出てくることあります。平面図形の外側を円が動いたあとの図形の面積は「円の中心が動いた長さ×直径」で求められるというものです。

 

これを公式扱いするなどバカげてると一刀両断に切り捨てる関係者もいるようですが、使い方を誤らなければ便利なのは間違いないし、多くの受験生がこれを知っていて秒で片付ける中まじめに計算して解答スピードに大きく差をつけられてしまうのもおもしろくありません。

 

たとえば次のような問題があります。こういう公式もどきもあるということで中受生なら(他の受験生に差をつけられないためにも)その存在だけはおさえておきたいところです。

 

  センターラインの公式が使える場合(共立女子第二中2022)

 

下の図のように、1辺の長さが10 cmの正三角形の外側に沿って、半径2㎝の円を転がして1周させました。図の点線は、円の中心が通ったあとを表しています。このとき、次の各問いに答えなさい。(円周率は3.14とします)

①  円の中心が通ったあとの長さは何㎝ですか。

 

右矢印 円の中心線が親切に点線で示されている。これは①正三角形の辺と同じ長さの直線3本と②かどの3つは円弧(直径4㎝、中心角120°)が3本あると分けて考えることができる。

 

よって 10×3+4×3.14×¹²⁰⁄₃₆₀×3=30+12.56=42.56㎝

 

こちらはふつうに計算するしかないところ。問題は次の小問⑵。

⑵  円が通ったあとの面積は何㎠ですか。

 

右矢印 センターラインの公式により

 円の中心線42.56㎝×直径4㎝=170.24㎠

 

 

なお、ときどきある「計算過程も書きなさい」といった指示のある問題で、この名称や計算式を使うと減点される可能性が高く、あくまで答えだけ書いておけばいい問題限定で使える公式もどき(そんなものを公式扱いするのはいかがなものかとたたかれるのも当然)という位置づけになります。

 

  センターラインの公式が使えない場合(立教池袋2022)

 

下の図のように、1辺が2cmの立方体の展開図があり、半径1㎝の円がこの展開図のまわりをすべらないように回転して1周します。

次の問いに答えなさい。ただし、円周率は3.14とします。

 

1)    円の中心がえがく線の長さは何㎝ですか。

 

右矢印 つぎの図の点線の長さを求めることになる。

①直線部分と②曲線部分とに分けて考えると

①直線部分を上から右回りに足していくと

 2+1+1+2+1+3+2+3+1+2+1+1=20㎝

②曲線部分…円弧(直径2㎝、中心角90°)が8本あるから

 2×3.14÷4×8=12.56㎝

よって 20+12.56=32.56㎝

 

 

2)    円が通った部分の面積は何㎠ですか。

 

右差し このような図形ではセンターラインの公式が使えないので正攻法で計算します。

 

右矢印 円が通った部分の面積はつぎの図の赤と青の部分を合計したものとなる(真ん中のすきま部分(白)4か所を引くのはつい忘れがち)。

青の部分…いったんすきま部分(白)がないものとして考えると、1辺が2㎝の正方形(4㎠)で10コ分なので40㎠

 

赤の部分…半径2㎝の四分円(2×2×3.14÷4=3.14㎠)で8コ分なので25.12㎠

 

白の部分…この4つあわせてちょうど1辺2㎝の正方形から半径1㎝の円を引いた形になるので 4-3.14=0.86㎠

 

よって、求める面積は①+②-③=40+25.12-0.86=64.26㎝

 

 

別解

右差し センターラインの公式がここで使えないのは、つぎの図の青の部分4か所を円が2回ずつ通るため。

 

そうであればこの部分をあとから引くことでやはりこの公式が使えることとなります。

 

右矢印 センターラインの公式より

 中心線32.56㎝×直径2㎝=65.12㎠

ここには青で示した4か所が二重に足されており、その面積は

 (2×2-1×1×3.14)÷4×4=4-3.14=0.86㎠

よって、これを引いて 65.12-0.86=64.26㎠ 完了