常日頃より私は“男の彼氏”の存在についてちょいちょい口に出すのだが、周囲はいろいろなこと(ジェンダー的なこととかあれこれの配慮)を慮ってくれているのか、あまり深く言及されることがない。
実際に私には“男の彼氏”的な存在が居て、本人にもその旨伝えているが、強く否定をしないところを見るとテキもまんざらではないように思える。
私は全国津々浦々に友人やお世話になった方々が点在しているのだが、さすがに出身が関東であるだけに『東の横綱』といった存在については様々な角度から検討すると一本化できない部分が大きいが、『西の横綱』といえば私の“男の彼氏”であるところのピーちゃんだということは間違いないように思う。
アタイね、ピーちゃんの前ではすっかり乙女になってしまうのさ。だから、たまにはピーちゃんのことを書いてみようかと思ったりなんかして。
ピーちゃんと出会ったのは私が十六、彼が十八の時で、同時に高校に入学したのがきっかけ。私が一回高校をクビになっているので『一ダブ(一年ダブり、の意味)』、ピーちゃんは『三ダブ』やったワケやね。「なんで三ダブなの?」と聞いた私にピーちゃんは恥ずかしそうに「二年、施設に居ってん」と答えた。私は“施設”という言葉に様々な含みを感じて、その時はそれ以上詮索しなかった。
我々がたまたま同じ寮だったこともあり、入学して間も無く彼の部屋に遊びに行ったら、部屋中がキッチリピカピカなのを見て、私が彼に「キレイ好きなんだねぇ」と言ったところ、彼はまたも恥ずかしそうに「施設で、教えられてん」と返答をした。ふと気になった私が「その施設、なんの施設なのかね?」と尋ねると、彼はしれっと「少年院と鑑別所やで」と答えた。私の周囲にもちょっとした“施設”に入った経験のある人間は何名か居たが、今よりずっとおおらかな当時の時代背景も含めてみれば、十八で二年施設に入るというのはよっぽどのツワモノであるな、と私は思った。
実際に彼はあらゆる面でツワモノで、高校生活が始まってしばらくした或る日、彼から「犬スケ、相談があるねんけど」と顔を赤らめて私に話しかけてきた時、私は「あら、ちょいと人でも殺しちゃったのかしら?」と思ったけれど、フタを開けてみたら思わぬ“恋愛相談”で、しかももう意中の彼女とひっそりお付き合いも始まっているという。
「付き合ってるんだったら、別に何を相談するのさ?」
「いや、どうやったら、エッチてできんのかな?」
「え?まさかアナタ童貞なの?!」
「いや、童貞では無いねんけど…今まで強姦(レイプ)しかしたことないねん」
「そーかー。ほな彼女にはヤサシク接しなさい」
なんてやりとりがあったのが懐かしく思い出される。
私もそんなピーちゃんの存在を好もしく思っていろいろと話したし、実際に彼の『(過去の経歴も含めた)武勇伝』をばらまいて語ることをしない姿勢にも大いに好感が持てた。彼もそんな私に対しては胸襟を開いてくれたのか、他の同級生には語らない(語れない)話をたくさんしてくれた。
或る日、ピーちゃんが“薬物”というものがどれほど身体に悪く、しかもお金もかかるかということを経験談を通して話してくれた時に、先天性好奇心過多の私が「シャブ、一度試してはみたいんだけどねー」と口にしたところ、ピーちゃんは私を諭すようにこう言った。
「あのな、アレ(シャブ)は簡単に言うと“世界がひっくり返”んねん。俺みたいな奴がやるから効き目は出るけどな、犬スケみたいに普段からアタマがぶっ飛んでる奴がやったら、逆に正気になってまうと思うで」
私にはその一言が背骨の芯まで痛烈に響いて、以後薬物はお医者さんから処方されたものしか嗜まないようになった。
今でも時々ピーちゃんと年に一回は関西か関東かで会って一緒に旅をするのだけれど、時折私がくよくよ思い悩んでいるとピーちゃんはなんでもないような顔をして「けどな、俺はサーフィンやけど、犬スケは歌ってればええやん。お前には“歌”があるやん」としれっと私の存在を肯定してくれる。そーゆーのが、キュンと来るワケよ。だから「キャー!中出ししてーッ!」って思ったり口に出したりして、まぁそれはそれで楽しくやっております。
そーいえば、先日内地で高校時代の恩師のひとりに再会した際に、恩師の口からピーちゃんの話が出た。
「アイツは、マイペースだなぁ」
「そうだよ、ピーちゃんは、マイペース」
「何年か前にさ、○○(恩師の教え子で我々の同級生)の結婚式に呼ばれた時にさ、アイツが友人代表で挨拶した時の話、聞いた?」
「聞いてない」
「アイツ、友人代表の挨拶の最後に『これから新郎に、闘魂を注入します!』って言いだしてさ、会場も大盛り上がりさ」
「闘魂、ビンタ?」
「そうそう。それで、アイツ○○にビンタしちゃって」
「フツーにありそうな話っぽいけど?」
「○○、脳しんとう起こして救急車で運ばれて、式は中止。翌日から予定していた新婚旅行も全部キャンセルになったんだよ」
「ピーちゃん、ヤルねぇ」
微苦笑しながら話す恩師の表情には、しかし呆れを通り越して愛情のようなものを感じたし、私も更にピーちゃんに惚れ直したのでもあるのよね。恋は盲目ですなぁ。
後日、所用のついでにその話の真偽(詳細)を問う私に対して「あれ?俺その話、犬スケにしてへんかったっけ?」と何事もなかったように話す彼に、ちょっぴり拗ねた声で「聞いてないよー!」と言うと、彼氏ったら大笑いしながら一言こう言ったの。
「めっちゃ、ウケたで!」
『キャー!中出ししてーッ!』と私の乙女心をキュンキュンさせながら、私は今度彼氏に逢えるのはいつかなぁ?とカレンダーを眺めながら秋の深まりを感じている今日この頃なのである。
【年下の男の子】
https://www.youtube.com/watch?v=HV18Q5m6Q_o&index=11&list=PLmAWd7h1DCKU5eSnnYfXFEDPSMB020qbu
ジャストミートで脳しんとう。
