合否を分ける速さの文章題 | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

速さの問題は、一行問題としてはもちろん頻出ですが、文章題の大問としても大人気です。比や割合をちゃんと理解しているか、旅人算やつるかめ算をきちんと使いこなせるか、図やグラフを正しく読み解けるか、そもそも長い文章を読んで必要な情報を取り出してきっちり状況整理ができるか、といった総合的な算数力をまとめてためすことができるからです。はじめて会う小学生の算数の実力を1問の問題だけでテストするとしたらおそらく速さの問題を使うことになるのではと思います。

 

次の問題もそういう総合的な算数力を試す速さの文章題となっています。100点満点中18点(各小問6点)という高い配点がされているのもうなずけるところで、まさに合否を分ける問題だったと言えそうです。

 

 下の図1において、一郎さんは点Pを出発し、坂道を上り点Qに行きます。次に、点Rまでの平らな道を通り、坂道を下り点Sに行きます。そして、同じ道を通って帰ります。一郎さんの速さは、点Pから点Qまでは分速200m、点Qから点Rまでは分速250m、点Rから点Sまでは分速300m、点Qから点Pまでは分速400mで移動します。
 下の図2は、一郎さんが移動した時間と点Pとのきょりの関係を表したものです。次の問いに答えなさい。ただし、平らな道を移動するときの速さは一定です。(目黒日本大学中2022)
⑴ 一郎さんは、点Pから点Qまで何分かかりましたか。

右矢印 まず図2のグラフ(最近はやりの「へだたりグラフ」)が折れているところで何が起きているのかを見る。6つに分かれているのは、頂点までの最初の3つが行きの上り、平ら道、下りに対応し、残り3つが帰りの上り、平ら道、下りに対応するから。

 

もう少しこまかく見ると、25分で5650m移動しており、PR間の距離5650mとわかる。ここで「点Pから点Qまでは分速200m、点Qから点Rまでは分速250m」で移動したのだから、PR間の合計時間25分をつるかめ算を使ってPQ間とQR間に分ける。

 ①もし25分すべて分速250mで移動していたら6250m進んでいた

 ②実際のPR間は5650mなのでその差は600m

 ③分速250m→分速200mにするとここから毎分50mずつ距離は短くなっていくので、分速200mで移動した時間=PQ間の移動にかかった時間は 600÷50=12分

 

 

⑵ 一郎さんは、点Pを出発してから戻ってくるまでに何時間何分かかりましたか。

 

小問⑴より、行きのQR間にかかった時間は13分とわかる。ここは平ら道なので、帰りも同じく13分かかる。つまり5つめの折れる点は55分のところ。

そして行きの「点Pから点Qまでは分速200m」だったのが、帰りの「点Qから点Pまでは分速400m」と速さが2倍になっているから(距離は同じなので)かかる時間は速さの逆比で半分になる。つまり、行きのPQ間は12分かかったから、帰りのQP間は6分かかる。

これをたすと55+6=61分より 1時間1分

 

 

⑶ 一郎さんの行きと帰りの時間を比べると、行きの方が3分多くかかりました。点Sから点Rまでの速さを答えなさい。

 

小問⑵で求めた合計時間61分を「行きの方が3分多く」なるようにふり分けると、行き32分、帰り29分かかったとわかる。

ここまででわかった情報を図2に書き足すと次のとおり。

すると、行きのRS間は7分、帰りのSR間は10分かかったことがわかる。距離は同じなので、かかる時間は速さの逆比だから (R→Sの速さ):(S→Rの速さ)=10:7

ここで「点Rから点Sまでは分速300m」がわかっているから、求める「点Sから点Rまでの速さ」はこれの⁷⁄₁₀倍なので 分速210m