以前の記事に関連する話です。
その重要な役割にもかかわらずあまり名前を呼んでもらえないものとして前回「倍分」を取り上げました。
立体図形の分野でも似たようなものがあります。「面対称」です。
点対称(0次元)や線対称(1次元)があるからには当然、2次元の面対称もあるわけですが、点対称や線対称とは違い、なぜかその名前を聞くことはあまりありません。立体切断の体積問題では面対称な面を見つけることがカギとなる場面が実は多いのにです。
たとえば次の問題。
図1のような1辺が6㎝の立方体ABCDーEFGHがあり、P、Q、R、S、M、Nは辺の真ん中の点です。いくつかの点を結んでできる、図2のような三角柱ア(PEF-RHG)、イ(MBA-NCD)、ウ(QFG-SEH)を考えます。次の問いに答えなさい。ただし、角すいの体積は(底面積)×(高さ)÷3で求められるものとします。(海城2022・第2回)
⑴ アとイの共通部分(どちらの三角形にもふくまれている部分)の体積を求めなさい。
⑵ アとウの共通部分(どちらの三角形にもふくまれている部分)の体積を求めなさい。
⑶ イとウの共通部分(どちらの三角形にもふくまれている部分)の体積を求めなさい。
まず図2をよくよく観察すると、SQからまっすぐ下に切った平面をTとするとき、ア、イ、ウすべての立体は平面Tに対して面対称である。
となると3つの小問にある「共通部分」もすべて平面Tに対して面対称。そこで
❶共通部分が平面T上でどういう形になっているかをまず調べその面積を求める
❷これを底面積とする高さを出してかけ合わせる
ことで、3つの小問すべて同じ手順で体積を求めることができる。
❶について、それぞれの平面T上での形(対称面)は次のとおり、
⑴アとイ…ひし形。面積は正方形の半分の半分で、36÷4=9㎠
⑵アとウ…二等辺三角形。面積は正方形の半分で18㎠
⑶イとウ…⑵と合同な形(上下だけさかさま)なので18㎠
以下、それぞれの立体の高さと体積を求めていく。
なお、以下の求め方をするときには、問題文中にある「角すいの体積は(底面積)×(高さ)÷3」の公式は使わないで済むことになります。
小問⑴ アとイの共通部分
次の図の黄色が対称面、点線で描いた四角柱(ひし形注)が共通部分となる。この高さは(横にして見ることになるので)6㎝。
よってその体積は 9×6=54㎤
小問⑵ アとウの共通部分
次の図の黄色が対称面、点線で描いた四角すいが共通部分となる。この高さは「平均の高さ」(過去記事)を使うと
(6+6+0)÷3=4㎝
だから、その体積は 18×4=72㎤
イとウの共通部分
次の図のの黄色が対称面、点線で描いた四面体が共通部分となる。その平均の高さは
(6+0+0)÷3=2㎝
だから、その体積は 18×2=36㎤