以前の記事の続きです。
流水算の問題では、以前よく出されていた浮き輪が登場する問題は少なくなり、近年は船のエンジンが止まる問題が増えつつあります。
次のような問題です。
ボートを使って川下のA地点から川上のB地点に向かいます。ボートにはメインエンジンとサブエンジンがついていますが、メインエンジンのみでA地点からB地点に向かう予定でした。予定通りメインエンジンのみでA地点を出発したところ、出発して30分後にメインエンジンが故障して止まってしまいました。修理に25分かかった後、再びメインエンジンのみでB地点に向けて動き出したところ、予定より35分おくれてB地点に到着しました。もし、メインエンジンを修理せず、故障してすぐにサブエンジンのみに切りかえていれば、予定よりも25分おくれるだけですみました。また、サブエンジンのみでA地点からB地点まで向かえば予定よりも40分おくれて到着します。このとき、次の問いに答えなさい。(洗足学園2022)
⑴ 川の流れの速さとメインエンジンのみで動かしたボートの静水時の速さの比を、最も簡単な整数の比で答えなさい。
小問⑴はともかく、小問⑵以降はダイヤグラムを書けないとかなり厳しい問題。ダイヤグラムを書くときは、わかりやすいようにA地点の出発時刻を8:00として書くのがオススメです。
「川の流れの速さ」を川、「メインエンジンのみで動かしたボートの静水時の速さ」を㋱とする。
「メインエンジンのみでA地点を出発した」ボートが「出発して30分後にメインエンジンが故障して止まって」しまった(この場所をP地点とする)。「修理に25分かかった後、再びメインエンジンのみでB地点に向けて動き出したところ、予定より35分おくれてB地点に到着」した。
ここからわかるのは、25分流されたボートがP地点まで戻るのに10分(=おくれ35分-修理時間25分)かかったということ。かかる時間の比は速さの逆比なので、速さの比は
川:(㋱-川)=10:25=2:5
よって、川:㋱=2:7
⑵ メインエンジンのみで動かしたボートとサブエンジンのみで動かしたボートの静水時の速さの比を、最も簡単な整数の比で答えなさい。なお、この問題は解答までの考え方を表す式や文章・図などを書きなさい。
予定通りメインエンジンのみでAB間を進んでいたとき
「もし、メインエンジンを修理せず、故障してすぐにサブエンジンのみに切りかえていれば、予定よりも25分おくれるだけ」だった。また「サブエンジンのみでA地点からB地点まで向かえば予定よりも40分おくれて到着」していた。
これをダイヤグラムに記入すると、ダイヤグラム上にできた三角形の相似より、AB:PB=8:5とわかる。
つまりP地点はAB間を⅜進んだ地点であり、これを進むのに30分かかったのだから、エンジン故障がなければBまで80分で到着していた。
そして、川:㋱=2:7より、川=時速⑥㎞とすると、㋱=時速㉑km。このときボートの流水時の速さは時速⑮㎞だから、AB間の距離は⑳㎞(=⑮×80/60)となる。
サブエンジンのみでAB間を進んでいたとき
一方「サブエンジンのみで動かしたボートの静水時の速さ」を時速㋚㎞とする。AB間を時速㋚㎞で進むとき「サブエンジンのみでA地点からB地点まで向かえば予定よりも40分おくれて到着」するから、AB間(⑳㎞)を進むのに80+40=120分(2時間)かかる。
つまり、サブエンジンのみで進むときのボートの流水時の速さ(㋚-川)は⑳÷2=時速⑩㎞より、㋚=時速⑯㎞。
以上より、㋱:㋚=21:16
⑶ はじめからメインエンジンとサブエンジンの両方を使用してA地点からB地点まで向かうとします。どちらのエンジンも故障しなかったとしたら、出発してから到着するまで何分かかりますか。
この小問⑶は受験者正答率1%以下というおそろしい結果になっています。(学校発表による小問ごとの正答率は⑴39.7%、⑵17.9%、⑶0.9%)
上で使った㋱=時速㉑km、㋚=時速⑯㎞、川=時速⑥㎞、AB間の距離=⑳㎞で計算すると
⑳÷(㉑+⑯-⑥)×60分=¹²⁰⁰⁄₃₁=38 ²²⁄₃₁分