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【バックアッププラン(前篇)】

只野 聖人(ただのせいと)は、星野 サラ(ほしのさら)から

また、詰問されていた。

「聖人くん!また、ストレージタイプでPC(パーソナルコンピュータ)を

組んでるのね。」

ここは、S大の情報処理施設だ。

学生たちは、外部資金調達用にPCを組んでネットで販売してる。

部品類は、就職した先輩たちのネットワークが使えるから割安に調達できるし、

OS(基本ソフト)は、ubuntu(ウブンツ:Linuxディストリビューションのひとつ)だから、

無料で使える。

それに利益も最小限にしているから、市販のものより安価で、そこそこ売れている。


でも、聖人が組むのは、いつもストレージタイプ。

つまり、PCというよりデータを格納するためのサーバだ。

「聖人くん!ちょっと無視しないでよ。あなたの利益率が一番低いのよ。」


聖人は、しぶしぶ応えた。

「先輩!カンベンしてくださいよ。赤字になってるわけじゃないし。」

「確かに赤字じゃないわよ。でも、ここの使用料とか、

電気代とか一般管理費を考えるとほとんど利益が出てないのよ。

ちょっとは、コマーシャルで人気の出そうなものを考えてよ!」

「そう言われても・・・!あんまりそっち方面は興味ないし、

それに他のグループでトガッたもの造ってるじゃないですか?」


ちょっと険悪な雰囲気を感じ取って、

部長の小笠原 竜太(おがさわら りゅうた)が、割って入った。

「まあまあ、そこまでにして!聖人だって、個性があると思うよ。

いずれサーバブームが来るかもしれない。」

サラは、ちょっと眉間にしわをよせながら、

「たぶん、100年ぐらいしたらそういうブームもあるかもしれませんね!」

少し、怒ったように部屋を出て行った。


「聖人!これで何台目だい?」

「竜太さん、たぶん36台目ぐらいです。」

「そりゃまあ、すごい。全部ストレージタイプなのかい?」

「ええ、そうです。」

「いまの構成は?」

「CPUは、Core-Mで、メモリーは8GBです。オンボードのフラッシュストレージは64GBで

そこにubuntu入れてます。

メインのストレージは、Seagate製の8TBを3台で、RAID5にしてます。

もちろんホットスワップ可能です。」

「そうか、最近は、4K2Kだとデータ量も結構大きいからそれぐらいあっても

おかしくないね。」

「先輩!でも、自分ではこれではまだだめだと思ってるんです。」

「どういうこと?」

「たしかに、ローカルストレージが1台の構成からすると、

ずいぶんとフォールトトレランス(故障に対する強さ)はいいと思いますが…。」

「じゃあ、どうしたい?」

「RAID5であれば、3台のうち1台が完全に故障しても、

他の2台からデータを再構築することは可能です。

でも僕は、もっとひどい状況を経験したことがあるんです。」

「どんな状況?」

「マザーボード上の、RAIDコントローラが壊れたことがあって、

そのときは結局データのサルベージはできなかったんですよ。」

「そりゃまた、レアケースだね。」

「いえいえ、レアケースでも起こりうることは必ず起こるんです。」

「そうか!マーフィーの法則か。」

「だから、僕は、このPCに関しては、もうひとつの手段を講じるつもりです。」

「もしかして?」

「そうです。対蹠点化です。」

「それって、提唱されてはいたけど、実際やるとなると結構大変だよね。」

「実は、ブラジルの友人と話はついています。」



聖人のプランはこうだった。

彼が組んでいるPCと同じ構成で、もう1台をブラジルの友人に組んでもらう。

CPUもメモリーもマザーボードも、ストレージの構成も同じだ。

もちろんOSには、ubuntuを使う。

そして、この2台は、常に同期するように動作する。

日本であるファイルがセーブされると、インターネット回線を経由して、

ブラジルのPCにも同じファイルがセーブされる。

つまり、日本と地球の反対側にあるPCが常に同じファイルを格納できるわけだ。

これを彼らは、対蹠点方式と呼んでいた。

片方に異常が起きても、そのファイルは地球の裏側から届けられる。

もちろん日本に大災害が起きてもそのファイルは守られる訳だ。


小笠原 竜太は、ちょっと目を細めて、

「ちょっと大事な話があるんだけどいいかな。」

「どういうことでしょうか?」

「うん、この部屋には聖人とボクの二人だけだから話すよ。」

「キミを見込んでのことだ。僕は、実はあるプロジェクトの

コアメンバーになっている。

その目的は、おいおい話すけど、是非とも参加してほしいと思っている。

キミの考え方がこのプロジェクトにぴったりなんだ。」


「わかりました。なんとなくおっしゃてることはわかります。」

聖人は、直感的にその目的を悟った。

それが、人類のバックアッププランだということを。

(続く)

【2015年3月記】





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